「四肢麻痺」とは?交通事故とケガの治療に関する用語

やさしい交通事故の用語集

四肢麻痺 [ししまひ]

意味
両手両足(四肢)が麻痺している状態のことです。交通事故により脊髄や脳を損傷することで四肢麻痺を発症し、治療を続けたとしても症状が改善せず、後遺症として残ってしまう場合があります。
解説

0.両手両足に麻痺が残る「四肢麻痺」

「麻痺」とは、身体の一部や全部を思うように動かすことができない状態を意味します。そして、損傷した部位の運動機能や感覚がどの程度、失われたかによって「完全麻痺」と「不全麻痺」に分類されます。

  • 完全麻痺:運動機能や感覚が完全に失われた状態
  • 不全麻痺:運動機能や感覚が一部残っている状態

また、身体のどの部位に症状が生じたかによって呼び方が異なり、四肢麻痺は右両手両足(四肢)が麻痺した状態を指します。四肢麻痺を含めて、麻痺には次のような種類があります。

  • 単麻痺:片手または片足に麻痺がみられる状態
  • 片麻痺:左右どちらかの半身に麻痺がみられる状態
  • 対麻痺:両腕または両足に麻痺がみられる状態
  • 四肢麻痺:両手両足(四肢)に麻痺がみられる状態

1.交通事故による四肢麻痺の主な原因

交通事故によって四肢麻痺を発症する主な原因は外傷性脳損傷と脊髄損傷です。

1-1.外傷性脳損傷

頭部に強い衝撃を受けることで、脳を損傷することです。脳の損傷が大きい場合、麻痺の症状だけでなく、認知力や行動面、人格面などにさまざまな影響を及ぼす高次脳機能障害などを発症する可能性もあります。

1-2.脊髄損傷

背中を強く打ち付けるなどして、背骨を折ったり、脱臼したりすることで、脊髄を損傷することです。

脊髄損傷には、脊髄が完全に断裂してしまう完全損傷と、一部損傷する不完全損傷の2種類があります。損傷の程度や部位によっては、麻痺以外にも排尿・排便や自発呼吸ができなくなるといった後遺症が残るケースがあります。

2.麻痺の程度による分類

麻痺の症状は、手足の基本動作にどの程度の支障が生じているかによって、高度、中等度、軽度の3段階に分類されます。麻痺の程度がどの分類に該当するかによって、認定される後遺障害の等級が異なります。

2-1.高度の麻痺

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性がほとんど失われてしまい、基本動作ができない状態が「高度の麻痺」です。

  • 物を持ち上げて移動させることができない
  • 立ち上がったり、歩行したりすることができない

2-2.中等度の麻痺

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が相当程度、失われてしまい、基本動作にかなりの制限がある状態が「中等度の麻痺」です。

  • 文字を書くことができない
  • 仕事で必要な軽量の物(おおむね500g)を持ち上げられない
  • 杖や硬性装具がなければ歩行が困難

2-3.軽度の麻痺

障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が多少失われてしまい、基本動作の巧緻性や速度が相当程度、損なわれている状態が「軽度の麻痺」です。

  • 文字を書くことが困難
  • 杖や硬性装具がなければ階段を上ることができない

3.四肢麻痺の後遺障害等級

交通事故によって四肢麻痺となり、治療しても症状の改善が見込めないと主治医が判断すれば、後遺障害の等級認定を受けられる可能性があります。

後遺障害は、症状の内容や程度に応じて14級から1級に分類されます。そして、四肢麻痺の後遺障害で認められる等級は、麻痺の原因が外傷性脳損傷か、脊髄損傷かによって異なります。

外傷性脳損傷が原因で四肢麻痺になった場合に認められる等級は、次の通りです。

等級麻痺の程度
要介護1級高度の四肢麻痺
常時介護を要する中等度の四肢麻痺
要介護2級随時介護を要する中等度の四肢麻痺
第3級中等度の四肢麻痺
第5級軽度の四肢麻痺

次に、脊髄損傷によって四肢麻痺になった場合に認められる等級です。

等級麻痺の程度
要介護1級高度の四肢麻痺
常時介護を要する中等度の四肢麻痺
要介護2級中等度の四肢麻痺
随時介護を要する軽度の四肢麻痺
第3級軽度の四肢麻痺

4.後遺障害慰謝料の目安

後遺障害が残ったことで認められる慰謝料は、等級によって異なります。金額の目安は次の通りです。

等級自賠責基準弁護士基準
要介護1級1,650万円2,800万円
要介護2級1,203万円2,370万円
第3級861万円1,990万円
第5級618万円1,400万円
  • ※2020年4月1日以降に発生した交通事故に適用される金額です。

慰謝料の金額は、認定された等級だけでなく、どの基準を用いて計算するかによっても大きく異なります。加害者側の任意保険会社に慰謝料を請求する場合、最低限度の補償である自賠責基準と同程度の金額が、保険会社から提案されることが一般的です。

弁護士基準で計算した金額を獲得するには、保険会社との交渉を通じて増額を認めさせることになります。

しかし、保険会社は交通事故に関する知識や、交渉の経験が豊富な専門家です。一般の方が交渉で増額を認めさせるのは不可能に近く、そもそも保険会社が交渉に応じない可能性も高いでしょう。

提示された慰謝料の金額に納得できない場合、交通事故に詳しい弁護士に相談し、増額交渉を依頼することをおすすめします。弁護士であれば、法的に認められる最大限の慰謝料を支払うよう適切に主張してくれるため、弁護士基準で計算した金額の獲得が期待できます。

5.リフォーム費用や介護費も請求可能

四肢麻痺は日常生活に大きな支障をきたす症状が残るケースが少なくありません。そのため、自宅をリフォームしてバリアフリー化したり、障害が残っても自動車を運転できるよう車両を改造したりすることもあるでしょう。

自宅のリフォームや自動車の改造のために発生した費用は、家屋改修費や自動車改造費として、加害者側の保険会社に請求が可能です。また、自力での生活が困難なため介護が必要になれば、介護費(将来介護費)も請求できます。

ただし、保険会社が支払いに応じなかったり、低額な支払いを提案したりするケースが少なくありません。弁護士に依頼していれば、慰謝料はもちろん、これらの費用についても支払いや増額を求めて交渉してくれます。

関連する用語
単麻痺[たんまひ] 対麻痺[ついまひ] 片麻痺[へんまひ]

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