「MRI」とは?交通事故とケガの治療に関する用語

やさしい交通事故の用語集

MRI [えむあーるあい]

意味

磁気を利用して身体の内部を撮影することで、ケガをした箇所を三次元の断層画像により捉えることができる検査方法のことです。

解説

0.MRIは神経などの軟部組織の撮影に有効

MRIとはMagnetic Resonance Imagingの略であり、日本語では「磁気共鳴画像撮影法」と訳されます。
ドーナッツ型(筒形)の大きな装置の内部に強力な磁場を発生させることで、体内の断面像を三次元で撮影し、白黒画像で出力します。

レントゲンによる撮影の場合、骨折などは画像で捉えることができますが、じん帯、腱、椎間板、神経、脊髄、脳など人間の柔らかい部分(軟部組織)については、撮影することができません。

しかし、MRIはこういった軟部組織を鮮明に撮影できますので、画像でケガの状態を確認し、治療に役立てることができます。

MRIの検査機器写真

1.MRIとむち打ち

交通事故によるケガの場合、頭部や四肢の外傷などに加えて、特に「むち打ち」になる場合があります(むち打ちとは症状のことであり、頸椎捻挫、外傷性頸部症候群、頸椎椎間板ヘルニア、頸椎神経根症などの傷病名で呼ばれます)。

交通事故でむち打ちとなった場合、事故直後の受診では、レントゲン検査を行うことが一般的です。また、むち打ちは事故後しばらくしてから症状が出ることが多いものです。
前述の通り、MRI検査では、頸椎や腰椎の椎間板の損傷状況、脊髄の異常、血管や神経の圧迫具合など、レントゲンでは写らない箇所を調べることができます。

そのため、交通事故後に、頸部や上肢の痛み、手指のしびれなどの症状が出てしまった場合、MRI検査を行うことで、症状の原因を詳しく調べられるのです。

2.MRIと後遺障害の等級認定

MRI検査により得られた画像所見は、後遺障害の等級認定を判断するうえで重要な役割を果たしています。
MRI検査による画像所見は、本人の愁訴にもとづく自覚症状とは異なり、客観的な他覚的所見です。そして、後遺障害の等級認定を行う損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所は、本人の自覚症状を裏付けることができる画像所見を重視しています。

たとえば、後遺症としてむち打ちが残ってしまった場合、本人の自覚症状を裏付ける画像所見があり、他の神経学的所見と併せて現在の症状が医学的に証明できれば「12級13号」が認定されます。
また、そこまで至らないものの、治療経過から症状の存在を医学的に説明が可能であれば「14級9号」が認定されます。

そのため、交通事故の被害者の方が、後遺障害の等級認定を獲得し、適切な謝料などの賠償金を受け取るには、MRI検査を実施してもらうことが大切です。

3.MRIとCTとの違い

MRI[検査とCT検査は、検査装置の外観が似ていますし、体内の断面像を描写するといった特徴から、似たような検査だと思われるかもしれません。

しかし、CT検査はレントゲンと同じX線を利用しますが、MRI検査は磁気を利用しますので、放射線被ばくの心配がありません。
また、MRIでは、軟部組織の病変抽出に優れていますので、正常な状態の組織とのコントラストの差をクッキリした画像所見が得られます。

ただし、MRI検査の方がCT検査よりも費用が高額です。そのため、検査部位や検査内容により、MRIとCTは使い分けられています。

4.MRI検査の注意点

MRIは、強力な磁場の中に身を置くため、心臓ペースメーカーやICD(植込み型除細動器)など、体内に金属部品を使用している方は、MRI検査を利用することができません。

検査時にも髪留めや腕時計などの金属製品をすべて外さないと、大事故に繋がります。

また、ドーナッツ型(筒形)の大きな装置の内部に入る必要があるため、閉所恐怖症の方は注意が必要です。さらに、検査中はガンガンと大きな音がします。

5.MRIの検査機器と解像度

MRIは画像撮影による検査方法ですので、その検査機器には一般のカメラと同じように解像度があります。
設備の整った大きな病院では、解像度の高いMRI検査機器を備えていますが、すべての病院が必ずしもそうではありませんし、近隣のクリニックや診療所では、MRI検査機器それ自体がないこともあります。

また、これまで、MRIといえば、トンネルのような大きなドーナッツ型(筒形)の検査機器が一般的でした。
しかし、この閉塞感や検査機器のサイズ、騒音の大きさなどを是正したオープン型のMRIや小型のMRIが新たに開発されています。

オープン型のMRIは、開口部が大きく開けており、上下から身体を挟むように撮影するため、閉所恐怖症の方でも撮影が可能となっています。
また、小型のMRIは肩や膝の関節など四肢の撮影に利用されています。
そして、オープン型や小型のMRI検査機器は、設備費用の安さや施設の面積などから、クリニックや診療所などを中心に導入が進んでいます。

しかし、これらのMRIは通常のMRIに比べて磁力が弱いため、解像度や撮影の精度が低く、正確な画像所見を得られない危険性があります。
というのも、MRI検査機器の解像度は「テスラ」という単位で表しますが、これらのMRI検査機器では磁力が弱く、0.3~0.5テスラという場合もあるからです。

後遺障害の等級認定の申請において、せっかく、MRI検査による客観的な画像所見を添付したとしても、「異常所見は無い」と判断され、非該当や低い等級になってしまうおそれがあります。

もし、通院中の病院に3.0テスラ以上の解像度を持つMRI検査機器がない場合、主治医の先生に検査の必要性を判断していただいたうえで、他院への紹介状を書いてもらいましょう。
「保険会社が治療費の一括対応をしている間に、きちんと検査をしておきたい」という希望を伝えれば、話がスムーズに進むかもしれません。

関連する用語
むち打ち[むちうち] 頸椎捻挫[けいついねんざ] バレ・リュー症候群[ばれ・りゅーしょうこうぐん]

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