ADR [えーでぃーあーる]
- 意味
- 調停や訴訟などの裁判上の手続きではない方法で、第三者機関が当事者間の間に入り民事トラブルの解決を目指す手続きのことです。日本語で「裁判外紛争解決手続」とも呼ばれます。
- 解説
- 目次[]
0.ADRは中立公正な立場から紛争解決をサポート
何らかの民事上のトラブルによって損害が発生した場合、まずは交渉を通じて相手方に損害賠償を請求することが一般的です。そして、交渉がまとまらなければ調停や訴訟といった裁判上の手続きに進みます。
これに対してADRは、裁判上の手続きによらず、中立公正な第三者機関が当事者の間に立ち、紛争解決を目指す手続きです。ADRの利用には、訴訟に比べて解決までにかかる時間や費用を抑えられるなどのメリットがあります。
ADRは、Alternative Dispute Resolutionの略称であり、日本語で「裁判外紛争解決手続」と訳されます。
1.代表的な交通事故のADRは2種類
ADRは、トラブルの内容などに応じ、さまざまな種類の機関が運営されています。交通事故を専門とするADRも複数あり、代表的なADR機関が次の2つです。
- 交通事故紛争処理センター(紛セン)
- 日弁連交通事故相談センター
これら以外にも、「自賠責保険・共済紛争処理機構」や「そんぽADRセンター」、各都道府県の弁護士会に設置されているADRなどがあります。
2.交通事故紛争処理センター(紛セン)
代表的な交通事故ADRのひとつで、全国11か所に支部や相談室があります。交通事故紛争処理センターでは、次の手続きを無料で利用することができます。
- 法律相談
- 交通事故紛争処理センターの相談担当弁護士が相談に応じ、問題点の整理や助言などをしてくれます。
- 和解あっ旋
- 相談担当弁護士が中立公正な立場から、被害者と加害者側の保険会社から主張を聞き、和解に向けた解決策(和解案)を提案してくれます。
- 審査手続
- 法学者や元裁判官、弁護士の3名で構成する審査会が、被害者と保険会社から争点の説明や主張を聞き、解決策を提示して裁定を行います。
3.日弁連交通事故相談センター
日本弁護士連合会(日弁連)が運営する交通事故ADRで、全国に150か所以上の窓口があります。次の手続きを無料で利用することができます。
- 電話相談
- 日弁連交通事故相談センターの窓口に電話をかけて、弁護士に相談ができます。相談できる時間は10分ほどです。
- 面談相談
- 全国にある相談所に行き、弁護士に相談ができます。相談できる時間は3分ほどで、原則として5回までです。
- 示談あっ旋
- 示談の成立に向けて、加害者側の保険会社や共済組合との交渉を弁護士が仲立ちしてくれます。
- 審査
- 示談あっ旋が不調になった場合、弁護士によって構成する審査委員会が解決策を判断します。
このうち審査の手続きは、次の共済のいずれかに加害者が加入していなければ利用できません。そのため、加害者側が加入している保険会社や共済を把握することが重要です。
- 全労済(全国労働者共済生活協同組合連合会)のマイカー共済
- 教職員共済生協(教職員共済生活協同組合)の自動車共済
- JA共済連(全国共済農業協同組合連合会)の自動車共済
- 自治協会(全国自治協会)・町村生協(全国町村職員生活協同組合)の自動車共済
- 都市生協(生活協同組合全国都市職員災害共済会)の自動車共済
- 市有物件共済会(全国市有物件災害共済会)の自動車共済
- 自治労共済生協(全日本自治体労働者共済生活協同組合)の自動車共済
- 交協連(全国トラック交通共済協同組合連合会)の自動車共済
- 全自共(全国自動車共済協同組合連合会)の自動車共済
- 全自共と日火連(全日本火災共済協同組合連合会)の自動車総合共済MAP(共同元受)
4.交通事故紛争処理センターと日弁連交通事故相談センターの違い
交通事故に関する上記2種類のADRは、弁護士への相談や和解・示談のあっ旋などを無料で利用できるという点で共通していますが、異なる点もいくつかあります。
たとえば、交通事故紛争処理センターは、治療の終了後や後遺障害の等級認定後など、損害賠償額を確定できる段階になってから利用できます。一方、日弁連交通事故相談センターは事故直後や治療中でも相談を受け付けてくれます。
また、日弁連交通事故相談センターによる審査の手続きは、上述した共済が対象です。相手方が保険会社の場合、交通事故紛争処理センターを利用することになります。
5.交通事故のトラブルにADRを利用すべき?
調停や訴訟といった手続きには費用がかかり、訴訟の場合は解決までに1年ほど要するケースも少なくありません。交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターは無料で利用でき、より短期間での解決を目指せるというメリットがあります。
また、保険会社は交通事故や交渉の知識と経験が豊富なので、自分で対等に交渉するのは不可能に近いです。この点、和解や示談のあっ旋、審査の手続きでは、弁護士や審査会が中立の立場で間に入るため、知識や経験の差を埋められる点も大きなメリットといえるでしょう。
ただし、交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターはあくまでも被害者と加害者に対して中立の立場を守る点に注意が必要です。つまり、必ずしも被害者の味方ではないため、被害者の利益が最大になるように有利な解決案を提示するとは限りません。
また、交通事故紛争処理センターでは、法律相談や和解あっ旋に対応する相談担当弁護士を選ぶことができません。相性の悪さや力量不足などから不満や不安を感じる可能性もあるでしょう。
そのため、加害者側とトラブルになった場合、まずは交通事故に詳しい法律事務所の弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は依頼者の味方という立場から、最善の解決を目指して加害者側との交渉を進めてくれるので、損害賠償金の増額など納得できる解決が期待できます。
弁護士費用の負担が心配な方は、加入中の保険に弁護士費用特約が付いていないか確認しましょう。特約を付けている場合、弁護士費用が保険から支払われるため、費用の負担が不要になるケースが大半です。
特約を付けていない方も、ぜひ弁護士法人プロテクトスタンスにご相談ください。事故の状況や保険会社から提示されている賠償金額などを踏まえ、弁護士に依頼する金銭的なメリットがあるかシミュレーションいたします。
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