むち打ち [むちうち]
- 意味
- 交通事故などの衝撃により、鞭がしなるように首が振られたときに負うケガのことです。正式には、頸椎捻挫、頸部挫傷、外傷性頸部症候群などと診断されます。
- 解説
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0.むち打ちになる原因
突然の追突事故などによって身構えることができず、頸部(首)に大きな衝撃を受けてしまうことがあります。
これにより、首がまるで鞭をしなるように振られてしまった場合、首などに痛みやしびれなどの症状が現れてしまうことがあります。このような、交通事故などの強い衝撃を受け、首に不自然な力がかかることで、さまざまな症状を引き起こすことを「むち打ち(症)」と呼んでいます。
1.むち打ちの主な症状・種類
むち打ちは、交通事故の衝撃の大きさや被害の程度、受傷者の年齢など、さまざまな条件によって現れる症状が異なるという特徴があります。
むち打ちの主な症状
頸部(首)、頭、腕、手などの痛みやしびれ
肩こり / 腰痛 / 吐き気 / 目まい / 耳鳴り / 倦怠感(疲労感) / 可動域制限なお、下記で解説するむち打ちの種類によっても、現れる症状や程度が異なる場合があります。
1-1.頸椎捻挫型
頸椎捻挫型は、頸部の筋線維、前後の縦靭帯、椎間関節包などの軟部組織が過度に伸びたり、断裂したときに生じる可能性があります。
また、むち打ちの受傷者のうち、約70%程度がこの類型に該当するといわれています。
1-2.神経根症状型
神経根症状型は、脊髄から出ている神経根が、交通事故の衝撃で頸椎が歪み、その結果、神経根が圧迫されることでさまざまな症状を引き起こすものです。
この場合、前述した症状の他にも、圧迫されている神経が支配する領域に知覚障害なども現れる可能性があります。
1-3.バレ・リュー症候群型
バレ・リュー症状型とは、交通事故の影響で、交感神経と副交感神経からなる「自律神経」が損傷することで、さまざまな症状を引き起こす類型とされています。
この症状になってしまった場合、たとえば、耳鳴りや頭痛、めまい、吐き気といった症状が現れることが多いでしょう。
なお、バレ・リュー症状型は、「後部交感神経症候群」と呼ばれることがあり、交通事故による自律神経失調症ともいわれています。
1-4.脳脊髄液減少症
脳脊髄液減少症は、交通事故の衝撃で、脳脊髄液が漏出している状態のことをいいます。
この症状類型の場合は、慢性的に倦怠感(だるさ)を感じることもあり、気圧などの影響も受けやすいという特徴があります。
1-5.脊髄損傷型
脊髄損傷型では、脊髄本体が損傷したことが原因で、さまざまな症状を引き起こします。
むち打ちの中でも、重度な症状が現れやすく、前述した症状に加えて、運動障害や排尿障害などの重い症状が出てしまう可能性があります。
2.むち打ちの治療期間・治療方法
むち打ちの一般的な治療期間は、約3~6か月といわれています。
しかし、脊髄損傷型のように重度な症状がある場合には、6か月以上かかってしまう場合もあります。そして、むち打ちの場合に行われる主な治療方法は、以下の方法があります。
治療方法 内容 牽引療法 【 方法 】 器械または徒手で頸部を引っ張る。 【 効果 】 神経の圧迫緩和、血行促進、症状の緩和など。 運動療法 【 方法 】 可動域訓練や、筋肉強化のための運動を行う。 【 効果 】 可動域の改善、筋力の維持など。 電気療法 【 方法 】 患部などに電気で刺激を与える。 【 効果 】 筋肉の凝りがほぐれる、血行促進、症状の緩和。 温熱療法 【 方法 】 ホットパックなどで筋肉を温める。 【 効果 】 血行促進、症状の緩和など。 神経ブロック注射 【 方法 】 局所麻酔薬を神経やその周辺に注射する。 【 効果 】 一時的な痛みの緩和、症状の緩和など。 交通事故に遭って病院を受診すると、さまざまな検査が行われ、症状が診断されます。そして、診断された症状に適した治療方針で、むち打ちの治療が行われていきます。
なお、むち打ちになった場合は、整骨院や接骨院、鍼灸院などでも施術を受けることが可能です。病院の治療と合わせて受けることで、早期回復を目指すことができるでしょう。
ただし、整骨院などに通院する前には、病院の医師に、整骨院などへの通院の必要性を確認し、加害者の保険会社に連絡をすることが重要です。
これを怠ってしまうと、整骨院などの施術費が支払われないといったトラブルに発展しかねませんので、注意しましょう。3.むち打ちで請求できる損害賠償金
交通事故でむち打ちになり、病院に入院や通院をした場合、下記の費用を加害者側に請求することが可能です。
費用項目 内訳 治療関係費 診察費、検査費、手術費、付添看護費、入院雑費など。 休業損害 むち打ちの影響で働けなくなってしまった収入の、減収分を補償する賠償金。 入通院慰謝料 病院に入院や通院をしなければならなくなったことによる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料。 後遺障害
慰謝料後遺障害が残ったことにより受ける精神的苦痛に対して支払われる慰謝料。 後遺障害
逸失利益後遺障害が残らなければ得られたはずの失われた利益を補償する賠償金。 なお、交通事故の賠償金は、加害者の保険会社から提示されることが一般的です。そのため、提示された金額が適切であるのか、示談をする前に弁護士に確認してもらうことをおすすめします。
4.むち打ちと後遺障害の
等級認定手続きむち打ちは、必要な期間、適切な治療を受けても、症状が完治しないことがあります。
たとえば、むち打ちの治療を6か月以上継続してもなお、これ以上の回復の兆しが見られないときには、医師から「症状固定」の診断を受けることになります。症状固定の診断を受けたときに、残存している症状が後遺症となります。
そして、後遺症が残った場合は、自賠責保険会社に対して後遺障害の等級の認定手続きを申請することができます。申請方法には、「事前認定」と「被害者請求」の方法があり、自分の状況に適した方法で申請していきます。
むち打ちの場合、後遺障害等級の14級9号(局部に神経症状を残すもの)、または、12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)に該当する可能性があります。
14級9号の場合、事故直後から一貫して症状が続いており、後遺症の存在を神経学的所見などから、医学的に説明可能な場合に認定される可能性があります。
また、12級13号の場合は、CTやMRI画像検査などで得られた客観的な他覚的所見などで異常が認められ、医学的に証明することができるときに認められる可能性があるという違いがあります。
そして、認定された等級によって、請求できる後遺障害慰謝料や逸失利益の金額が大きく異なります。
14級9号に認定された場合の後遺障害慰謝料は、自賠責基準では32万円、弁護士基準では110万円となります。
また、12級13号に認定された場合は、自賠責基準で94万円、弁護士基準で290万円になります。このように、請求可能な金額に大きな差が生じてしまいますから、正しい後遺障害等級に認定される必要があります。
5.交通事故でむち打ちになったら
弁護士に相談むち打ちは、症状の原因を客観的に証明しにくいという特徴があります。そのため、後遺障害の等級に認定されないこともおおいにあり得ます。
認定されずに「非該当」となってしまうと、後遺症が残っても、後遺障害に関する慰謝料や逸失利益の請求は認められません。そして、慰謝料などの算定基準(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)によって、最終的に受け取れる賠償金の総額が大きく異なってきます。
弁護士基準は、弁護士が慰謝料などの賠償金を算定するときに活用する基準であり、被害者の損害に見合った形式で、最も高額な賠償金額を算出することができます。
また、弁護士であれば、むち打ちで後遺障害の等級認定を獲得するためのサポートが行えますし、賠償金の増額が期待できますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
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