治療費打ち切り [ちりょうひうちきり]
- 意味
- 交通事故によるケガの治療を受けているにもかかわらず、加害者側の保険会社が治療費の支払い対応を終了することです。ただし、治療そのものの終了を意味するわけではないので、医師が治療継続の必要性を認めていれば、治療を続けることができます。
- 解説
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0.交通事故の治療費は保険会社が支払うことが一般的
交通事故でケガをした場合、加害者側が加入している任意保険会社が病院や整骨院などに対して治療費を直接支払うことが一般的です。この対応を「一括対応(任意一括対応)」と呼びます。
一括対応が行われている間は、被害者が窓口で治療費を立て替える必要がないため、治療に専念しやすいというメリットがあります。
もっとも、一括対応は法律上義務付けられた制度ではなく、保険会社による任意のサービスです。そのため、治療期間や症状の経過などを踏まえて、保険会社が治療費の支払い対応の終了を打診することがあり、これが実務上「治療費打ち切り」と呼ばれています。
1.治療費打ち切りを打診する理由
交通事故の治療費は、一般的にケガが完治するまで、または「症状固定」に至るまでの期間について認められます。症状固定とは、治療を続けてもこれ以上の改善が見込めず、症状が一進一退の状態になったことです。
症状固定になった後は、原則として治療費が損害として認められなくなり、保険会社側にとっては、治療期間が長くなるほど支払総額が増えていきます。
また、すべての自動車などに加入が義務付けられる自賠責保険には、交通事故によるケガ(傷害)に対する補償額の上限が定められています。具体的な金額は120万円で、上限を超えると任意保険会社が負担することになります。
このような事情から、治療の開始から一定期間を過ぎると治療費の打ち切りを打診されることがあります。
なお、ケガの種類によって打ち切りを打診される時期に一定の傾向があります。たとえば、交通事故でよく見られるむち打ち(頸椎捻挫)では、治療開始からおおよそ3か月を経過した頃に打診されることが多いです。
2.治療費打ち切りと症状固定は異なる
治療費打ち切りと「症状固定」の意味が混同されるケースがあります。保険会社が治療費の打ち切りを打診する際、打ち切りの理由として「そろそろ症状固定の時期なので」と説明するケースが多いため、「治療費打ち切り=症状固定」というイメージに繋がるのかもしれません。
しかし、治療費打ち切りと症状固定には、次のような大きな違いがあります。
- 治療費打ち切り:保険会社の判断で一括対応(治療費の直接支払い)を終了する
- 症状固定:回復状況や治療経過などから「これ以上治療を続けても、症状の改善が見込めない」と医師が判断する
保険会社による治療費の打ち切りは、あくまで一括対応の終了という手続き上の判断であり、治療を継続するかどうかの最終的な判断は、主治医が行います。
そのため、保険会社から治療費の打ち切りを打診されたからといって、それが直ちに医学的な意味での「症状固定(=もう治療の効果がない状態)」を意味するわけではないのです。
3.打ち切り後に自己判断で治療を中断するリスク
保険会社から治療費打ち切りを打診されると、「もう通院をやめなければならない」と考えてしまう方も少なくありません。しかし、まだ症状が残っているにもかかわらず、自己判断で通院を中断してしまうと、次のような不利益を受けるリスクがあります。
- ケガが十分に治りきらない(健康上のリスク)
十分な治療を受けられないまま通院をやめてしまうと、ケガが完治せず、将来的に重大な後遺症(痛みやしびれなど)が残ってしまうかもしれません。 - 適切な補償を受けられなくなる(金銭・法律上のリスク)
本来よりも早い段階で治療を終えると、保険会社から症状が軽微だったと判断され、入通院慰謝料(入院や通院に対する慰謝料)が低く算定されたり、後遺障害の等級認定で不利になったりする可能性があります。
主治医が治療継続の必要性を認めているのであれば、一括対応の延長を求めて保険会社と協議したり、健康保険などを利用して自己負担で通院を続けたりすることが大切です。
4.治療費打ち切りを打診された場合の対応
治療費打ち切りを打診された場合は、まず主治医に現在の症状や今後の治療方針について確認することが重要です。
主治医が治療継続の必要性を認めている場合には、その旨を診断書や意見書などで示してもらい、保険会社へ提出することで一括対応が延長される可能性があります。
また、一括対応の延長が認められなくても、自己負担で通院を継続することもできます。健康保険を利用できる場合があるので、自己負担額を抑えながら治療を続けることが可能です。
自己負担した治療費については、治療継続の必要性や相当性が認められれば、示談交渉の場で相手方へ請求できます。
もっとも、自己負担で支払った治療費が後にすべて損害として認められるとは限りません。治療継続の必要性や治療内容の相当性などが厳しく審査されるため、自己判断で動く前に、まずは主治医や弁護士に相談しながら適切に対応することが望ましいでしょう。
5.打ち切りへの対応は弁護士に相談を
まだ治療を続けたいのに治療費の打ち切りを打診された場合や、保険会社とのやり取りに不安がある場合は、交通事故に詳しい弁護士への相談を検討しましょう。
弁護士であれば、医師の診断内容や通院状況を踏まえながら、治療継続の必要性について保険会社へ具体的な根拠を示して交渉することができます。
打ち切りが避けられない場合でも、最終的な示談交渉まで見据え、健康保険への切り替えや後遺障害等級認定など、最適な補償を受けるための対応策の提案が可能です。
さらに、弁護士が介入することで、慰謝料などの算定基準において最も高額な弁護士基準(裁判所基準)を使うため、最終的に受け取れる慰謝料などの賠償額の増額が期待できます。
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