「賃金センサス」とは?交通事故と損害賠償に関する法律用語

やさしい交通事故の用語集

賃金センサス [ちんぎんせんさす]

意味
平均賃金に関するデータが、性別や年齢、学歴などに応じてまとめられた資料で、厚生労働省が毎年公表しています。交通事故の被害者が、休業損害や逸失利益を計算する際に使用します。
解説

賃金センサスとは

賃金センサスとは、厚生労働省が毎年実施する「賃金構造基本統計調査」 の結果をまとめた資料の通称です。
性別や年齢、学歴など、さまざまなデータから平均賃金を調べることができます。

交通事故で賃金センサスを使用する場面

賃金センサスのデータは、交通事故における損害賠償を計算する際に使用することがあります。

  • 休業損害
  • 逸失利益

「休業損害」は、事故によるケガの治療のため、仕事を休んだことで収入が減少した場合、減収分の補償として加害者に請求することができます。

「逸失利益」は、交通事故に遭わなければ将来得られていたはずの利益のことです。被害者に後遺障害が残った、または被害者が死亡したことで、収入が減少したり、途絶えたりした場合に請求することができます。

休業損害と逸失利益は、事故当時に被害者が得ていた収入をベースに計算します。この収入のことを「基礎収入」と呼びます。

そして、専業主婦や学生など収入がない人も、休業損害や逸失利益の請求が認められる場合があります。
収入がない人が休業損害や逸失利益を計算する際、賃金センサスに記載された平均賃金を基礎収入として使用します。

なお、会社員などの給与所得者が逸失利益を計算する場合、事故前年の年収額を基礎収入とします。
しかし、被害者が30歳未満の場合、事故前年の年収額を基礎収入とすると、将来の昇給などが反映されず、逸失利益が低額になる可能性があります。

そのため、事故前年の年収と賃金センサスの平均賃金を比較し、高額な方を基礎収入として計算する場合もあります。

【2022年版】年齢層別・学歴別の平均賃金

2022年版の賃金センサスをもとに、賞与なども含めた平均賃金を年齢層別と学歴別にまとめました。
平均賃金を基礎収入として休業損害や逸失利益を計算する際、参考にしてみてください。

なお、賃金構造基本統計調査は毎年行われ、平均賃金の金額も見直されます。
実際に平均賃金を計算に用いる際は、最新の賃金センサスを参照する必要があります。

年齢層別の平均賃金
男女計男性女性
全年齢496万5,700円554万9,100円394万3,500円
~19歳255万4,300円265万3,900円238万8,200円
20~24歳327万1,800円340万1,800円313万1,200円
25~29歳403万5,900円427万3,600円372万6,300円
30~34歳456万8,500円495万9,000円390万7,800円
35~39歳508万6,500円560万500円411万1,400円
40~44歳540万6,000円600万8,200円423万8,500円
45~49歳563万5,300円636万800円431万7,100円
50~54歳587万7,500円672万2,600円431万5,800円
55~59歳590万2,900円674万100円428万700円
60~64歳444万8,000円490万4,500円343万6,000円
65~69歳360万2,800円385万7,500円297万5,500円
70歳~322万4,100円332万7,900円295万5,200円

引用:賃金構造基本統計調査(政府統計の総合窓口)

学歴別の平均賃金
男女計男性女性
全学歴432万8,500円554万9,100円394万3,500円
中卒402万2,200円432万8,500円289万8,200円
高卒434万5,500円482万9,900円330万7,700円
専門学校卒456万7,600円499万600円408万6,800円
高専・短大卒463万4,100円575万2000円417万300円
大学卒587万1,900円640万2700円462万4,600円
大学院卒786万4,100円819万4,100円648万100円
不明386万2,500円456万5,100円310万5,200円

引用:賃金構造基本統計調査(政府統計の総合窓口)

平均賃金の確認方法

平均賃金は、各省庁が公表するさまざまな統計データを閲覧できる「e-Stat」というホームページから確認することができます。
具体的には、次のような手順でe-Statから平均賃金を確認します。

  1. e-Statの「賃金構造基本統計調査」に関するページから、「産業大分類」を選ぶ
  2. 「学歴、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」のエクセルをダウンロードする
  3. エクセルを開き、性別や学歴、年齢層などの区分から、平均賃金を調べたい区分を探す
  4. 該当する区分から「きまって支給する現金給与額」と「年間賞与その他特別給与額」の行に記載された数値を確認する

「きまって支給する現金給与額」と「年間賞与その他特別給与額」に記載された数値は、いずれも単位が1,000円です。
また、「きまって支給する現金給与額」は月額で、「年間賞与その他特別給与額」が年額となっています。

そのため、平均年収を調べる場合は、次の計算式を用います。

きまって支給する現金給与額 × 12 + 年間賞与その他特別給与額

たとえば、賃金センサスを見ると、男性(全年齢)の「きまって支給する現金給与額」は37万6,500円で、「年間賞与その他特別給与額」は103万1,100円です。
そのため、全年齢の男性の平均年収は次のように計算します。

37万6,500円 × 12 + 103万1,100円 = 554万9,100円

休業損害や逸失利益の計算は弁護士に相談を

加害者側の保険会社は、休業損害や逸失利益を会社独自の支払基準で計算し、本来認められるはずの金額よりも低い額を提示するケースが大半です。
そのため、提示された額に不満がある場合、正しい金額を算出したうえで、保険会社に増額を求めることになります。

ただし、基礎収入を適切に判断し、正しい金額を導き出すためには、交通事故に関する専門知識が求められます。
また、保険会社は損害賠償金を少しでも抑えるため、さまざまな資料や説明を繰り出し、簡単には増額に応じようとしないでしょう。

この点、交通事故に詳しい弁護士であれば、休業損害や逸失利益を正しく計算し、その金額を支払うよう、法的な視点から保険会社に主張してくれます。ぜひ一度ご相談ください。

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休業損害[きゅうぎょうそんがい]

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