著しい過失 [いちじるしいかしつ]
- 意味
交通事故においては、基本の過失割合を修正するための要素のひとつを意味します。一例として、前方不注意や酒気帯び運転などの過失が該当します。
- 解説
交通事故の発生に対して、被害者にも何らかの落ち度(過失)がある場合、加害者だけが責任を負うと不公平になってしまいます。
そのため、被害者と加害者の過失の割合を数値化し、割合に応じて損害賠償金の金額を調整することになります。この数値を「過失割合」と呼び、被害者にまったく過失がなければ「0:10」、10%の過失があれば「10:90」となります。
そして、過失割合に応じて損害賠償金の金額を調整することを、「過失相殺」と呼びます(民法第722条2項)。たとえば、事故により100万円の損害が発生した場合、被害者の過失割合が0%であれば、100万円の損害賠償金が認められます。
もし、被害者に10%の過失割合がある場合は、過失相殺により損害賠償金も10%減額されて90万円となります。「著しい過失」は過失割合を修正する要素
過失割合の判断は、まず事故類型ごとにまとめられている「基本の過失割合」と、実際の事故の状況を照らし合わせることから始まります。
たとえば、信号機があり、道幅が同じ交差点で起きた事故では、信号の色によって、基本の過失割合が次のように定められています。しかし、同じような場面で発生した事故でも、具体的な状況は個別の事故によって異なります。
そのため、基本の過失割合だけでは、事故の状況に対して適切な割合とならない可能性があります。より適切な過失割合にするため、事故の状況を踏まえて過失割合を調整(修正)することがあり、修正する際に考慮される事情を「修正要素」と呼びます。 「著しい過失」とは、過失割合の修正要素のひとつであり、通常想定される過失の程度を超えるような過失を意味します。
たとえば、運転時に次のような行為をしていると、著しい過失があると判断される可能性があります。
- おおむね時速15㎞以上30㎞未満の速度違反(高速道路を除く)
- 脇見運転など著しい前方不注意
- 携帯電話やカーナビの使用・操作、画面を見ながらの運転
- ハンドルやブレーキの著しく不適切な操作
- 酒気帯び運転
- 一般道でのヘルメットの不着用(バイクの場合)
- 2人乗り、夜間の無灯火、傘を差した片手運転など(自転車の場合)
もしも、著しい過失が認められると、認められた側の過失割合が不利な数値に修正されます。
たとえば、基本の過失割合が20(被害者):80(加害者)のケースで、加害者に著しい過失が認められると、原則的に過失割合が10%プラスされ、10:90に修正されるのです。また、著しい過失よりもさらに悪質な過失を「重過失」と呼び、重過失が認められた場合は過失割合が20%プラスされます。
過失割合に不満があれば弁護士に相談を
交通事故の被害に遭った場合、加害者が任意保険会社に加入していると、加害者側の保険会社から、過失割合を踏まえた損害賠償額が提示されます。
その際、「普通に運転していたのに著しい過失があると判断された」とか「相手が脇見運転をしていたのに著しい過失が認められていない」など、過失割合の判断に不満を感じるケースがあります。
過失割合の数値によって損害賠償金の金額は大きく変わってきます。
損害賠償金で損をすることがないよう、過失割合に不満があればその見直しを保険会社に求めることが重要です。過失割合を見直してもらうには、正しい過失割合を確認したうえで、事故の詳しい状況がわかる証拠を収集し、保険会社と交渉しなければなりません。
しかし、過失割合の確認や証拠の収集には専門的な知識が求められますし、保険会社は事故の知識や交渉の経験が豊富なので、対等に交渉するのは非常に困難です。そのため、交通事故に詳しい弁護士に相談し、過失割合に関する保険会社との交渉を依頼することをおすすめします。
弁護士であれば、事故状況に即した正確な過失割合を判断し、必要な証拠を揃えたうえで、法的な視点から対等以上の立場で保険会社との交渉を進めてくれます。
- 関連する用語
- 過失割合 [かしつわりあい] 重過失[じゅうかしつ]
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