警察対応
実況見分調書とは何ですか?閲覧するにはどうすればよいですか?
警察が行った実況見分の結果をまとめた書類です。被害者自身で検察庁や裁判所に請求するか、弁護士に手続きを依頼することで入手・閲覧できます。
0.実況見分調書とは
交通事故による死傷者が発生する人身事故が起きると、通報を受けた警察官が事故の状況について調べる実況見分を行います。
実況見分の結果について詳しくまとめた書類が実況見分調書です。
なお、死傷者が発生せず、車両などの物が壊れた物損事故の場合、実況見分調書ではなく、より簡易な内容の物件事故報告書が作成されることが一般的です。
1.実況見分調書の記載内容
実況見分調書には、主に次のような内容が記載されるとともに、事故現場の見取図や写真などが添付されます。
- 事故が発生した日時、天候
- 実況見分を実施した日時、天候
- 実況見分を行なった(事故が発生した)場所、道路の名前
- 道路の状況(路面の状況、見通しの良さ、信号の有無など)
- 車両の状況(車種や番号、サイズ、損害の部位や程度など)
- 立会人(被害者、加害者、目撃者)が証言した内容
実況見分には、事故の被害者や加害者、目撃者が立ち会い、警察からの質問などに答えることになります。
たとえば、次のようなことを聞かれます。
- 事故の相手方を最初に発見した地点
- ブレーキを踏んだ地点
- ハンドルを切った地点
- 危険を感じた地点
- 相手と接触した地点
実況見分調書は示談交渉をすすめるうえで重要な書類となります。
完成後に内容を訂正することは非常に困難なので、質問には正確に答えるようにしましょう。
2.実況見分調書は過失割合の判断に重要な書類
交通事故の発生に対して被害者にも何らかの責任(過失)がある場合、過失の大きさに応じて減額する方法で、損害賠償金の金額を調整します。
過失の大きさを数値化したものを「過失割合」と呼び、過失割合に応じて賠償金を減額することを「過失相殺」と呼びます(民法第722条2項)。
過失割合は、賠償金の金額とともに、示談交渉の場で加害者側の保険会社から提示されることが一般的です。
過失割合の内容よって賠償金の金額も大きく上下するので、保険会社が提示した過失割合に納得できなければ見直しを求めます。
適切な過失割合を主張するうえで、実況見分調書は重要な証拠のひとつになるため、入手方法を確認しておきましょう。
3.実況見分調書の入手方法
実況見分調書を入手する方法は、交通事故の加害者に対する刑事手続きが、次のどの段階にあるかによって異なります。
- 捜査中
- 不起訴処分後
- 公判中
- 判決確定後
3-1.捜査中
捜査段階は実況見分調書を入手することはできません(刑事訴訟法第47条)。
つまり、実況見分調書を入手できるのは、捜査が終わって加害者が不起訴処分になるか、起訴されて裁判が始まった後です。
3-2.不起訴処分後
加害者が不起訴処分になった場合、検察庁に開示請求することで、実況見分調書を入手できます。手続きの主な流れは次の通りです。
- 交通事故証明書を入手し、事故の捜査を担当した警察署や、事故の発生日時と場所、加害者の氏名などを確認する
- 事故の捜査を担当した警察署に事故証明書の内容を伝え、事故を送致(送検)した検察庁や送致日、送検番号を確認する
- 送致先の検察庁に送致日や送検番号などを伝え、実況見分調書の閲覧を請求する
なお、交通事故証明書は実況見分調書を入手するときだけでなく、保険金の請求など、さまざまな場面で必要となる大切な書類です。
次のQ&Aで交通事故証明書の入手方法など詳しく解説しています。ぜひご確認ください。
3-3.公判中
加害者に対する裁判が始まった場合、審理が開かれている裁判所に実況見分調書の閲覧や謄写を申請します。
裁判所にある申請書に必要事項を記入するなどして申請しましょう。
3-4.判決確定後
加害者に対する判決が確定した後は、不起訴処分後と同様、検察庁に開示請求することで、実況見分調書を入手できます。
4.実況見分調書の入手は弁護士に依頼できる
被害者に代わって、弁護士が実況見分調書を入手する手続きを進めることもできます。
自身で手続きをすることに不安がある場合や、時間の確保が難しい場合は、弁護士に依頼してもよいでしょう。
また、弁護士に依頼することで、保険会社が提示する過失割合の見直しや、損害賠償金の増額も期待できます。
自分で過失割合の見直しを求めても、保険会社は見直しを認めない理由を新たな資料とともに説明してくるので、交渉を有利に進めるのは困難です。
この点、交通事故に詳しい弁護士であれば、法的な視点から適切に主張できるので、過失割合の見直しと賠償金の増額が認められる可能性が高まります。
弁護士法人プロテクトスタンスには、交通事故に関する知識と増額交渉に成功した実績が豊富な弁護士が在籍していますので、安心してご相談ください。
- この記事を監修した弁護士
弁護士 大橋 史典弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)獨協大学法学部法律学科卒業 明治大学法科大学院法務研究科 修了(68期)。
弊事務所に入所後、シニアアソシエイトとして活躍。交通事故分野を数多く取り扱い豊富な経験を持つ。