警察対応
実況見分とはどのような手続きですか?
交通事故現場の状況や加害者・被害者の把握、車両の状態などを明らかにするために行われる警察の捜査です。
実況見分での聴取内容
実況見分では、交通事故が発生した現場の状況、加害者・被害者・目撃者の情報、各車両の位置関係や状態などが警察官によって調べられます。
- 実施した日時
- 実施場所(交通事故現場の場所)
- 立会人(事故の当事者・目撃者)の氏名・年齢・住所・職業
- 実施時の天候・事故当時の天候
- 事故状況(走行速度・相手を発見した位置・衝突時の位置・信号の色など)
- 事故現場の道路状況(道路の勾配・障害物の有無・交通規制など)
- 事故の証跡の有無(ブレーキ痕・スリップ痕の有無など)
- 事故当時の路面状況
- 事故車両の状態
実況見分での聴取内容は書面にまとめられる
実況見分で聴取された内容は、「実況見分調書」という書面にまとめられます。
また、実況見分調書は、実況見分で聴取した内容通りに作成されます。
そのため、正しい内容で実況見分調書が作成されるよう、明確な事実のみを伝えることがポイントです。
交通事故の過失割合は実況見分調書をもとに判断される
交通事故の過失割合とは、発生した交通事故の責任の程度を表した割合です。
過失割合が認められた場合、その割合に応じて、最終的に受け取れる賠償金が減額されてしまいます(過失相殺)。
そのため、適切な過失割合で、示談交渉を進めていくことが大切です。
この点、交通事故の過失割合は、警察官がまとめた実況見分調書の内容を参考にして、保険会社が判断していきます。
調書の内容によっては、たとえ被害者であっても過失が認められてしまい、賠償金が減額されかねません。
そのため、実況見分調書が正しい内容で作成されるよう、実況見分では自分の主張をはっきりと伝え、調書の内容もよく確認するようにしましょう。
実況見分が行われるタイミング
車両の運転者は、交通事故に遭った(起こした)場合には、負傷者の救護義務(道路交通法第72条1項前段)や警察への報告義務(同法同項後段)を果たさなければなりません。
実況見分は、警察官に交通事故の報告をし、現場に駆けつけた警察官によって行われることが一般的です。
ただし、被害者がケガをして病院に搬送されたような場合、被害者の聴取は、後日行われることもあります。
また、追加の捜査のために、呼出しを後日受ける場合もあります。
なお、当初は物損事故として処理されていたものの、人身事故扱いへの切り替えが認められた場合、日程調整のうえで後日に交通事故の現場で実況見分が行われます。
指定日時に立ち会い、事故の状況を正確に説明するとよいでしょう。
実況見分が行われる理由
交通事故の実況見分は、原則として死傷者がいる事故(人身事故)の場合に行われます。
この理由は、人身事故の場合、過失運転致死傷罪(自動車運転死傷行為処罰法第5条)や危険運転致死傷罪(同法第2条)に問われるなど、刑事事件として検察に送致される可能性があることから、その証拠を確保することを目的に捜査として行われます(刑事訴訟法第197条第1項、犯罪捜査規範第104条)。
反対に、物損事故の場合は、刑事事件として起訴される可能性はほとんどありませんから、実況見分は行われず、「物件事故報告書」のみ作成されます。
ただし、故意に物損事故を起こした場合には起訴される可能性があります。
なお、物件事故報告書を取得するには、弁護士会照会(弁護士法第23条の2)による専門的な手続きが必要です。取得したい場合は、弁護士にご相談ください。
その他、交通事故の刑事記録の入手方法に関する詳しい解説は、こちらのQ&Aもあわせてご参照ください。
交通事故の当日に実況見分に立ち会えなかったら
交通事故の被害者がケガをして、病院に搬送されたなど、何らかの理由で実況見分に立ち会えない場合があります。
このような場合でも、交通事故時の状況を確認するために実況見分は行われ、加害者や第三者の証言にもとづいて実況見分調書がまとめられます。
その後、警察から実況見分調書の内容に間違いがないか、確認を求められます。
ここで注意すべき点は、被害者に不利な内容で実況見分調書が作成されていた場合です。
万が一、事実と異なる内容が記載されているなどの場合には、拒否することができます。
このような対応を受けた際には、実況見分のやり直しを求めたり、弁護士に相談したりすることが得策です。
なお、自動車保険や火災保険に「弁護士費用特約」があれば、弁護士への相談料や弁護士費用は保険から支払われますので、自己負担することなく、弁護士に相談・依頼をすることができます。
そして、交通事故直後から弁護士に依頼をすれば、損をしないための対応方法や、通院方法のアドバイス、損害賠償の請求などの全面的なサポートを受けることができます。
交通事故では、さまざまな手続きや交渉を行う必要があり、ケガの治療をしながら対応を進めていくことは、被害者にとって多大な負担がかかることでしょう。交通事故に遭った際には、弁護士への相談をお勧めします。
- この記事を監修した弁護士
弁護士 大橋 史典弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)獨協大学法学部法律学科卒業 明治大学法科大学院法務研究科 修了(68期)。
弊事務所に入所後、シニアアソシエイトとして活躍。交通事故分野を数多く取り扱い豊富な経験を持つ。