T&Tオルファクトメーター [てぃーあんどてぃーおるふぁくとめーたー]
- 意味
- 嗅覚障害が疑われる場合、耳鼻咽喉科で嗅覚検査を実施します。その検査において、嗅覚感度の判定に用いられる検査キットのことです。
- 解説
T&Tオルファクトメーターを用いた嗅覚検査では、5種類の基準臭が用意されています。そして、基準臭ごとに、5、4、3、2、1、0、-1、-2の8段階の濃度が設定されています(5が最も濃い濃度)。
基準臭 においの特徴 A バラの花のにおい、軽くて甘いにおい B 焦げたにおい、カラメルのにおい C 腐敗臭、古靴下のにおい、汗くさいにおい、納豆のにおい D 桃のカンヅメ、甘くて重いにおい E 糞臭、野菜くずのにおい、口臭、いやなにおい 検査では、A~Eの順番で、基準臭を付けたろ紙を濃度の薄いほうから嗅いでいきます。
そして、何か臭いを感じるまで(検知閾値)、さらに、それが何の臭いか判断できるまで(認知閾値)濃度を上げて検査します。検査結果は、オルファクトグラムと呼ばれる表に記入していきます。
このとき、最高濃度において検知不能または認知不能の場合は、各最高濃度に1を加えたものを域値として計算します。 最終的に、認知閾値の平均値を求めて、嗅覚の喪失度を5段階で評価します。平均値が2.6~5.5までの場合は、においの感じ方が鈍くなる「嗅覚減退」という嗅覚障害となり、5.6以上になると、においがまったく感じられなくなる「嗅覚脱失」という嗅覚障害となります。
交通事故とT&Tオルファクトメーター
交通事故による頭部や鼻の外傷などにより、嗅覚障害の後遺症が発生した場合、後遺障害の等級認定を申請することができます。
この点、鼻の軟骨の欠損を伴わない嗅覚減退や嗅覚脱失の機能障害は、後遺障害等級表上、特に定められていません。そのため、実務上は以下のように取り扱われます。
認知閾値の平均値 嗅覚障害の程度 後遺障害等級 ~1.0 正常 — 1.1~2.5 軽症 — 2.6~4.0 嗅覚減退
(においの感じ方がにぶくなる)14級相当 4.1~5.5 5.6~ 嗅覚脱失
(においがまったく感じられない)12級相当 なお、このT&Tオルファクトメーターは、十分な換気設備が必要なため、すべての耳鼻咽喉科に設置されているわけではありません。
検査を希望する場合は、病院やクリニックへ事前に確認しておくなど注意が必要です。嗅覚障害による後遺障害
嗅覚減退や嗅覚脱失について後遺障害の等級が認定された場合でも、加害者側の保険会社との示談交渉には注意が必要です。
特に、後遺障害の逸失利益については、嗅覚減退や嗅覚脱失が、その後の労働能力にどの程度の支障が出るのか争いになることがあります。
わかりやすく言うと、「においを嗅ぐことができなくとも、仕事に支障がない」として、保険会社が労働能力の喪失を認めないことがあります。実際の裁判例でも、デスクワークによる会社員の労働能力喪失を認めなかったケースがあり、また、花屋経営者や製造技師に認めたケース、さらには、調理師(兼飲食店経営者)には基準以上の労働能力喪失を認めたケースもあります。
そのため、逸失利益を獲得するには、被害者の職業に加えて、仕事への具体的な支障や不都合について、実情に即して丁寧に主張・立証していくことが重要です。
さらに、労働能力の喪失が認められない場合でも、嗅覚障害が日常生活に及ぼしている不利益やQOLの低下を明らかにすることで、後遺障害の慰謝料の増額が認められる可能性もあります。
新型コロナウィルスによる嗅覚異常を経験された方もいらっしゃるかと思いますが、嗅覚は人が生きていくうえで非常に重要な感覚の1つです。
交通事故による嗅覚障害の後遺症に悩んでいる方は、ぜひ、弁護士に相談してください。
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