刑事記録 [けいじきろく]
- 意味
- 刑事事件の捜査や裁判などを行う警察、検察、裁判所が作成する文書や資料を指します。交通事故の被害者は、賠償責任の有無や過失割合などを巡って加害者と争う際に、刑事記録が重要な証拠となる場合があります。
- 解説
0.刑事記録の種類
刑事記録には、次のようなものがあります。
- 実況見分調書
- 供述調書
- 捜査報告書
- 起訴状
- 裁判書(判決書・決定書・命令書)
交通事故で加害者側と過失割合などについて争いが生じた際、特に重要な資料として取得した方がよいのが実況見分調書と供述調書です。
実況見分調書は、警察が事故や事件の現場状況を詳細に記録したものです。交通事故の場合、事故当時の日時や天候、道路・車両の状況、現場の見取り図、立会人の証言などが記されます。
「供述調書」は、加害者や被害者、目撃者などが事故当時の状況を説明する内容を、警察や検察がまとめたものです。
1.刑事記録の取得方法
被害者が刑事記録を取得するためには、自分自身で手続きするか、弁護士に手続きを依頼することになります。ただし、加害者に対する刑事手続の進行段階に応じて取得方法が異なり、段階によっては取得できないこともあります。
ここでは、刑事手続を捜査中、不起訴処分後、起訴後の公判中、判決確定後の段階に分け、それぞれの段階で被害者が刑事記録を取得する方法について解説します。
1-1.捜査中
法律により、刑事記録は公判が開廷するまで原則的に非公開とされています(刑事訴訟法第47条)。そのため、捜査中は実況見分調書や供述調書を取得することができません。
ただし、交通事故の発生を証明する書類として、交通事故証明書は取得可能です。交通事故証明書とは、事故の発生日時や場所、当事者、事故の概要など、基本的な事故の事実を記録したもので、警察に通報した際に作成されます。
交通事故証明書は、加害者側の任意保険会社から損害賠償金を受け取ったり、労災保険から補償を受けたりする際に必要な書類です。必ず取得しておきましょう。
交通事故証明書の取得は、自動車安全運転センターのホームページから請求できます。
1-2.不起訴処分後の取得方法
不起訴処分とは、検察が加害者を起訴しない、つまり、刑事裁判にかけないということです。不起訴処分になった場合は、実況見分調書と供述調書で、取得方法が異なります。
①実況見分調書の取得方法
実況見分調書は、検察庁に開示請求することで取得できます。主に次のような流れで手続きを進めます。
- 交通事故証明書を入手する
- 警察署で送致した検察庁や送致日、送検番号(検番)を確認する
- 送致先の検察庁へ閲覧・謄写を請求する
まずは交通事故証明書を入手し、証明書の内容から、事故の捜査を担当した警察署や、事故の発生日時と場所、加害者の氏名などを確認します。
証明書に記載された警察署を訪れ、送致(送検)した検察庁や送致日、送検番号を教えてもらいます。警察署へ行く際は本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書)を持参しましょう。
送致先の検察庁に送検番号などを伝えることで、実況見分調書の閲覧・謄写を申請することができます。検察庁に訪問する際は、事前に予約する必要があります。
②供述調書の入手方法
不起訴処分となった場合、プライバシー保護の観点などから、供述調書は原則として取得できません。ただし、民事訴訟において、文書送付嘱託(ぶんしょそうふしょくたく)という手続きを取ることにより、裁判所の判断により開示される場合があります。
文書送付嘱託とは、裁判所が、当事者からの申立てにより、文書の所持者に対して送付を依頼する手続きです(民事訴訟法第226条)。
裁判所に対して、文書の所持者や証明すべき事実などの必要事項を記入した文書送付嘱託の申立書を提出し、以下の要件をすべて満たした場合に供述調書が開示されます。
- 裁判所から、不起訴記録中の特定の者の供述調書について文書送付嘱託がなされた
- 供述調書の内容が、当該民事訴訟の結論を直接左右する重要な争点に関するものであって、かつ、その争点に関するほぼ唯一の証拠であるなど,その証明に欠くことができない
- 供述者が死亡、所在不明、心身の故障もしくは深刻な記憶喪失などにより、民事訴訟においてその供述を顕出することができない、または当該供述調書の内容が供述者の民事裁判所における証言内容と実質的に相反する
- 供述調書を開示することによって,捜査・公判への具体的な支障又は関係者の生命・身体の安全を侵害するおそれがなく、かつ、関係者の名誉・プライバシーを侵害するおそれがあるとは認められない
1-3.起訴後の公判中の取得方法
加害者が起訴され、公判が開始されると、被害者は審理が開かれている裁判所で、実況見分調書と供述調書の閲覧・謄写を申請することができます(犯罪被害者保護法第3条1項)。取得の際は、裁判所に備え付けの申請書に必要事項を記入して申請します。
また、弁護士に依頼すれば、弁護士会照会という、弁護士会が必要事項を調査・照会する制度により取得できます(弁護士法第23条の2)。
1-4.判決確定後
裁判が終了して判決が確定すると、第一審を担当した検察庁に開示請求することで、実況見分調書と供述調書を取得できます。実況見分調書と供述調書以外にも、判決文や証拠書類などの刑事記録全体を取得することも可能です。
加害者が不起訴処分となった場合に実況見分調書を取得する際と同様の方法で、手続きを進めてください。また、弁護士に依頼し、弁護士会照会を通じて取得することも可能です。
ただし、保管期間を過ぎると取得できなくなるため、保管期限内に請求する必要があります。保管期間は、次のように刑の重さによって異なります(刑事確定訴訟記録法)。
死刑または無期の懲役もしくは禁錮にあたる罪 15年 有期の懲役または禁錮にあたる罪 5年 罰金、拘留または科料にあたる罪 3年 2.加害者が未成年だった場合
加害者が未成年の場合には「少年保護事件」として家庭裁判所で処理されます。刑事記録は少年保護事件記録として、第一審の家庭裁判所で保管されます。
被害者または被害者の委託を受けた弁護士は、審判開始決定の発令後、保護事件を終局させる決定が確定してから3年を経過するまでの間、原則として刑事記録の閲覧・謄写ができます(少年法第5条の2第2項)。
しかし、プライバシー保護の観点から、公開されない可能性もあります(同法第5条の2第1項)。
3.物損事故の場合
交通事故の被害者が死傷する人身事故ではなく、車両や所持品などの物のみが損傷した物損事故の場合は、基本的に刑事事件にはなりません。物損事故が刑事事件になりえるのは、車両などの運転者が業務上必要な注意を怠り、または重大な過失により他人の建造物を損壊したような場合です(道路交通法第116条)。
刑事事件にならない物損事故では、警察が実況見分を行わないため、実況見分調書も作成されません。代わりに、物件事故報告書という簡易な報告書が作成されます。
物件事故報告書を取得するには、事故の捜査を担当した警察署に連絡することになりますが、開示が認められないケースが少なくありません。そのため、文書送付嘱託の手続きを進めるか、弁護士会照会の手続きを弁護士に依頼するようにしましょう。
4.刑事記録の取得は弁護士にご依頼ください
加害者側の保険会社が示談交渉で提示する損害賠償金は、本来認められるべき金額よりも低い場合がほとんどです。被害の実態を具体的に証明して増額を主張するには、刑事記録を適切に活用することが必要となります。
しかし、刑事記録の取得手続きはとても難解で、取得できたとしても、被害者の方が自身で保険会社と交渉し、増額を認めさせるのは非常に困難です。
交通事故や刑事事件に詳しい弁護士に依頼すれば、刑事記録をスムーズに取得できますし、保険会社に対して法的な根拠にもとづいた適正な金額の賠償金を強い姿勢で主張してくれるため、賠償金の増額が期待できます。
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