仮渡金 [かりわたしきん]
- 意味
加害者側の自賠責保険会社に請求することで、交通事故による損害賠償金の一部が示談の成立前に支払われます。これを仮渡金と呼びます。
- 解説
交通事故の被害に遭ったら、慰謝料などの損害賠償金を加害者側に請求できます。
しかし、賠償金を受け取れるのは、ケガの治療が終了するなど損害の金額が確定し、示談交渉が成立した後です。治療が長引いたようなケースでは、賠償金の受け取りまでに数か月かかる可能性もあります。
この点、加害者側の自賠責保険会社に仮渡金を請求することで、示談が成立する前に賠償金の一部が支払われます。事故後に仕事を休んで給料が支払われていないなどの理由で、少しでも早く賠償金を受け取りたい場合、仮渡金の請求を検討してもよいでしょう。
仮渡金と内払いとの違い
仮渡金と同様の仕組みとして内払いがあります。仮渡金と大きく異なる点は、内払いは加害者側の任意保険会社に請求する点です。
また、仮渡金と内払いにはそれぞれメリットとデメリットがあります。たとえば、仮渡金は条件を満たしていれば原則として支払われます(自賠法第17条)。
しかし、内払いはあくまでも保険会社のサービスなので、請求しても必ず支払われるわけではありません。一方、内払い金には上限があるものの、請求時の損害額に応じて金額が決められますが、仮渡金は被害の程度に応じてあらかじめ金額が定められています。
もし、最終的な賠償金の金額よりも高額な仮渡金を受け取っていた場合、差額を返金しなければなりません。なお、以前は自賠責保険会社に内払いを請求することができましたが、2008年10月に自賠責保険会社による内払いが廃止されました。
仮渡金を請求できるケースと金額い
仮渡金は交通事故の被害者が亡くなるか、ケガを負った場合に請求できます。支払われる金額はあらかじめ定められていますが、ケガを負った場合は症状の程度に応じて金額が異なります。
具体的な金額は次の表の通りです。
被害者の状態 仮渡金の
金額死亡 290万円 次のいずれかのケガを負った場合 - 脊椎の骨折で脊髄を損傷した
- 上腕または前腕の骨折で合併症を有している
- 大腿または下腿の骨折
- 内臓の破裂による腹膜炎の併発
- 14日以上の病院での入院が必要な傷害で、30日以上の医師の治療が必要
40万円 上記以外で次のいずれかのケガを負った場合 - 脊柱の骨折
- 上腕または前腕の骨折
- 内臓の破裂
- 病院への入院を要する傷害で、30日以上の医師の治療が必要
- 14日以上の病院での入院が必要な傷害
20万円 上記以外で11日以上の医師の治療が必要な傷害 5万円 仮渡金を請求する方法
仮渡金を受け取るためには、まず加害者側の自賠責保険会社に連絡し、申請書を取り寄せます。申請書を受け取ったら、次のような書類と一緒に返送しましょう。申請後は1週間ほどで仮渡金が支払われます
- 交通事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 印鑑登録証明書
- 医師が作成した診断書
また、上記以外の書類が必要となる場合があるため、自賠責保険会社に連絡する際に確認するようにしてください。なお、被害者が亡くなっており、遺族が請求する場合は、死亡診断書や戸籍謄本などが別途必要です。
仮渡金に関するお悩みや疑問は弁護士に相談を
仮渡金や内払いのどちらを請求するかについては、それぞれのメリットとデメリットを踏まえて判断する必要があります。なお、内払いと仮渡金をそれぞれ請求することもできるので、場合によっては両方の請求を検討してもよいでしょう。
どちらを請求するべきか、または両方を請求した方がよいか判断に迷う場合、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば相談者の状況を踏まえて最適な解決策をアドバイスしてくれますし、申請手続きのサポートもしてくれます。また、仮渡金や内払いの請求以外にも有効な手段があれば提案してくれるでしょう。
弁護士法人プロテクトスタンスは、交通事故や保険会社の実務などに精通した弁護士とスタッフがご依頼者さまを解決までバックアップいたします。ぜひご相談ください。
- 関連する用語
- 内払い[うちばらい] 被害者請求[ひがいしゃせいきゅう]
用語を探す
キーワードで探す
交通事故に関するキーワードを入力して、該当する用語があるか調べられます。