委任契約書 [いにんけいやくしょ]
- 意味
- 弁護士が交通事故の対応などを受任する際に、依頼者との間で交わされる正式な契約書のことです。委任する業務の範囲や報酬、契約期間など、契約内容が明確に記載されます。
- 解説
委任契約書に記載されている情報
弁護士が法律行為や法律事務を受任する際、依頼者との間で「委任契約」を結びます(民法第643条、656条)。
そして、委任契約を取り交わした際に作成するのが委任契約書となります。この点、弁護士は委任契約を締結する際には、原則として、弁護士報酬などに関する事項を記載した委任契約書を作成しなければなりません(弁護士職務基本規程第30条1項」。
委任契約書には、一般的に次のような内容が記載されます。
委任者と受任者の表示
委任者(依頼者)と受任者(弁護士)の氏名が記載され、契約当事者が誰であるのかを明確にします。
委任する業務の範囲
たとえば交通事故では、加害者側との示談交渉のみを依頼するのか、訴訟対応まで含めて任せるかなど、弁護士の業務範囲が具体的に明記されます。
報酬などに関する取り決め
弁護士費用についても明記されます。弁護士費用は一般的に、着手金、成功報酬、手数料などの弁護士報酬、また、実費などの諸費用に分類されます。たとえば「着手金は10万円、成功報酬は相手方から獲得した金額の10%」といった形式などで記載されます。
弁護士事務所によって報酬体系は異なりますので、契約書を通じて事前にしっかり確認しておくことが重要です。
契約期間
委任される業務の開始時期や終了する条件(示談が成立した時や、裁判が終了した時など)など、契約期間についても明記されます。さらに、途中で契約を解除する際の条件や、解除によって発生する費用負担についても取り決められることがあります。
委任状の作成について
委任契約書とは別に、必要に応じて「委任状」を作成することもあります。
委任状とは、依頼者が自分に代わって、特定の法律行為などを行う代理権を弁護士に与えることを示した書面です。特に、弁護士に代理権を与えたことを第三者に証明するために使用します。
たとえば、交通事故においては、弁護士が依頼者の正式な代理人として相手方に受任通知を送ったり、示談交渉したり、依頼者の代理人として訴訟を提起する場面などで必要となる場合があります。特に訴訟手続きにおいて必要となる委任状を訴訟委任状と呼びます。
委任契約書の重要性
委任契約書の最大の役割は、依頼者と弁護士双方の認識のずれによるトラブルを未然に防ぐことにあります。依頼する業務の範囲や報酬などの弁護士費用について、口頭だけでのやり取りでは、後にトラブルに発展する恐れがあるからです。
契約書を交わすことで、依頼する業務の範囲や報酬体系、契約期間、解除条件など、依頼内容が明確に文書として残るため、安心して弁護士に対応を任せることができます。
また、弁護士にとっても、業務範囲が明確になるため、トラブル防止につながります。たとえば、示談交渉までの依頼だったにもかかわらず、依頼者が「裁判もやってくれると思っていた」と誤解していた場合でも、契約書によって業務範囲を確認することができます。
委任契約書に署名・押印する前には、「業務内容に不明点はないか」「費用の説明を受けたか、また、納得できるか」などを必ず確認することが重要です。不安な点があれば、遠慮なく弁護士に質問し、理解・納得した上で契約を結ぶようにしましょう。
また、委任契約書は原則として、弁護士と依頼者の双方が同じ内容のものを各1通ずつ保管しますので、きちんと委任契約書の交付を受けるようにしましょう。
なお、最近では、インターネットを利用した電子契約システムも発達しています。紙の契約書を使わず、クラウド上で契約が締結できる利便性から、特に企業と法律事務所間で盛んに利用が進んでいます。
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