赤い本 [あかいほん]
- 意味
東京地方裁判所における交通事故の裁判実務にもとづいた損害賠償額の算定基準の解説や、その参考になる裁判例などが掲載された書籍のことです。
- 解説
赤い本は通称であり、正式な名称は、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」です。表紙が赤いことから「赤い本」と呼ばれています。
東京など首都圏の交通事故について、弁護士が損害賠償金を算出する際は、必ずと言ってよいほど赤い本を使用しています。
また、それ以外の地域の交通事故でも、赤い本を参照することは多いです。赤い本は、日弁連交通事故相談センター東京支部が毎年発行していますが、書店では販売されていません。
一般の方も購入可能ですが、日弁連交通事故相談センターに申込書を送るか、都内の弁護士会館にあるセンターの窓口で直接購入しなければなりません。赤い本に類似する書籍として、「青本」、「黄色い本」、「緑のしおり(緑本)」と呼ばれるものがあります。
赤い本が東京地裁の裁判実務にもとづく書籍であるのに対して、青本は全国の裁判所、黄色い本は名古屋地裁、緑のしおりは大阪地裁の各裁判例にもとづいて作成された書籍です。それぞれ損害賠償金の算定方法などに細かな違いがあり、たとえば、黄色い本や緑のしおりは、名古屋地裁や大阪地裁の管轄内の交通事故で参考にされています。
損害賠償金の算出方法などを解説
赤い本には、加害者に対して請求できる損害賠償金について、東京地裁の実務にもとづく金額や算出方法、参考となる裁判例などが幅広く解説されています。
掲載されている損害賠償の項目には、たとえば、以下のような内容が解説されています。
- 積極損害(治療費、付添看護費、交通費、葬祭費など)
- 消極損害(休業損害、後遺障害や死亡による逸失利益など)
- 慰謝料(傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料など)
- 物損(修理費用、買い替え差額、評価損など)
また、過失割合や素因減額、損益相殺といった、賠償金の減額事由として考慮される要素についても解説されています。
なお、赤い本は新しい裁判例などが反映されるため、内容が毎年改訂され、賠償金額は事故が発生した年に発行された赤い本を用いて算出しています。
赤い本を基準にすれば賠償金の増額が見込める
交通事故の被害に遭うと、加害者側の保険会社から損害賠償金が提示されますが、この提示額が法的に最大限請求可能な金額であるわけではありません。
なぜなら、賠償金の計算方法には3種類の基準があり、金額が低い順に「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」となっています。
そして、保険会社は任意保険基準で算出した賠償金を提示することが一般的です。自賠責基準 ≦ 任意保険基準 < 弁護士基準(裁判所基準)
最も高額な弁護士基準(裁判所基準)は、過去の裁判で認められた金額などを踏まえた基準であり、赤い本にはこの基準が掲載されています。
そのため、赤い本をベースに賠償金を算出して請求すれば、保険会社が提示した金額からの増額が見込め可能性が高いのです。
しかし、賠償金の算出は、過失割合や休業損害、後遺障害や逸失利益など複雑な要素が数多く関わるため、適切な金額を算出するには法的な専門知識と経験が必須です。
また、保険会社は交通事故に関する知識が豊富で、交渉のプロフェッショナルですので、一般の方が増額を請求しても拒否される可能性が高いでしょう。
この点、交通事故に詳しい弁護士であれば、適切な金額を算出したうえで、あくまでも法的に最大限請求が可能な金額を目指して保険会社と厳しく交渉するので、賠償金の増額が期待できます。
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