腰椎椎間板ヘルニア [ようついついかんばんへるにあ]
- 意味
- 交通事故の衝撃などにより、腰椎(腰骨)の間にある椎間板という軟部組織が本来の位置から飛び出てしまう状態です。飛び出た椎間板が神経を圧迫することで腰や足の痛み、しびれなどが生じ、症状の程度によっては後遺障害の等級認定を受けられる可能性があります。
- 解説
腰椎(腰骨)の骨と骨との間には、腰に加わる衝撃を緩和するため、クッションの役割を果たす「椎間板」という軟部組織があります。
椎間板は中心部に髄核(ずいかく)と呼ばれるゼリー状の柔らかい組織と、その周囲の線維輪(せんいりん)と呼ばれる外層とで構成されています。
追突事故などの被害により腰に強い衝撃を受けると、椎間板が本来あるべき位置から飛び出してしまうことがあります。この状態を「腰椎椎間板ヘルニア」と呼びます。
飛び出た椎間板が神経根などを圧迫し、腰や臀部、下肢に痛みやしびれといったさまざまな症状を引き起こします。また、下肢に力が入りにくくなったり、重いものを持ったりすると痛みが強くなることがあります。
なお、首に強い衝撃を受けると、頸椎(首の骨)の間にある椎間板が飛び出てしまう「頸椎椎間板ヘルニア」になる場合があります。
腰椎椎間板ヘルニアの主な症状
腰椎椎間板ヘルニアの主な症状は、腰痛や足の痛み、しびれ、筋力低下などです。下肢に力を入れにくい、上手く動かせないといった症状もみられます。
また、重症になると激しい痛みや感覚の麻痺などを引き起こし、歩行や排泄に障害が生じる可能性もあります。このような症状を「馬尾症候群(ばびしょうこうぐん)」と呼びます。
腰椎椎間板ヘルニアの診断・検査方法
腰椎椎間板ヘルニアが疑われる場合、問診や視診により症状がある部位や程度を確認します。また、身体をひねったり、足を持ち上げたり曲げたりするなどして状態を調べる神経学的検査も行います。
具体的には、仰向けの状態で足を伸ばしたまま持ち上げて痛みの有無などを調べる「下肢伸展挙上テスト(SLR)」や、うつ伏せで足を曲げて痛みやしびれの有無を調べる「大腿神経伸長テスト(FNS)」を実施します。
また、画像診断では、軟部組織である椎間板はレントゲンには写らないため、MRI検査を行うことで、飛び出た椎間板が神経根を圧迫していないか確認します。
腰椎椎間板ヘルニアの治療方法
腰椎椎間板ヘルニアは、主に次の3種類の方法で治療を進めます。
- 保存療法
- 手術
- リハビリ
痛みやしびれなどの症状が強い時期(急性期)は、負傷した部位を安静にすることが重要なので、コルセットの装着など保存療法が行われます。消炎鎮痛剤の投与や、負傷部位の神経の近くに麻酔薬を注射する「神経ブロック」により、症状を抑えることもあります。
一般的に、急性期を過ぎれば、薬物治療や骨盤牽引、運動などの理学療法などにより症状が軽快しますが、これらの保存療法でも症状が改善しない場合、または、強い痛みや麻痺、歩行や排尿の障害などがあるようなケースでは手術が必要になります。身体への負担が少なく、手術痕も小さくて済むよう、内視鏡による低侵襲な手術も行われています。
最近では、腰椎椎間板ヘルニアに対する新しい治療法として、椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア注入)が行われることもあります。これは、椎間板を縮小させる薬剤を椎間板内に注射することで神経の圧迫を減らす方法であり、痛みやしびれなどの緩和が期待できます。もちろん、副作用などのリスクもありますので、主治医によく相談してください。
手術などにより症状が緩和されれば、ストレッチや温熱療法といったリハビリに進みます。
腰椎椎間板ヘルニアと後遺障害
治療を続けたものの、痛みやしびれといった症状が残った場合、後遺障害の等級認定を受けられる場合があります。等級が認められると、後遺障害が残ったことに対する慰謝料(後遺障害慰謝料)などを加害者側に請求できます。
後遺障害は症状の内容や程度に応じ、1級から14級に区分されています。腰椎椎間板ヘルニアの後遺障害は、次のいずれかに該当します。
- 14級9号(局部に神経症状を残すもの)
- 12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)
等級の違いとしては、画像診断などによる他覚的所見があれば12級13号が認められます。他覚的所見はないものの、治療経過などから痛みの存在を医学的に説明できれば14級9号です。
そして、認定された等級によって、後遺障害の慰謝料の金額が大きく異なります。
具体的には、14級9号に認定された場合の後遺障害慰謝料は、自賠責基準で32万円、弁護士基準では110万円です。一方、12級13号だと、自賠責基準で94万円、弁護士基準は290万円まで大幅に増額されます。
そのため、適切な診断や治療を受けたうえで、症状に見合った後遺障害の等級に認定されることが重要です。
交通事故のケガは弁護士にご相談を
交通事故の被害に遭い、ケガを負った場合は加害者側に慰謝料などの損害賠償金を請求することができます。ただし、病院などの医療機関で正しい診断を受け、適切な期間や頻度で治療を受けなければ、賠償金の金額で損をしてしまう可能性があります。
この点、事故直後に弁護士へ相談すれば、より高額な賠償金の獲得を見据えた治療の受け方などについてアドバイスを受けられます。もちろん、後遺障害の等級認定に関する手続きや、加害者側との示談交渉など、事故後の煩雑で専門的な手続きを任せることも可能です。
特に腰椎の椎間板は、加齢や体重、生活習慣などによる変性を受けやすいものです。そのため、椎間板ヘルニアを発症しても、交通事故の外傷に起因しない疾患として、保険会社から素因減額を主張されて、賠償金を減らされてしまうことがあります。
交通事故との因果関係をしっかりと立証し、適切な賠償金を受け取るためにも、弁護士に相談してください。
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