約款 [やっかん]
- 意味
- 保険会社と保険契約者との間で締結する、保険契約の内容を詳細に記載した文書のことです。保険約款とも呼ばれ、契約書と同じ効力を持ちます。
- 解説
- 目次[]
0.約款の必要性
本来、何らかの契約を結ぶ場合、契約相手と取り決めた内容は、契約書として取りまとめることが一般的です。
しかし、保険契約のように、事業者が多数の相手と契約を結ぶ場合、一つひとつの契約に対応した個別の契約書を作成すると、契約手続きが極めて煩雑になります。
そのため、事業者が消費者など多数の人と契約を結ぶ際には、定型的な契約内容をあらかじめ作成しておくと、効率的に処理することができます。
たとえば、電気やガスの供給契約、バスや電車の旅客運送契約、そして、保険会社との保険契約です。このような、特定の事業者が不特定多数の者に対して行う取引において、その内容の全部または一部が画一的であり、契約当事者双方にとってそれらが合理的なものを定型取引と呼び、そこで使用される約款を定型約款と呼びます(民法第548条の2)。
保険約款は保険会社が作成しますが、約款の内容が保険契約者にとって不利なものでないか、金融庁による審査・認可を受けます。
また、保険契約者にとって一方的に不利な約款の内容は、保険法に定める片面的強行規定により、無効となります。1.普通保険約款と特別保険約款
約款の内容は、標準的な契約内容について記載した「普通保険約款」と、弁護士費用特約やファミリーバイク特約など補充的な内容を説明する「特別保険約款(特別約款)」とに大別されます。
そして、普通保険約款と特別約款の内容が異なる場合は、特別約款の内容が優先的に適用されます。
2.自動車保険の約款には何が書かれているか
自動車保険の約款では、保険会社が保険金を支払う条件や支払額の計算方法、契約者に課せられる告知・通知の義務などに関する情報が記載されています。
たとえば、普通保険約款では、次のような項目が大切なポイントになります。2-1.保険金の支払い事由
保険金が支払われる事故と支払われない事故について説明されています
2-2.補償範囲
主に自動車を運転する人(記名被保険者)や配偶者、親族など、その保険の補償対象となる人が説明されています。また、対象となる時期や地域も定められています。
2-3.保険会社の責任の限度
保険会社が保険金の支払い責任をどの限度まで負うのか、また、保険金の支払い責任以外の援助・サポートの範囲などについて記載されています。
2-4.保険金の計算方法・支払い時期
保険会社が支払う保険金の計算方法や上限、請求から支払いまでにかかる日数などが説明されています。
2-5.告知・通知義務
自動車保険の契約では、自動車の用途車種や型式、登録番号、記名保険者の生年月日や運転免許証の色、事故歴などについて保険会社に告知・通知するよう義務付けられています。
そのため、告知・通知が義務付けられる項目や、義務に反した場合のペナルティなどが説明されています。2-6.保険契約の無効・解除
保険会社が契約を無効にしたり解除したりするケースについて説明しています。
- 保険約款のチェックポイント
- 保険金の支払い事由
- 補償範囲
- 保険会社の責任の限度
- 保険金の計算方法・支払い時期
- 告知・通知義務
- 保険契約の無効・解除事由
3.「読んでいない」は通用しないので注意
保険約款には上記以外にも重要事項が説明されていますが、非常に文量が多い書類なので、最後まで読まない人も少なくないでしょう。
しかし、次の条件を満たしている場合、定型約款を読んでいなかったとしても、契約書と同様の法的な拘束力が発生します(同条第1項)。・定型約款を契約の内容とする旨の合意をした
または
・定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示したたとえば、告知・通知義務に違反し、契約が無効になったり解除されたりした場合、「約款を読んでおらず、内容をきちんと把握していない」と反論しても、認められない可能性があるのです。
4.約款にもとづく賠償金が提示されても弁護士に相談を
交通事故の被害に遭った後、加害者側の保険会社が提示した損害賠償金について金額が少ないと不満に感じる方もいるでしょう。
ただし、保険会社に増額を交渉しても、「約款通りに計算した金額を提示している」などと反論され、まったく取り合ってもらえない可能性があります。この点、損害賠償金を算出する基準は、金額の低い順に「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」の3種類があります。
保険会社は「任意保険基準」で算出した金額を提示しますので、弁護士が示談交渉すれば、「弁護士基準」にもとづいた金額までの増額が期待できます。保険会社は交通事故に関する知識や豊富な交渉経験があるため、一般の方が対等に交渉するのは非常に困難です。
交通事故に詳しい弁護士に相談し、適切な賠償金額の算出や増額交渉を依頼することをおすすめします。
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