他覚症状 [たかくしょうじょう]
- 意味
- 病気やケガなどの症状が、患者以外の他人、特に医師により客観的に捉えることのできる状態のことです。他覚的所見ともいいます。
- 解説
0.他覚症状と自覚症状の違い
交通事故の被害者がむち打ち(頸椎捻挫、外傷性頸部症候群など)のケガを負った場合を考えてみましょう。
首の痛みや頭痛、しびれのように、被害者自身が感じている症状を自覚症状と呼びます。
擦り傷のような症状であれば目に見えることはできますが、むち打ちによる諸症状は神経症状であるため、自覚症状それ自体が目に見えるものではありません。
そのため、医師による視診や触診、CTやMRIなどの画像検査、スパーリングテストなどの神経学的検査、筋電図検査などの電気生理学的検査など、さまざまな検査により視覚化し、客観的に把握できるようにする必要があります。
これを他覚症状と呼びます。「他覚」という言葉を使用していますが、”他の人が感じる症状”という意味ではありません。そのため、医療機関では、他覚的所見(略して他覚所見)という言い方を用いることが多いです。
1.交通事故における他覚症状
交通事故によるケガを負った場合、「他覚症状があるかどうか」ということは被害者にとって非常に大きな意味を持ちます。
ケガなどの症状が単なる自覚症状ではなく、他覚症状として裏付けられていることが、治療期間や慰謝料、後遺障害の等級認定などさまざまな場面で重要となります。
2.他覚症状と治療費打ち切り
もしも他覚症状がない場合、治療継続の必要性が認められず、保険会社から早めに治療費打ち切りの打診をされる可能性があります。
この場合、医師の診断書や意見書などの他覚的所見があれば、治療の必要性を客観的に示すことができますので、治療費などの一括対応の継続が認められやすくなります。
3.他覚症状と入通院慰謝料
一般的に、入通院慰謝料は、いわゆる「赤い本」の算定基準を用いて算出します。
この点、骨折など他のケガによる入院や通院の場合は、赤い本の「別表Ⅰ」を参照します。しかし、他覚症状のないむち打ちの場合は、「別表Ⅱ」を参照します。
「別表Ⅱ」の入通院慰謝料は、「別表Ⅰ」の3分の2程度の金額となっていますので、他覚症状があるかないかで、入通院慰謝料の金額が変わってくるのです。4.他覚症状と後遺障害
後遺障害の等級認定申請においても、症状固定後も残存している後遺症が、他覚症状として裏付けられていることが重要となります。
たとえば、むち打ちによる痛みやめまい、しびれなどの神経症状については、後遺障害等級の14級9号と12級13号が認定の対象となります。
このうち、12級13号の認定基準となる傷害の程度は、「局部に頑固な神経症状を残すもの」とされていますが、具体的には、CTやMRIなどの画像検査による他覚的所見がある場合がこれに該当します。
12級13号と14級9号では、慰謝料の金額に約3倍の開きがありますので、他覚症状があるか否かは大きな違いです。
5.ケガの治療中から弁護士に相談
このように、他覚症状の有無は、ケガの治療中、入通院慰謝料、後遺障害の等級認定とさまざまな場面に影響します。
そのため、交通事故後はなるべく早い段階で、弁護士に相談することが重要です。弁護士は最終的な示談を見据えて、被害者が損をしないように、有利な解決ができるように、ケガの治療中から的確なアドバイスをすることができます。
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