「略式裁判」とは?交通事故と刑事裁判に関する法律用語

やさしい交通事故の用語集

略式裁判 [りゃくしきさいばん]

意味
100万円以下の罰金または科料に相当する事件について、被疑者に異議のない場合、正式な裁判によらずに、検察官が提出した書面だけで審理する簡易な裁判手続きのことです。スピード違反や酒気帯び運転といった交通違反に対して多く行われています。
解説

0.交通違反では略式裁判が多い

刑事裁判というと、検察官や弁護人、裁判官がいる公開法廷をイメージされるかもしれませんが、すべてが必ずしもそうではありません。

事案の内容によっては、通常の裁判よりも手続きがシンプルな「略式裁判」が行われる場合があります。

特に交通違反に対しては、悪質な事案を除いて、略式裁判が行われるケースが多いです。

1.略式裁判の対象となる事件

簡易裁判所が管轄し、100万円以下の罰金または科料に相当する事件が対象です。
そのため、懲役刑の対象となるような事件では、略式裁判は行われません。

また、略式裁判の実施に関する検察官の請求や、被疑者の同意がある場合に開かれます。
検察官が略式裁判の説明をする際、被疑者が同意しなければ正式裁判が行われます。

2.交通違反は「赤切符」が略式裁判の対象

交通違反をした場合、違反した内容の程度により、警察からいわゆる赤切符や青切符が交付されます。

比較的軽微な違反の場合、点数の加算と反則金の納付の対象となる青切符が交付されますが、免許停止や免許取消の対象となるような重大な違反では赤切符が交付されます。

青切符の場合、所定の期間内に反則金を納めれば刑事手続きに移行することはありません(交通反則通告制度)。
しかし、赤切符は原則的に刑事手続きに移行されてしまいます。

そして、主に次のような交通違反が略式裁判の対象になります。

  • 30km/h以上の速度超過(一般道路)
  • 40km/h以上の速度超過(高速道路)
  • 酒気帯び運転
  • 過失運転致死傷

上記に当てはまる場合でも、大幅な速度超過や、違反行為を繰り返しているなどの悪質な場合は、略式裁判ではなく通常の裁判(正式裁判)が行われる可能性があります。

3.略式裁判の流れ

違反者が逮捕・勾留されたかどうかで流れが変わります。

略式起訴の流れを示す図。以下詳細。
逮捕・勾留されていない場合
  • 30km/h以上の速度超過(一般道路)
  • 40km/h以上の速度超過(高速道路)
  • 酒気帯び運転
  • 過失運転致死傷
逮捕・勾留されている場合
勾留期間中に略式裁判に関する説明や略式起訴が行われ、略式命令が出されると身柄が釈放されます。
罰金・過料の納付は、釈放時に迎えに来た家族などが支払ったり、迎えがいない場合は後日に自ら銀行で納付したりする方法があります。

4.略式命令に不満がある場合

略式命令について、内容が厳しすぎるといった異議がある場合、略式命令を受けてから14日以内であれば、異議を申し立てることができ、正式裁判が行われます。

ただし、正式裁判でも略式命令と同じ判決になる場合がありますし、ケースによってはさらに重い判決が下される可能性もゼロではありません。

また、正式裁判は出廷する必要があり、判決まで数か月から1年近くかかるケースもあるといったデメリットもあるので、異議を申し立てるかは慎重に判断しましょう。

5.罰金を支払えない場合

罰金を支払わずに放置していると、財産を強制執行される可能性があります。
罰金を支払うだけの財産がない場合は、刑務所内にある労役場という施設に収容(留置)され、軽作業が義務付けられます。

留置1日に対して5,000円で計算されることが多く、たとえば、30万円の罰金が支払えない場合、留置期間は60日間となります。

6.略式裁判のメリット・デメリット

略式裁判には次のようなメリットがあります。

  • 裁判に出廷する負担などが軽減される
  • 手続きが非公開なので外部に漏れるリスクが少ない
  • 正式裁判に比べて短期間で手続きが終了する

しかし、裁判の場で検察官の主張に反論したり、裁判官に事情を説明したりする機会がないというデメリットに注意が必要です。
交通違反の内容などに争いがあるような場合、略式裁判への同意を求められても応じるかどうかは慎重に判断しましょう。

7.略式裁判に関する疑問・不満は弁護士に相談を

略式裁判でも、略式命令を受ければ有罪となり、「前科」がつくことになります。
しかし、略式裁判に同意してしまうと、検察官が提出した書類のみで審理されるため、弁護士が関与できる余地がほとんどありません。

もし略式裁判に同意するかどうかに悩んだ場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
また、略式命令がすでに出ている場合も、命令の内容の妥当性を判断し、異議を申し立てるべきかどうかを検討するため、弁護士に相談してもよいでしょう。

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