「PTSD」とは?交通事故とケガの治療に関する用語

やさしい交通事故の用語集

PTSD [ぴーてぃーえすでぃー]

意味
生死にかかわるほどの強いショックを受ける出来事がトラウマとなり、時間が経っても恐怖がよみがえるなど、日常生活に支障をきたす精神障害の一種です。交通事故によりPTSDを発症すると、慰謝料の請求や後遺障害の等級が認められる可能性がありますが、事故との因果関係が争いになるケースが少なくありません。
解説

0.強烈なトラウマによって発症するPTSD

PTSDは「Post Traumatic Stress Disorder」の略で、日本語では「心的外傷後ストレス障害」と訳されます。

生死にかかわるような出来事や強烈なストレスを受ける体験などがトラウマとなり、PTSDを発症することがあります。PTSDを発症すると、その出来事や体験から時間が経っていても、当時の記憶がよみがえって強い恐怖を感じるなど、日常生活に支障をきたしてしまいます。

PTSDを発症するきっかけとなる代表的な例として、自然災害や犯罪被害などがありますが、交通事故の被害がPTSDの原因になる場合もあります。

1.PTSDの主な症状

PTSDには、主に次のような症状があります。

  • ふとしたきっかけでトラウマがよみがえり恐怖を感じる(フラッシュバック)
  • トラウマとなった出来事に関する悪夢を繰り返し見る
  • イライラする、ちょっとしたことに驚く、ぐっすり眠れないなど神経が過敏になる
  • トラウマを思い出させるような場所や人物、状況などを執拗に避けようとする
  • トラウマとなった出来事の重要な部分を思い出せなくなる(解離性健忘)、感情が麻痺する

交通事故によってPTSDを発症した場合、事故の記憶が突然よみがえり恐怖を感じる、事故の悪夢を繰り返し見るなどの症状が現れます。また、事故のニュースを見たり、救急車のサイレンを聞いたりすると不安を感じるといった症状も現れるようです。

2.PTSDの診断

PTSDは、頭部への激しい衝撃などによる脳の物理的な損傷を伴わない精神障害の一種であり、「非器質性精神障害」とも呼ばれます。診断方法としては、アメリカの精神医学会が定めた「DSM-Ⅳ」やWHO(世界保健機関)の「ICD-10」という診断基準が用いられます。

一般的には、命にかかわるほどの強い恐怖を感じるなど、トラウマとなる出来事を体験した人に対し、主に次のような症状の有無などから診断します。

  • トラウマとなる出来事の再体験(フラッシュバック)の反復
  • トラウマとなる出来事に関連する場所や場面、人物などの回避
  • 入眠困難や集中困難、過剰な驚きといった覚醒亢進症状の持続

上記の症状が1か月以上続き、強い苦痛を感じていたり、仕事や日常生活に支障が大きな支障が生じていたりすると、PTSDと診断される可能性があります。

3.PTSDの治療法

PTSDに対しては、主に心理療法や薬物療法による治療が行われます。

3-1.心理療法

心理療法の一種として、あえてトラウマとなった状況をイメージしたり、関連する状況や場所に身を置いたりして、恐怖心に慣れさせる治療方法があります。この治療方法は、「持続エクスポージャー療法」や「暴露療法」などと呼ばれています。

また、トラウマとなった出来事を思い出しながら、医師が動かす指を目で左右に追いかける治療が行われることもあります。「EMDR」(眼球運動による脱感作と再処理法)と呼ばれ、PTSDの治療に効果があると考えられています。

3-2.薬物療法

抑うつ症状や不安感などを軽減するため、抗うつ薬や抗不安薬などが投与されます。特に、抗うつ薬としても使われる「SSRI」という薬が、PTSDの治療に有効とされています。

4.PTSDに対して請求できる慰謝料

交通事故の被害を受けたことでPTSDを発症した場合、加害者側に慰謝料を請求することができます。慰謝料には、主に次の2種類があります。

  • 入通院慰謝料(傷害慰謝料)
  • 後遺障害慰謝料

4-1.入通院慰謝料(傷害慰謝料)

事故によって負ったケガの治療のため入院や通院したことに対して生じる精神的苦痛を補償する慰謝料です。入通院にかかった期間にもとづいて金額を計算するため、入通院の期間が長くなると慰謝料も高額になります。

ただし、PTSDは脳の物理的な損傷を伴わない障害なので、加害者側が事故とPTSD発症の因果関係を疑うケースが少なくありません。そのため、慰謝料を請求しても支払いを拒否したり、支払いに応じても低額な支払いを提案してきたりする可能性があります。

4-2.後遺障害慰謝料

治療を受けても症状が改善しないと医師が判断し、後遺障害の等級認定を受けた場合に認められる慰謝料です。後遺障害の等級は1級から14級まであり、認定された等級によって慰謝料の金額が異なります。

後遺障害慰謝料を請求するには、等級認定を受けることが前提となりますが、やはり、事故とPTSDの発症の関連性が疑問視されるケースが少なくありません。関連性を証明できなければ、後遺障害の等級認定を申請しても、「非該当」として認定を受けられない可能性があります。

5.PTSDに対する後遺障害の等級と慰謝料の金額

後遺障害は、障害の内容や症状の程度に応じ、認定される等級が異なります。PTSDで後遺障害が認められる場合、9級10号か12級13号、14級9号のいずれかに認定される可能性があります。

認定を受けるには、次の「(ア)精神症状」のうち、ひとつ以上が認められ、かつ、「(イ)能力に関する判断項目」のうち、ひとつ以上の能力について、能力の欠如や低下といった障害が認められることが必要です。

(ア)精神状態

  1. 抑うつ状態
  2. 不安の状態
  3. 意欲低下の状態
  4. 慢性化した幻覚・妄想性の状態
  5. 記憶または知的能力の障害
  6. その他の障害(衝動性の障害、だるい・眠いといった不定愁訴など)

(イ)能力に関する判断項目

  1. 食事や入浴、更衣などの身辺日常生活
  2. 仕事・生活に積極性・関心を持つ
  3. 通勤・勤務時間の厳守
  4. 普通に作業を持続する
  5. 他人との意思伝達
  6. 対人関係・協調性
  7. 身辺の安全保持、危機の回避
  8. 困難・失敗への対応

そして、(ア)の精神症状や(イ)に関する能力の欠如・低下がどの程度認められるかによって、認定される等級が異なります。

5-1.後遺障害9級10号が認められる症状の程度

9級10号が認められる症状は「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの」です。

具体的には、障害の程度が次のいずれかの状態に当てはまると認められる可能性があります。さらに、就労の有無や就労意欲の程度によって、条件がより細かく分類されます。

就労の有無・就労意欲の程度障害の程度
就労している、または就労の意欲はあるものの就労はしていない(イ)の2~8のいずれかひとつの能力が失われている、または、(イ)の4つ以上についてしばしば助言・援助が必要と判断される障害を残している
就労意欲の低下または欠落により就労していない(イ)の「1.食事や入浴、更衣などの身辺日常生活」について、ときに助言・援助を必要とする程度の障害が残存している

5-2.後遺障害12級13号が認められる症状の程度

12級13号が認められる症状は「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの」です。

具体的には、次のいずれかの状態に当てはまると認められる可能性があります。

就労の有無・就労意欲の程度障害の程度
就労している、または就労の意欲はあるものの就労はしていない(イ)の4つ以上について、ときに助言・援助が必要と判断される障害を残している
就労意欲の低下または欠落により就労していない(イ)の「1.食事や入浴、更衣などの身辺日常生活」について、適切に、またはおおむねできる

5-3.後遺障害14級9号が認められる症状の程度

14級9号が認められる症状は「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの」です。

具体的には、(イ)のひとつ以上について、ときに助言・援助が必要と判断される障害を残している状態の場合に、認められる可能性があります。

5-4.各等級で認められる後遺障害慰謝料の金額

後遺障害の等級認定を受けられた際、加害者側に請求できる後遺障害慰謝料の金額は等級によって異なります。また、慰謝料の計算に使う基準によっても金額に大きな開きが生じます。

具体的な金額は次の通りです。

等級自賠責基準弁護士基準
9級249万円690万円
12級94万円290万円
14級32万円110万円
  • ※2020年4月1日以降に発生した交通事故に適用される金額です。

自賠責基準は、被害者に対する最低限度の補償を目的とした自賠責保険における算出基準です。等級によっては弁護士基準に比べて3分の1以下の金額に留まります。

加害者が加入している任意保険会社に対して慰謝料を請求する場合、自賠責基準による金額と同程度の金額が提示されるケースが少なくありません。
弁護士にご依頼いただければ、弁護士基準により計算した慰謝料の金額を請求しますので、後遺障害慰謝料の増額が期待できます。

6.交通事故によるPTSDは弁護士にご相談を

交通事故が原因でPTSDを発症したため、加害者側に慰謝料を請求しようとしても、事故とPTSDの因果関係が争われるケースが少なくありません。因果関係が認められても、事故前から被害者にあった要因がPTSDの発症に影響したとして、加害者側が大幅な減額を主張することも考えられます(素因減額)。

また、後遺障害の等級認定についても、本当に事故が原因でPTSDを発症したのか厳しく審査されることが多く、認定を受けるのは決して簡単ではありません。そのため、主治医と相談しながら診断、治療を進めるのはもちろん、PTSDの慰謝料請求や後遺障害の申請にあたっては、弁護士への相談をおすすめします。

弁護士は、事故とPTSDの因果関係を証明し、適切な金額の慰謝料を獲得できるよう、治療や診断の受け方などをアドバイスしてくれます。もちろん、加害者側との示談交渉も任せられます。

また、後遺障害の申請にあたっても、弁護士であれば後遺障害診断書の作成や申請手続きなどに対するサポートが可能です。もし、後遺障害の等級認定を受けられなかった場合は、異議申し立ての手続きを依頼できます。

弁護士法人プロテクトスタンスには、後遺障害の等級認定に詳しく、交渉の実績が豊富な弁護士が在籍しております。どうぞ安心してご相談ください。

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