弁護士費用特約
弁護士費用特約で支払われる弁護士費用には上限がありますか?
保険会社によって異なる場合がありますが、弁護士への相談費用は10万円、着手金や報酬金などは300万円までを上限としているケースが大半です。
0.弁護士費用特約とは
弁護士費用特約とは、自動車保険や火災保険などの保険に付帯することができる特約の一種です。
弁護士費用特約を保険に付帯していると、弁護士への相談や依頼時などに発生する相談料や着手金といった弁護士費用が保険から支払われます。
弁護士費用の支払いが不安な方も、弁護士費用特約を付帯していれば、費用の負担を気にすることなく弁護士への相談や依頼ができます。
1.弁護士への相談・依頼で発生する弁護士費用
弁護士に相談や依頼をすると、次のような弁護士費用が発生します。
費用 | 費用が発生するタイミング |
---|---|
相談料 | 弁護士への相談時 |
着手金 | 事件の依頼時 |
報酬金 | 依頼の終了時 |
実費 | 書類の取得費用や裁判所への交通費といった費用の発生時 |
弁護士費用特約を保険に付帯していることで、これらの費用が保険から支払われます。
2.弁護士費用特約が補償する金額には上限がある
弁護士費用特約は、際限なく弁護士費用を補償してくれるわけではありません。
相談料や着手金、報酬金などについて、特約から補償される金額には一定の上限が設けられています。
もし、上限を超える弁護士費用が発生した場合、超えた分の金額は支払わなければならないのが原則です。
保険会社によって金額が異なる場合がありますが、一般的な上限額について説明します。
3.相談料の上限額は10万円まで
弁護士への相談料は、弁護士費用特約から補償される上限額が10万円となっていることが一般的です。
つまり、10万円以上の相談料が発生したら、超えた分は自分で負担しなければなりません。
しかし、相談料を30分5,000円に設定している法律事務所であれば、10時間の相談が可能です。
相談は長くても1~2時間程度ほどで終わるケースが多いので、相談料の上限を超えて相談することは、まずないと考えてよいでしょう。
4.着手金や報酬金などは300万円まで
事件の依頼後から終了までに発生する着手金や報酬金、実費などは、300万円までを上限としている保険会社が多いです。
たとえば、着手金や報酬金などの合計が350万円となった場合、差し引き50万円を自身で負担することになります。
ただ、着手金や報酬金などの合計が300万円を超えるケースなどあるのでしょうか?次に解説してみましょう。
4-1.損害が高額だと上限額を超えるケースも
法律事務所によって異なる場合がありますが、着手金や報酬金の金額は、弁護士に依頼したことで獲得できた利益(経済的利益)をベースに算出することが一般的です。
もし、交通事故の被害者に重篤な後遺障害が残ったり、被害者が亡くなったりすると、損害賠償金の金額が高額となります。
そして、高額な損害賠償金を獲得すると、着手金と報酬金も高額となるため、上限額である300万円を超える可能性があります。
4-2.上限を超える利益の目安は?
それでは、どの程度の利益が生じると、弁護士費用が特約の上限である300万円を超える可能性があるのでしょうか?
弁護士法人プロテクトスタンスでは、弁護士費用特約を通じて保険会社に弁護士費用を請求する際、日弁連リーガル・アクセス・センターが定めた報酬基準にもとづいて、請求金額を計算しています。
この報酬基準は、正式には「弁護士保険における弁護士費用の保険金支払基準」と呼ばれるもので、一般的には「LAC(ラック)基準」と呼ばれています。
そして、LAC基準では、着手金と報酬金を次のように計算します(いずれも税抜き)。
経済的利益の額 | 着手金 |
---|---|
125万円以下の場合 | 10万円 |
300万円以下の場合 | 経済的利益の8% |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 経済的利益の5% + 9万円 |
3,000万円を超え3億円以下の場合 | 経済的利益の3% + 69万円 |
3億円を超える場合 | 経済的利益の2% + 369万円 |
経済的利益の額 | 着手金 |
---|---|
300万円以下の場合 | 経済的利益の16% |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 経済的利益の10% + 18万円 |
3,000万円を超え3億円以下の場合 | 経済的利益の6% + 138万円 |
3億円を超える場合 | 経済的利益の4% + 738万円 |
たとえば、経済的利益が1,850万円だった場合、着手金は101.5万円(1,850万円 × 0.05 + 9万円)です。
そして、報酬金は203万円(1,850万円 × 0.1 + 18万円)となるので、着手金と報酬金の合計は304.5万円となります。
さらに、実費なども含めると、1,850万円前後の利益が発生した場合に、上限の300万円を超す可能性があると考えられます。
4-3.上限を超えても自費負担の可能性は極めて低い
むち打ちや骨折など、交通事故により負傷するケースが多いケガでは、着手金や報酬金が300万円を超える損害が発生する可能性は、まずありません。
上限額を超えるほどの損害が発生するのは、例外的と考えてよいでしょう。
また、実際に300万円を超える損害が発生すると、上限額を超えた分の弁護士費用は自己負担となりますが、それは相手方から得られた賠償金から賄うことができるケースが大半です。
そのため、弁護士費用を自費で負担したり、得られた利益より弁護士費用の方が高額になる「費用倒れ」が発生したりする可能性は極めて低いです。
つまり、弁護士費用特約に加入していれば、弁護士費用の負担を気にすることなく、弁護士に依頼できると考えてよいでしょう。
5.弁護士を変更した場合は上限額に注意
弁護士費用特約を利用して弁護士に依頼した後でも、連絡が遅い、対応が悪いといった理由で、弁護士に不満を感じるケースがあります。
示談の成立前であれば、すでに依頼している弁護士との契約を終了し、別の弁護士に変更することが可能です。
ただし、弁護士を変更する際、先に依頼した弁護士に対して相談料や着手金が発生していれば、その金額は返還されません。
そして、すでに発生した相談料や着手金の金額分は、弁護士費用特約の上限額から差し引かれるので注意しましょう。
たとえば、着手金や報酬金などの上限が300万円で、先に契約していた弁護士に対する着手金が80万円だった場合、変更後の弁護士には220万円までの範囲でしか特約を利用できません。
弁護士法人プロテクトスタンスでは、経験豊富な弁護士と交通事故のみを取り扱うスタッフによる専門チームが、ご依頼者さまを全面的にサポートします。 交通事故の発生直後から示談の成立まで、安心してお任せいただけます。
まずは弁護士費用特約を使って、弁護士にご相談ください。
- この記事を監修した弁護士
弁護士 大橋 史典弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)獨協大学法学部法律学科卒業 明治大学法科大学院法務研究科 修了(68期)。
弊事務所に入所後、シニアアソシエイトとして活躍。交通事故分野を数多く取り扱い豊富な経験を持つ。