弁護士費用特約
弁護士費用特約とはなんですか?
弁護士費用特約とは、自動車保険や火災保険などに付帯する特約の一種です。弁護士への相談や依頼時に発生する弁護士費用が保険から支払われます。
0.弁護士費用特約があれば弁護士費用を気にせずに済む
交通事故の被害を受けた後の対応を弁護士に依頼すると、保険会社から支払われる賠償金の増額が期待できる、賠償金が支払われるまでに必要な示談交渉や手続きを任せられるといったメリットがあります。
しかし、弁護士費用の負担が心配で、弁護士への相談や依頼をためらう方もいるでしょう。
この点、加入中の自動車保険や火災保険の特約として、弁護士費用特約を付けている場合、保険から弁護士費用が支払われるため、費用の負担を気にせず、弁護士への相談や依頼をすることができます。
1.約6割が弁護士費用特約に加入
データを公開している保険会社によると、自動車保険における弁護士費用特約の加入率は約60%であり、半数以上の方が弁護士費用特約を付けているようです。
弁護士費用特約は保険料が別途かかりますが、年間にして数千円ほどで、5,000円未満としている保険会社がほとんどです。
弁護士に依頼すると交通事故の賠償金の増額が期待できることを考えると、加入するメリットの方が大きいです。
ただ、事故発生後に特約に加入しても弁護士費用特約を利用できないので、加入するかどうかは早めに検討することをおすすめします。
2.弁護士費用特約を利用するメリット
弁護士に相談や依頼をすると、相談料や着手金、報酬金、実費などの弁護士費用が発生します。
しかし、弁護士費用特約を利用すれば、原則的にこれらの弁護士費用を負担せず、弁護士に相談や依頼できることが、最大のメリットです。
そもそも、交通事故について弁護士に依頼することには、次のようなメリットがあります。
2-1.賠償金の増額が期待できる
保険会社は自社の支払基準により損害賠償金を算出するので、法的に認められる損害賠償金よりも低い金額を提示することが一般的です。
そのため、弁護士に示談交渉を依頼すると、賠償金を増額できる可能性が高まります。
また、損害額が少ない場合、弁護士に依頼しても、得られた利益より弁護士費用の方が高額な「費用倒れ」の状態になる可能性があります。
しかし、弁護士費用特約を利用すれば、保険から弁護士費用が支払われるため費用倒れは発生せず、増額できた場合も含め、得られる利益がそのまま自分のものになります。
なお、停車中に追突されたなど、自分に過失が全くない事故の場合、保険会社による示談代行のサービスを利用できません。
自身で相手方と示談交渉する必要があるため、弁護士に依頼した方がよいでしょう。
2-2.保険会社とのやり取りや煩雑な手続きなどを任せられる
交通事故に遭うと、保険会社とさまざまなやり取りが必要になります。
保険会社は平日の日中に連絡してくることが多く、仕事や家事、育児で忙しい方にとっては煩わしく感じるでしょう。
また、賠償金を受け取るまでにはさまざまな手続が必要ですが、通院や後遺障害の症状などで辛い中で、自身で手続きを進めるのは非常に大変です。
弁護士に依頼すれば、保険会社とのやり取りや、必要な手続きを任せられます。
3.弁護士費用特約を利用できるケース
基本的に被害者あるいは加害者が自動車などに乗っている事故が補償対象です。
自動車同士の事故はもちろん、自動車と歩行者、自動車と自転車といった事故でも、弁護士費用特約を利用できます。
しかし、自転車同士や自転車と歩行者など、自動車と無関係な事故は対象外です。
なお、自動車と無関係な自転車事故も補償対象にした弁護士費用特約を付けられる自転車保険も販売されています。
また、補償対象の事故でも、次のようなケースでは特約を利用できない可能性があります。
- 故意または重大な過失があった
- 無免許や酒気帯び、薬物などを使用した状態で運転していた
- 台風や洪水、地震などにより事故が発生した
- 事故の加害者が配偶者や親、子どもだった
保険会社によっては、事業用の自動車を運転中に発生した事故を対象外としている場合もあります。
4.弁護士費用特約を利用する流れ
弁護士費用特約を利用するための主な手続きは、次の通りです。
4-1.加入中の保険に弁護士費用特約が付いていることを確認する
加入中の保険に、弁護士費用特約が付いていないか確認しましょう。
家族が付けている弁護士費用特約を利用できる場合もあるので、注意しましょう。
4-2.交通事故に詳しい弁護士に依頼する
交通事故は、医療や保険に関する専門知識も求められるため、弁護士であれば誰でもいいわけではありません。
法律事務所のホームページなどから、交通事故に関する取扱実績や解決事例などが詳しく紹介されているか確認してもよいでしょう。
4-3.保険会社に連絡し、弁護士費用特約を利用する旨を伝える
弁護士が決まれば、保険会社に弁護士費用特約を利用して、弁護士に依頼する旨を連絡します。
その際は、弁護士事務所名や連絡先なども伝えましょう。
また、保険会社が契約している弁護士を紹介される場合がありますが、その弁護士に依頼しなければならない決まりはありません。
5.依頼後でも弁護士の変更は可能
弁護士費用特約を利用して依頼した後でも、対応が悪いなどの理由で弁護士を変更したい場合、示談の成立前であれば弁護士を変更できます。
ただし、相談料や着手金が発生している場合、その金額は返還されません。
たとえば、上限額が300万円の弁護士費用特約を利用し、最初に依頼した弁護士に50万円の費用が発生していた場合、次の弁護士には250万円までの範囲でしか特約を利用できません。
弁護士法人プロテクトスタンスは、交通事故の実績が豊富な弁護士と、交通事故のみを取り扱う専門チームがご依頼に担当します。
交通事故の発生直後から最終的な示談成立まで、弁護士とスタッフが全力でサポートしますので、安心してご依頼ください。
なお、弁護士費用特約で補償される金額や、補償の対象者などについて、下記のQ&Aでより詳細に解説しております。ぜひお役立てください。
- この記事を監修した弁護士
弁護士 大橋 史典弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)獨協大学法学部法律学科卒業 明治大学法科大学院法務研究科 修了(68期)。
弊事務所に入所後、シニアアソシエイトとして活躍。交通事故分野を数多く取り扱い豊富な経験を持つ。