示談
保険会社とのやりとりが大変なのですが、弁護士に依頼すると保険会社と交渉してくれますか?
交通事故の被害に遭うと、事故直後から示談成立まで、さまざまな場面で保険会社と何度もやりとりすることになります。弁護士に依頼することでやりとりを任せられるだけでなく、示談交渉を通じて損害賠償金の増額も期待できます。
0.交通事故後はさまざまな場面で保険会社とのやりとりが必要
交通事故の被害に遭うと、加害者が任意保険に加入している場合、保険会社から治療費や慰謝料などの損害賠償金が支払われます。
賠償金を受け取るまでには、さまざまな必要書類の収集や作成を行うだけでなく、保険会社とやりとりする必要があります。
たとえば、次のような場面で保険会社とのやりとりが発生します。
- 事故の発生後
- ケガの治療中
- 治療の終了時
- 保険会社との示談交渉
やりとりの内容や注意点について、それぞれ説明します。
1.事故の発生後
交通事故が発生すると、加害者は自身が加入する保険会社に報告することが一般的です。
そして、保険会社の担当者が今後の対応や手続きの流れなどを説明するため、事故発生の翌日や数日後、被害者に連絡します。
すぐに担当者が決まった場合、事故当日に保険会社から連絡が入る場合もあります。
何度もやりとりすることになるので、最初に担当者の氏名や部署名、連絡先などを聞いておくとよいでしょう。
また、担当者から通院する病院を尋ねられます。まだ病院に行っていなければ通院予定の病院を回答しましょう。
連絡が入るだけでなく、さまざまな書類も送られてきます。必要事項の記入と返送が必要な書類もあるため、内容をきちんと確認しておきましょう。
1-1.加害者に保険会社を確認する
保険を利用することで等級が下がり、保険料が上がることなどを理由に、加害者が保険会社に事故を報告しない可能性があります。
保険会社から連絡がなければ補償を受けられない場合もあるので、加害者と話ができる状態であれば、保険会社にきちんと報告するよう伝えましょう。
また、加害者が加入している自賠責保険会社と任意保険会社を確認しておくことも重要です。
口頭で保険会社を尋ねるだけでなく、可能であれば保険証券の写真を撮っておくと安心です。
1-2.自身の保険会社にも連絡する
被害者も自動車保険に加入していれば、その保険会社に連絡することも重要です。
人身傷害保険や車両保険、弁護士費用特約などの保険や特約を利用できる場合があります。
保険会社に連絡する際、次のような点を連絡するようにしましょう。
- 加入している保険の証券番号
- 運転者の氏名、生年月日、連絡先
- 免許証番号
- 保険契約者との関係
- 事故発生の日時、場所、道路状況
- 加害者の氏名、住所、連絡先
- 自分と相手方のナンバープレート番号
- 自分と相手方のケガの有無や車両の損傷状況
2.ケガの治療中
治療が始まると、「任意一括対応」というサービスを利用することで、加害者側の保険会社が病院に治療費を支払ってくれます。
一括対応が継続している間は、被害者が治療費を負担する必要がありません。
一括対応を利用するには、保険会社から送られてくる一括対応や医療照会・医療調査に関する同意書にサインして返送する必要があります。
一括対応を利用しても、その後の示談交渉などの手続きが不利になることはないので、利用したい場合は同意書にサインして返送しましょう。
同意書の内容がよくわからず、サインしてよいか不安があるような場合は、弁護士に相談してもよいでしょう。
2-1.治療費の打ち切りを打診されても安易に応じない
治療の開始から一定期間が過ぎると、保険会社から「そろそろ治療費の支払いを打ち切ります」など症状固定の連絡を受けることがあります。
たとえば、むち打ち(頸椎捻挫)では3か月ほどで打ち切りを打診されることが多いようです。
まだ治療を続けたいのであれば、治療費の打ち切りを打診されてもすぐに応じてはいけません。
まずは、治療を続ける必要があるかどうかについて、通院先の医師(主治医)に相談しましょう。
もし、治療を続けるべきと主治医が判断した場合、その旨を説明する意見書を作成してもらい、保険会社に提出しましょう。
保険会社が治療費の支払いを延長してくれる場合があります。
もし、意見書を提出しても保険会社が延長してくれない場合は、交通事故に詳しい弁護士に治療費の支払い対応の延長交渉をしてもらうことができます。
2-2.治療費を打ち切られても必要な治療は続ける
一括対応はあくまでも保険会社のサービスであり、法的な義務があるわけではありません。
そのため、治療費の支払延長を求めても、認められないケースもあります。
もし、治療費の支払いが打ち切られたとしても、必要な治療は続けることが重要です。
交通事故によりケガをして治療を受けた場合、加害者側から傷害慰謝料(入通院慰謝料)が支払われます。
慰謝料の金額は治療期間によって決まるため、必要な治療を受けることなく切り上げてしまうと、慰謝料の金額も低くなってしまいます。
また、治療を受けても何らかの後遺症が残った場合、後遺障害の等級認定を受けることで、後遺障害の慰謝料と逸失利益を請求できます。
ただし、後遺障害の等級認定を受けるためには、おおよそ6か月以上の治療期間が必要といわれています。
必要な期間よりも前に治療を止めてしまうと、後遺障害の等級認定を受けられない可能性があります。
3.治療の終了時
交通事故によるケガが完治した場合、損害賠償金の金額を決めるため、保険会社との示談交渉を進めることになります。
もし、治療を続けても症状がよくならないと医師が判断した場合は、後遺障害の等級認定を受けるための手続きを進めます。
後遺障害の等級認定を受けると、後遺障害に対する慰謝料や、交通事故がなければ本来得られるはずであった利益(逸失利益)を加害者側に請求できます。
3-1.後遺障害の手続きを保険会社に任せられる
後遺障害の等級認定を申請する方法は、加害者側の保険会社に手続きを任せる「事前認定」と、被害者自身で進める「被害者請求」の2種類があります。
後遺障害を申請するには、後遺障害診断書など数多くの書類を集めたり、作成したりする必要があります。
事前認定であれば、保険会社に最低限の書類を提出するだけで手続きできるので、被害者請求に比べて被害者にかかる手間や負担が少ないです。
3-2.不安があれば被害者自身で手続きしてもよい
これまで保険会社の対応に不満を抱いており、手続きを任せると適切な等級に認定されるか不安に感じる人もいるでしょう。
このようなケースでは、被害者請求により手続きを進めることがおすすめです。
しかし、書類の収集や作成を正確に進めないと、認定を受けられない、または、適切な等級に認定されないなどの不利益が生じる可能性があります。
自ら手続きを進めることが心配であれば、交通事故に詳しい弁護士に被害者請求の相談をしてもよいでしょう。
4.保険会社との示談交渉
治療によってケガが完治するか、後遺障害に関する手続きが完了すると、加害者側の保険会社と損害賠償金の金額を決める示談交渉が始まります。
4-1.保険会社とは書面や電話でやりとりする
示談交渉の一般的な流れとしては、まず保険会社から損害賠償金の金額などが記載された書面が届きます。
書面の内容をもとに、示談の条件について電話で話し合います。
お互いが合意すると示談が成立します。示談の成立後は条件の変更を求めることが非常に困難です。
保険会社から書面が届いたら内容をよく確認し、疑問点や不明点があれば保険会社に質問するようにしましょう。
4-2.保険会社から低額な金額を提示されるケースが大半
保険会社は、自社独自の基準により損害賠償金を計算し、その金額は裁判によって認められる金額よりも低いケースが大半です。
提示された金額に納得できなければ、交渉を通じて増額を求めることになります。
ただし、保険会社は難解な専門用語を並べながら増額に応じない理由を説明してくるので、話し合いを進めるのは困難を極めます。
そもそも、弁護士でなければ交渉に応じないケースも少なくありません。
納得できる金額を獲得するためには、交通事故に詳しい弁護士に交渉を依頼することをおすすめします。
5.保険会社との示談交渉は弁護士に依頼できる
保険会社との示談交渉を弁護士に依頼することで、裁判で認められる金額まで損害賠償金を増額するべき理由を法的な視点から適切に主張してくれます。
そのため、自分で交渉するよりも賠償金の増額が期待できるのです。
また、示談交渉の段階ではなく、事故直後から弁護士に依頼することも可能です。
事故直後に依頼することで、示談交渉の成立までさまざまな場面で弁護士がサポートしてくれるので、安心して治療を受けることができます。
5-1.保険会社とのやりとりを任せられる
これまでの説明の通り、交通事故の被害に遭うと数多くの必要書類を集めたうえで、繁雑な手続きを自分で進めなければなりません。
また、保険会社からの連絡は平日の日中にくることが一般的です。
仕事や家事、ケガの治療などで大変な状況だと、手続きを進めながら保険会社と何度もやりとりするのは大きな負担です。
この点、弁護士に依頼すれば、必要な手続きや保険会社とのやり取りを任せることができます。
手続きとやりとりによる負担やストレスから解放されるのは、被害者にとって大きなメリットといえるでしょう。
5-2.通院方法についてアドバイスしてくれる
医師の指示通りの頻度で通院しなかったり、勝手に通院を止めたりすると、慰謝料などの金額が低額になってしまう可能性があります。
また、痛みなどの症状が残っており、治療を続けたいと考えていても、保険会社が治療費の支払いを打ち切ってしまうことも考えられます。
医師の指示に従いながら通院することが重要ですが、弁護士であれば高額な賠償金を獲得することを念頭に、通院方法についてアドバイスしてくれます。
また、保険会社から治療費の打ち切りを打診されても、治療費の支払い対応の延長交渉を依頼できます。
5-3.正しい過失割合を主張してくれる
交通事故の発生について、被害者側にも何らかの責任があると、責任の度合いに応じて慰謝料などの賠償金額が本来よりも低く調整されることがあります。
責任の度合いのことを「過失割合」と呼び、賠償金額が調整されることを「過失相殺」と呼びます(民法第722条2項)。
保険会社は、賠償金額を抑えるため、少なくとも被害者が有利になるように過失割合を判断することはありません。
過失割合の判断についても、保険会社との交渉で決めていくことになりますが、弁護士に依頼すれば、正しい過失割合となるよう交渉してくれます。
5-4.後遺障害の申請手続きをサポートしてくれる
後遺障害は、申請すれば必ず等級が認定されるわけではありません。
申請書類の内容が不十分だったり、記入漏れなどの不備があったりすると、認定されない場合や、本来認められる等級より低い等級に認定される可能性があります。
また、医師は必ずしも後遺障害の仕組みに詳しいわけではないので、適切な等級に認定されることを念頭に後遺障害診断書を作成しないケースもあります。
この点、交通事故に詳しい弁護士であれば、診断書の作成からサポートしてくれるので、適切な等級認定を受けられる可能性が高まるのです。
6.交通事故に詳しい弁護士への依頼が重要
交通事故について、弁護士なら誰に相談や依頼をしてもいいわけではありません。
交通事故は法律だけでなく、医療や保険など、幅広い知識が求められるため、交通事故に関する実績が豊富な弁護士に依頼することが重要です。
交通事故に詳しい弁護士を探す方法として、法律事務所のホームページに、交通事故に関する解説や解決実績が多く紹介されているかなどを確認してもよいでしょう。
また、実際に弁護士と直接話すことで、安心して任せられるかどうかを確かめることも重要です。
- この記事を監修した弁護士
弁護士 大橋 史典弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)獨協大学法学部法律学科卒業 明治大学法科大学院法務研究科 修了(68期)。
弊事務所に入所後、シニアアソシエイトとして活躍。交通事故分野を数多く取り扱い豊富な経験を持つ。