具体的な後遺症
耳や聴力の後遺障害はどのような症状がありますか?
主な症状として、耳が聞こえにくくなったり、聞こえなくなったりする聴力障害のほか、耳の欠損や耳鳴りなど、さまざまな種類があります。
0.交通事故による耳や聴力の後遺障害
交通事故によって耳を負傷して、後遺障害が残ってしまうケースがあります。
耳に関する後遺障害として、次のような種類があります。
- 聴力障害
- 耳の欠損障害
- 耳鳴り
- 耳漏(じろう)
- 平衡機能障害
1.聴力障害
耳が聞こえにくくなった、または聞こえなくなった状態のことです。
聴力障害の程度や、障害が生じたのが両耳か片耳かによって、認定される等級が異なります。
1-1.聴力障害に関する等級と内容
両耳の聴力障害に関する後遺障害の等級と内容は次の通りです。
等級 | 内容 |
---|---|
4級3号 | 両耳の聴力を全く失ったもの |
6級3号 | 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの |
6級4号 | 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
7級2号 | 両耳聴力が40cm以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの |
7級3号 | 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することがでない程度になったもの |
9級7号 | 両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
9級8号 | 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの |
10級5号 | 両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの |
11級5号 | 両耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの |
続いて、片耳の聴力障害に関する後遺障害の等級と内容です。
等級 | 内容 |
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9級9号 | 1耳の聴力を全く失ったもの |
10級6号 | 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの |
11級6号 | 1耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
14級3号 | 1耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの |
1-2.聴力障害に関する等級の認定基準
聴力障害が生じた場合に認定される後遺障害の等級は、「聴力」と「最高明瞭度」を基準に判断されます。
聴力とは、聞き取れる音の大きさに関する基準であり、デシベル(dB)という単位で表します。
また、最高明瞭度とは、聞き取った言葉の理解に関する基準であり、パーセントで表します。
後遺障害の等級は、一耳と他耳の聴力レベルの組み合わせや、両耳の聴力と最高明瞭度の組み合わせから確認することができます。
具体的には、次の表の通りです。
1-3.聴力障害に関する検査方法
聴力障害は聴力に関する「標準純音聴力検査」と、最高明瞭度に関する「語音聴力検査」の2種類の検査によって判断します。
標準純音聴力検査は、防音室でヘッドホンをして、さまざまな大きさや高さの音を聞き取る検査方法です。
検査は7日ほどの間隔で3回行い、2回目と3回目の数値の平均から聴力を算出します。
語音聴力検査は、日常的に使われる言葉をどの程度、聞き取れるかを調べるための検査です。
ヘッドホンから流れてくる「ア、イ、ウ…」といった言語の音や数字などを、正確に聞き取れることができるかを調べます。
2.耳の欠損障害
交通事故によって耳の大部分を失った状態のことです。
耳の欠損障害に関する後遺障害の等級と内容は次の通りです。
等級 | 内容 |
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12級4号 | 1耳の耳介の大部分を欠損したもの |
「1耳の耳介の大部分を欠損」とは、片方の耳(耳殻)の軟骨部が2分の1以上失われることです。
もし、両耳を欠損した場合は、後遺障害の「併合」というルールにより、併合11級に等級が繰り上げられます。
また、耳の欠損は、頭部や顔といった人目に付く部分に傷痕が残る「外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)」という後遺障害に該当するとも考えられます。
外貌醜状の等級と内容は次の通りです。
等級 | 内容 |
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7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの |
9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
12級14号 | 外貌に醜状を残すもの |
耳の欠損が大きい場合、より上位の等級である7級12号に認定される可能性があります。
また、耳の欠損が2分の1以下でも、外貌醜状による12級14号の認定が認められる可能性があるでしょう。
3.耳鳴り
周囲に音はないのに、耳の中でさまざまな雑音が聞こえる状態です。
耳鳴りによって30dB以上の難聴となっている場合、後遺障害として認められます。
耳鳴りで認定される等級としては、耳鳴りが生じていることが検査により医学的に評価できる(他覚所見がある)場合は12級相当に認定されるでしょう。
他覚所見はないものの、耳鳴りが生じていると合理的に説明できれば、14級相当に認定される可能性があります。
等級 | 内容 |
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12級相当 | 耳鳴に係る検査によって難聴に伴い著しい耳鳴が常時あると評価できるもの |
14級相当 | 難聴に伴い常時耳鳴のあることが合理的に説明できるもの |
耳鳴りの程度や他覚所見の有無などは、「ピッチ・マッチ検査」や「ラウンドネス・バランス検査」によって調べます。
ピッチ・マッチ検査は、周波数が異なるさまざまな種類の音を聞いて、耳鳴りの音に近い周波数を調べる検査です。
ラウンドネス・バランス検査は、ピッチ・マッチ検査によって特定した耳鳴りの周波数を使い、耳鳴りの音量を調べる検査です。
4.耳漏
交通事故によって鼓膜を損傷したことで、耳の内部から分泌液が漏れ出す状態のことです。
耳鳴りと同様に、耳漏によって30dB以上の難聴となっている場合に後遺障害として認められます。
そして、耳漏の状態が常時かどうかによって等級が異なります。
等級 | 内容 |
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12級相当 | 常時耳漏があるもの |
14級相当 | 耳漏があるもの |
5.平衡機能障害
交通事故によって耳の奥(内耳)を損傷することで、身体のバランスを取る機能が低下してしまう状態です。
平衡機能障害による主な症状として、めまいや吐き気などがあります。
なお、平衡機能障害は内耳の損傷によって生じた場合でも、神経系統の機能障害として判断されることになるでしょう。
平衡機能障害に関する後遺障害の等級と内容は次の通りです。
等級 | 内容 |
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3級3号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5級2号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
7級4号 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
9級10号 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
- この記事を監修した弁護士
弁護士 大橋 史典弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)獨協大学法学部法律学科卒業 明治大学法科大学院法務研究科 修了(68期)。
弊事務所に入所後、シニアアソシエイトとして活躍。交通事故分野を数多く取り扱い豊富な経験を持つ。