等級認定
後遺障害とは何ですか?
後遺症の原因を医学的に証明でき、その影響で労働能力の低下または喪失が認められ、後遺障害等級に該当すると判断されたものを後遺障害といいます。
0.後遺障害の要件
交通事故で負ったケガが完治せず、後遺症が残った場合には、後遺障害の等級認定を申請することができます。
しかし、すべての後遺症が後遺障害の等級に認定されるとは限りません。
後遺障害に該当すると判断されるためには、次の要件を満たす必要があります。
- 交通事故が原因の症状である
- 症状に一貫性・連続性がある
- 一定以上の治療期間がある
- 後遺症の症状を医学的に証明できる
- 労働能力の低下または喪失が認められる
- 後遺障害等級の要件を満たすもの
1.交通事故が原因の症状である
後遺障害等級の認定を受けるためには、交通事故とケガとの因果関係が認められる必要があります。
そして、因果関係が認められるためには、事故直後または数日以内に病院を受診していることが必要です。
もし、事故日から初診日までに大きな開きがある場合、交通事故とケガとの因果関係が認められない可能性があるため、注意が必要です。
この他にも、加害者の任意保険会社から治療費支払いの対応(一括対応)が行われないなど、さまざまな不利益を被る可能性があるため、早めに病院を受診しましょう。
2.症状に一貫性・連続性がある
事故に遭ってから現れている症状が一貫していることも、等級認定に必要な要件となります。
症状がときどき現れるような場合には、一貫性が認められませんので、後遺障害等級は認められない可能性があります。
また、症状が途中で変わったような場合は、連続性がないと判断されてしまう可能性もあります。
事故直後から定期的に病院に通院し、症状が一貫して続いていることを医師に伝えてください。
また、その旨を後遺障害診断書に記載してもらうようにしてください。
3.一定以上の治療期間がある
後遺障害等級の認定を受けるためには、医師に「これ以上治療を継続しても回復しない状態になった」という診断(症状固定)を受けることが必要です。
交通事故で最も受傷頻度の高いむち打ち(頸椎捻挫)の場合、症状固定の診断を受けるまでは、おおよそ6か月ほどの治療期間が必要といわれています。
ケガの程度によって異なりますが、後遺障害の等級認定を受けるためには、最低でも数か月以上の治療期間が必要のため、医師の指示のもと定期的・継続的に通院しましょう。
4.後遺症の原因を医学的に証明できる
医学的に症状を証明できるとは、レントゲンやCT、MRIなどの画像所見により、検査で得られた画像所見によって異常が認められ、症状の原因を証明できる場合のことをいいます。
症状を証明するためにも、レントゲンやCT、MRIなどの画像検査を受けて、画像所見を取得してください。
ただし、交通事故で受傷する可能性が高いむち打ちの場合、神経や椎間板といった軟部組織の損傷が原因であることが多いです。レントゲンでは、軟部組織を撮影することができないため、CTやMRI検査を受けるようにしましょう。
また、画像検査で判断が難しい場合も、ジャクソンテストやスパーリングテストといった「神経学的検査」を受けるとよいでしょう。 この検査を受けて反応があった場合(陽性)は、その神経学的所見も等級認定に有力な証拠となります。
むち打ちの症状により、CTやMRI検査による異常を他覚的所見として認めることができる場合は、12級13号に認定される可能性があります。
5.労働能力の低下または喪失が認められる
後遺障害の等級は、後遺症の影響により、これまで通りに就労できなくなった場合や、まったく労働することができなくなった場合に認定されます。
たとえば、交通事故でむち打ちを負い、一貫して首に痛み、しびれなどの症状がある場合や、手足を動かしにくいなどの影響で、長時間仕事に従事することが困難になったといった場合が考えられます。
仕事に対する具体的な影響を伝えるためにも、事故前に被害者が就いていた職業やその業務内容、仕事上の不都合や問題点などをまとめておくとよいでしょう。
6.後遺障害等級の要件を満たすもの
後遺障害の等級は、1級~14級(要介護の1級、2級もある)に細分化されており、それぞれに要件があります。
たとえば、むち打ちで認定される可能性のある14級9号には、「局部に神経症状を残すもの」という要件を満たす必要があります。
この要件は、医学的に症状の存在が証明できなかったとしても、医学的に症状を説明することが可能な場合と解釈されています。
そのため、画像検査で異常が認められなくても、前述した神経学的検査で反応があった場合(陽性)には、14級9号に認定されることがあるため、医師と相談しながら、必要な検査を受けるとよいでしょう。
7.後遺障害の相談は弁護士へ!
後遺障害の等級認定を受けるためには、このようなハードルを乗り越える必要があります。
後遺症が残ったとしても、必ず後遺障害等級に認定されるわけではないのです。
そのため、もし後遺症が残ってしまった場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故に強い弁護士に相談すれば、後遺障害の各等級の認定に必要な検査のアドバイスが受けられたり、過去の認定事例にもとづいて少しでも等級獲得の可能性を高められるような対応策を講じることができます。
また、等級に認定された場合に請求できる後遺障害慰謝料も弁護士基準で算出して保険会社と交渉するため、慰謝料の増額が期待できます。
被害者の損害に見合った賠償金を獲得するためにも、後遺障害の等級認定や保険会社との示談交渉は弁護士にご依頼ください。
- この記事を監修した弁護士
弁護士 大橋 史典弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)獨協大学法学部法律学科卒業 明治大学法科大学院法務研究科 修了(68期)。
弊事務所に入所後、シニアアソシエイトとして活躍。交通事故分野を数多く取り扱い豊富な経験を持つ。