過失割合
過失割合に納得いかないのですが、変更できるものなのでしょうか?
より適切な過失割合を判断し、裏付けとなる証拠を提出するなどして、保険会社に過失割合の修正を求めることができます。弁護士にその交渉を依頼することも重要です。
0.過失割合は保険会社から提示される
過失割合とは、交通事故の発生に対して、加害者と被害者のそれぞれに、どの程度の落ち度(過失)があるかを数値化し、割合で示したものです。
もし、被害者に全く過失がなければ「0:100」、被害者に10%の過失があれば、「10:90」となります。
被害者にも過失がある場合、損害賠償金を過失割合に応じて減額する方法で調整することになります。これを「過失相殺」と呼びます(民法第722条2項)。
たとえば、被害者に500万円の損害が発生したケースで、被害者の過失割合が0%の場合、損害賠償金が減額されないため最終的に500万円が支払われます。
もし、被害者に10%の過失が認められると、損害賠償金も10%の減額となるので450万円、20%だと400万円に減額されます。
過失割合は、過失相殺により減額された損害賠償金の金額とともに、加害者側の保険会社から提示されることが一般的です。
そして、過失割合の結果によって損害賠償金の金額が大きく上下する可能性があります。
「なぜか自分に過失割合がついている」「自分の過失割合が大きすぎる」など、保険会社から提示された内容に納得できなければ、見直しを求めて交渉することになります。
1.過失割合に納得できないときの対応方法
加害者側の保険会社から提示された過失割合に納得できない場合、次のような方法で対応しましょう。
- 過失割合を判断した根拠を確認する
- 事故状況を示す証拠を提出する
- 弁護士に保険会社との交渉を依頼する
2.過失割合を決定した根拠を確認する
保険会社から過失割合が提示されたら、どのような根拠から割合を決定したのかを確認しましょう。具体的には、次のような点をチェックします。
- どの事故類型を基準にしたか
- 修正要素が正しく反映されているか
- 被害者の主張も反映されているか
2-1.どの事故類型を基準にしたか
過失割合を決める手順としては、まず、事故類型ごとにまとめられている「基本の過失割合」を参考にすることから始まります。 基本的な過失割合は、「別冊 判例タイムズ38号」や「赤い本」といった書籍にまとめられています。
たとえば、信号があり道幅が同じ交差点で起きた自動車同士の事故や、横断歩道を渡る歩行者と横断歩道に侵入した自動車の事故など、さまざまな事故類型に対して過失割合が設定されています。
提示された過失割合について、どの事故類型を基準にして基本の過失割合を判断したのか、加害者側の保険会社に聞いてみましょう。
もし、より類似する事故類型があるのに、自分に不利な過失割合となる事故類型を基準にしている場合、最も類似する事故類型とその過失割合に変更するよう主張しましょう。
2-2.修正要素が正しく反映されているか
事故類型が同じでも、「歩行者が横断禁止の場所を横断していた」「運転手が前方不注意していた」など、事故発生の原因となる事情はそれぞれ異なります。
そのため、事故類型ごとに設定された基本の過失割合だけでは、事故の状況に応じた適切な過失割合とならないケースが少なくありません。
適切な過失割合にするため、事故発生の原因となる事情(修正要素)を踏まえ、事故類型ごとに設定された基本の過失割合を調整(修正)することがあります。
たとえば、歩行者と自動車の接触事故が、横断禁止の場所を歩行者が横断している最中に起きた場合、歩行者側の過失割合を加算する方法で修正します。
修正要素によっては過失割合が非常に不利になる可能性があるので、提示された過失割合に対して、修正要素が正しく反映されているかも確認しましょう。
2-3.被害者の主張が反映されているか
過失割合を決める際、保険会社が参考にした資料も確認しましょう。
もし、加害者の証言のみを参考にして過失割合を決めていたのであれば、被害者の主張も反映させるべきです。
被害者の主張を裏付ける客観的な資料を提出し、過失割合を修正するよう主張しましょう。
3.事故状況を示す証拠を提出する
過失割合に関する交渉では、交通事故が発生した状況を巡って当事者同士の主張が食い違うことが少なくありません。
事故状況を示す証拠を保険会社に提出することは、より適切な過失割合に修正するうえで、非常に有効な手段です。
たとえば、次のような証拠を集めて提出するとよいでしょう。
- ドライブレコーダーの映像
- 事故現場を撮影した監視カメラの映像
- 事故現場の写真
- 事故車両の写真
- 実況見分調書
有力な証拠を残すためにも、可能な限り事故現場や事故車両の状態を撮影しておくとよいでしょう。
また、ドライブレコーダーを付けている場合、事故時の映像を提出することも非常に有力な証拠となります。
4.弁護士に交渉を依頼する
被害者自身で証拠を提出し、より適切な過失割合を主張することで、保険会社が過失割合の見直しに応じる可能性もあります。
しかし、損害賠償金の増額を避けるため、小幅な修正にとどめようとするケースや、そもそも見直しを拒否してくるケースも少なくありません。
また、保険会社は交通事故に関する知識と交渉の経験が豊富な専門家です。
過失割合を修正するべき根拠となる証拠を提出しても、新たな証拠を提示されるなど、交渉を有利に進めるのは不可能に近いでしょう。
過失割合の見直しが認められないと、最終的に支払われる損害賠償金の金額で損をすることに繋がります。
そのため、交通事故について弁護士に相談し、保険会社との過失割合の交渉を依頼することをおすすめします。
弁護士であれば、より正確な過失割合を判断し、適切に主張するために必要な証拠を揃えることが可能です。
交渉の場では、法的な視点にもとづき主張してくれるので、過失割合の見直しと賠償金の増額が期待できます。
- この記事を監修した弁護士
弁護士 大橋 史典弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)獨協大学法学部法律学科卒業 明治大学法科大学院法務研究科 修了(68期)。
弊事務所に入所後、シニアアソシエイトとして活躍。交通事故分野を数多く取り扱い豊富な経験を持つ。