刑事事件
交通事故が刑事事件になった場合、弁護士に相談するメリットは何ですか?
交通事故が刑事事件になった場合、加害者が弁護士に相談や依頼をすると、示談による不起訴の獲得や早期の身柄解放、刑罰の減軽などが期待できます。
0.交通事故は刑事事件になることもある
交通事故の加害者になってしまうと、交通法規の違反内容や被害者の状況などによっては、刑事事件として責任を問われる可能性があります。
刑事事件になると、逮捕されて長期間にわたって身柄を拘束されたり、起訴されて有罪になり、懲役や罰金などの刑罰を受けたりするおそれがあります。
交通事故が刑事事件になった場合、加害者が弁護士に相談することで、これらのリスクを回避できる可能性が高くなります。
1.交通事故が刑事事件になるケース
交通事故や交通違反に対しては点数制度が導入されており、事故の態様や違反の内容などにもとづいて設定された違反点数が加算されます。
そして、過去3年間の合計点数(累積点数)が一定程度を超えると、運転免許の停止や取消しといった処分を受けることになります。
さらには、反則金の支払いが科せられることもあります。
1-1.違反点数には「基礎点数」と「付加点数」がある
交通事故では、被害者がケガをしたり死亡したりするなど、人身事故で刑事事件になるケースがあります。
たとえば、次のような犯罪に該当する可能性があります。
- 過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法第5条)
- 危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法第2条)
過失運転致死傷罪は、わき見運転といった不注意(過失)によって事故を起こし、被害者を死傷させることです。
刑罰は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金ですが、被害者の負傷の程度が軽い場合は、刑が免除されるケースもあります。
危険運転致死傷罪は、危険な運転により人を死傷させることです。
刑罰は、負傷させた場合が15年以下の懲役、人を死亡させた場合が1年以上20年以下の懲役で、有罪になれば必ず懲役刑となります。
危険な運転とは、たとえば、アルコールや薬物の影響で正常な運転が困難な状態での走行や、制御困難なほどの大幅なスピード違反、自動車の直前に侵入したり著しく接近したりするあおり運転、信号無視などが該当します。
2.あおり運転は行為自体が刑事事件になる可能性がある
近年、あおり運転はニュースなどで多く報道され、悲惨な死傷事故も発生しています。
この点、2020年6月30日に施行された改正道路交通法において、あおり運転に対する罰則が設けられました。
そのため、死傷者が発生しなかったとしても、あおり運転の行為それ自体が刑事事件となる可能性があるのです。
3.物損事故は刑事事件にならないのが原則
自動車や所持品などが壊れたものの、死傷者がいない物損事故の場合、基本的には刑事事件にはなりません。
他人の物を壊すと「器物損壊罪」に該当すると思われるかもしれませんが、器物損壊罪が成立するのは、わざと(故意に)物を壊した場合です。
そのため、偶発的な交通事故では、器物損壊には当たらないと考えられます。
しかし、他人の建造物を壊してしまった場合は、「運転過失建造物損壊罪」(道路交通法第116条)にあたる可能性があります。
4.交通事故の加害者が弁護士に相談するメリット
交通事故が刑事事件になってしまった場合、加害者は弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すると、被害者とすぐに交渉して示談の成立を目指してくれます。
そして、示談の成立により、次のようなメリットが期待できます。
- 逮捕・勾留された場合に、早期に身柄が解放される
- 不起訴処分により前科がつくのを回避できる
- 有罪判決を受けても、執行猶予処分など刑罰が軽減される
4-1.任意保険に未加入だと自分で交渉する必要がある
交通事故の被害者との示談交渉は、任意保険会社を通じて行うケースが少なくありません。
もし、任意保険に加入していない場合は、加害者自身が交渉する必要があります。
しかし、被害者に交渉を求めても、加害者に対する怒りや悲しみにより、応じてもらえる可能性は低いでしょう。
交渉に応じてもらえたとしても、不当に高額な示談金を請求され、示談が成立しないかもしれません。
弁護士に相談し、被害者との示談交渉を依頼することで、弁護士が加害者に代わって交渉するので、被害者との冷静な話し合いが可能です。
また、弁護士は法律と交渉の専門家なので、適切な示談金額を算出するとともに、早期に示談が成立することが期待できるのです。
4-2.保険会社任せは必ずしも適切ではない
また、任意保険に加入している場合でも、保険会社に交渉を任せることは、必ずしも適切とはいえません。
保険会社は、基本的に被害者の治療が終了した後に示談交渉を行い、示談金を支払います。
被害者が大ケガを負い、後遺障害が残ったような場合は、治療や交渉が長引き、示談成立までに数年かかることもあり得ます。
また、保険会社はあくまでも民事上の責任として、被害者に発生した損害を賠償することを目的に交渉を行います。
この点、弁護士であれば、加害者が反省していることを伝え、被害者から許し(宥恕:ゆうじょ)を得ることを念頭に示談交渉を進めてくれます。
そして、検察官や裁判官に対し、被害者の許しを得て示談が成立したことを主張するので、不起訴処分の獲得や、裁判になっても執行猶予など刑罰の減軽が期待できるのです。
なお、交通事故を起こして逮捕された場合の手続きの流れや、どのような罪に問われるかについて、次のQ&Aで詳しく解説しています。
ぜひこちらもお役立てください
- この記事を監修した弁護士
弁護士 大橋 史典弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)獨協大学法学部法律学科卒業 明治大学法科大学院法務研究科 修了(68期)。
弊事務所に入所後、シニアアソシエイトとして活躍。交通事故分野を数多く取り扱い豊富な経験を持つ。