自賠責保険で支払われる保険金額に上限や限度額があるか弁護士が解説

交通事故のよくあるご相談Q&A(FAQ)

自動車保険

Q.uestion

自賠責保険で支払われる保険金に上限はありますか?

弁護士 大橋史典
弁護士 大橋史典
Answer

交通事故によるケガには120万円、後遺障害が残った場合は等級に応じて75万円~4,000万円までという上限があります。被害者が亡くなった場合は3,000万円までです。

0.自賠責保険から支払われる保険金には上限がある

自賠責保険は、すべての自動車やバイク(二輪自動車)、原動機付自転車(原付)が加入しなければならない強制保険です(自動車損害賠償保障法第5条)。
すべての自動車などが加入しているため、交通事故の加害者が任意保険に未加入で、十分な資力がない場合も、被害者は補償を受けることができます。

ただし、被害者に生じたすべての損害に対し、補償が受けられるわけではありません。
自賠責保険から支払われる保険金の金額には、一定の上限が定められています。

1.保険金の上限は被害の内容に応じて定められている

自賠責保険から支払われる保険金は、被害の内容に応じて上限が定められています。具体的な金額は次の通りです。

被害者がケガをした120万円
被害者に後遺障害が残った75万円~4,000万円
被害者が死亡した3,000万円

1-1.後遺障害が残った場合の上限は等級によって異なる

後遺障害が残った場合の保険金額の上限は、症状に応じて認定される等級によって異なります。等級ごとの上限は次の表の通りです。

等級上限
第1級3,000万円
(4,000万円)
第2級2,590万円
(3,000万円)
第3級2,219万円
第4級1,889万円
第5級1,574万円
第6級1,296万円
第7級1,051万円
第8級819万円
第9級616万円
第10級461万円
第11級331万円
第12級224万円
第13級139万円
第14級75万円
  • ※カッコ内の金額は、介護を要する後遺障害が残った場合の金額です。

1-2.上限にはさまざまな費目が含まれる

たとえば、被害者がケガをした場合の上限である120万円は、傷害慰謝料(入通院慰謝料)の上限ではありません。
上限の中には、治療費や通院交通費、休業損害など、ケガをした場合に請求できるさまざまな費目が含まれます。

また、後遺障害が残った場合や死亡した場合も、慰謝料だけでなく逸失利益や葬儀費用(死亡の場合)などが上限の中に含まれます。

1-3.上限を超える損害が発生した場合

自賠責保険の上限を超える損害が発生した場合、超えた分については、加害者が任意保険に加入していれば、保険会社に請求します。
加害者が任意保険に加入していなければ、加害者に直接請求することになります。

2.ケガをした場合の補償内容

被害者がケガをした場合、上限(120万円)の中から、次のような損害に対して保険金が支払われます。

支払いの対象となる損害支払基準
治療費
診察料や手術料、投薬料や処置料、入院料等の費用など
治療に要した必要かつ妥当な実費
看護料
原則として12歳以下の子どもに近親者などの付き添いや、医師が看護の必要性を認めた場合の、入院中の看護料や自宅看護料・通院看護料
入院1日4,200円
自宅看護か通院1日2,100円
これ以上の収入減の立証で近親者1万9,000円、それ以外は地域の家政婦料金を限度とした実額
諸雑費
入院中に要した雑費
原則として1日1,100円
通院交通費
通院に要した交通費
通院に要した必要かつ妥当な実費
義肢等の費用
義肢や義眼、眼鏡、補聴器、松葉杖などの費用
必要かつ妥当な実費
(眼鏡の費用は5万円が限度)
診断書等の費用
診断書や診療報酬明細書などの発行手数料
発行に要した必要かつ妥当な実費
文書料
交通事故証明書や印鑑証明書、住民票などの発行手数料
発行に要した必要かつ妥当な実費
休業損害
事故の傷害で発生した収入の減少
(有給休暇の使用、家事従事者を含む)
原則として1日6,100円
これ以上の収入減の立証で1万9,000円を限度とした実額
慰謝料
交通事故による精神的・肉体的な苦痛に対する補償
1日4,300円
対象日数は被害者の傷害の状態、実治療日数などを勘案して治療期間内で決定

3.後遺障害が残った場合の補償内容

被害者に後遺障害が残った場合、上限(75万円~4,000万円)の中から、次のような損害に対して保険金が支払われます。

支払いの対象となる損害支払基準
逸失利益
身体に残した障害による労働能力の減少で、将来発生するであろう収入減
収入および障害の各等級(第1~14級)に応じた労働能力喪失率、喪失期間などによって算出
慰謝料等
交通事故による精神的・肉体的な苦痛に対する補償
神経系統の機能や精神・胸腹部への著しい障害で、介護を要する傷害が残った場合
第1級で1,650万円、第2級で1,203万円
※被扶養者がいれば増額
上記以外の後遺障害の場合
1,150万円(第1級)~32万円(第14級)
※被扶養者がいれば増額(第1~3級)

なお、慰謝料の金額は等級に応じて定められています。具体的な金額は次の表の通りです。

等級後遺障害慰謝料
1級
※被扶養者あり
1,350万円
(1,850万円)
1級
※被扶養者なし
1,150万円
(1,650万円)
2級
※被扶養者あり
1,168万円
(1,373万円)
2級
※被扶養者なし
998万円
(1,203万円)
3級
※被扶養者あり
1,005万円
3級
※被扶養者なし
861万円
4級737万円
5級618万円
6級512万円
7級419万円
8級331万円
9級249万円
10級190万円
11級136万円
12級94万円
13級57万円
14級32万円
  • ※金額は多くのケースで使用する別表2の金額です。介護を要する後遺障害の場合、カッコの中の金額(別表1)となります。
  • ※この表は2020年4月1日以降に発生した交通事故に適用されます。

4.被害者が死亡した場合の補償内容

被害者が死亡した場合、上限(3,000万円)の中から、次のような損害に対して保険金が支払われます。

支払いの対象となる損害支払基準
葬儀費
通夜、祭壇、火葬、墓石などの費用
(墓地、香典返しなどは除く)
100万円
逸失利益
被害者が死亡しなければ将来得たであろう収入から、本人の生活費を控除したもの
収入および就労可能期間、被扶養者の有無などを考慮して算出
被害者本人の慰謝料400万円
遺族の慰謝料
金額は慰謝料の請求権者(被害者の父母、配偶者及び子ども)の人数により異なる
請求者1名で550万円、2名で650万円、3名以上で750万円
被害者に被扶養者がいる場合、200万円が加算

5.上限を超える損害が生じた場合は弁護士にご相談を

治療が長期間に及んだ、重大な後遺障害が残ったなど、交通事故で大きな被害を受けると、自賠責保険の上限を超える損害が生じることが考えられます。
上限を超える損害が生じた場合、加害者が任意保険に加入していれば、その保険会社に超えた分の支払いを請求します。

もし、保険会社から提示された賠償金額に不満があれば、交渉を通じて増額を求めていきます。
しかし、保険会社は交通事故と交渉のプロなので、自ら交渉して増額を求めても、成功することは不可能に近いでしょう。

この点、交通事故に詳しい弁護士に交渉を依頼すれば、法的に認められる最大限の賠償金を算出して請求するため、増額に成功することが期待できます。

賠償金額で損をしてしまうことがないよう、交通事故の被害に遭ったらまずは弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士 大橋史典
弁護士 大橋史典
この記事を監修した弁護士

弁護士 大橋 史典弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)

獨協大学法学部法律学科卒業 明治大学法科大学院法務研究科 修了(68期)。
弊事務所に入所後、シニアアソシエイトとして活躍。交通事故分野を数多く取り扱い豊富な経験を持つ。

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