死亡事故
家族が交通事故で死亡しました。どのような損害賠償を請求できますか?
ご家族が交通事故で亡くなった場合、残念なことに金銭的な損害賠償の問題となりますが、葬儀関係費や死亡に関する慰謝料、逸失利益を請求することができます。
葬儀関係費
葬儀関係費用には、葬儀費や、法要(四十九日法要など)・供養の費用、仏壇・仏具購入費、墓碑建立費などの種類があります。
単にお葬式の費用のみならず、その後に執り行われる儀式に関する費用なども含みます。具体的には、次の費用項目が葬儀関係費に含まれます。
- 葬儀費用
- 遺体の処理、遺体搬送量
- 火葬費用
- 法要(四十九日忌までの法要など)
- 供養に関する費用(お布施、読経、戒名料など)
- 仏壇・仏具購入費
- 墓石建立費用
なお、以下の費用項目は、葬儀関係費には含まれないことが一般的です。
- 香典返し
- 四十九日忌を超える法要費用
- 弔問客の交通費
香典を受け取っても、葬儀費用の総額から香典分の金額を差し引く必要はありません。
その分、香典返しは損害として認められないと判断されることになります。
死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、被害者が亡くなった、または、家族を亡くした遺族が受ける精神的苦痛を、金銭に換算して支払われる慰謝料です。
死亡慰謝料は、被害者本人分と遺族分に分けられています。
本来は、死亡した被害者本人に支払われるべき慰謝料ですので、被害者本人が慰謝料の請求権を持つことになります。
しかし、被害者は亡くなっているため、自分で請求することはできません。
そのため、被害者本人に代わって、慰謝料の請求権を相続した遺族が請求することになります。
なお、交通事故についての損害賠償請求権は、遺産分割の対象にはなりませんので、注意が必要です。
被害者に配偶者がいる場合は、必ず配偶者が相続人となります。
また、配偶者以外の遺族は、次の順位に従って相続することになります。
- 第1順位:子ども
- 第2順位:親
- 第3順位:兄弟姉妹
被害者に子どもがいる場合には、子どもが相続人となり、子どもがすでに亡くなっているようなときには、孫が相続人となります。
次に、被害者に子どもがいない場合には、被害者の親が相続人となります。
ただし、親が他界していて祖父母がご存命の場合は、祖父母が相続することになります。
そして、子どもがいない場合で、親もすでに他界している場合には、被害者の兄弟姉妹が相続人となります。なお、兄弟姉妹が他界していて、子どもがいる場合には、その子ども(被害者の甥・姪)が相続することになります。
なお、相続人の立場によって、法定相続分が変わってきます。
- 配偶者と子どもの場合 1:1
- 配偶者と直系尊属(親、祖父母など)の場合 2:1
- 配偶者と兄弟姉妹の場合 3:1
たとえば、賠償金の総額が4,500万円であり、亡くなった被害者に配偶者がいて(子どもなし)、被害者の両親がいるケースを考えてみます。
配偶者は、賠償金の総額のうち、2/3を相続しますので、3,000万円を受け取ります。
そして、被害者の両親は、残りの1/3である1,500万円について、各750万円ずつを受け取ることになります。
なお、遺族として死亡慰謝料を請求できるのは、被害者からみた近親者に限られます。近親者とは、被害者の父母(養親も含む)、配偶者、子どもとなります。
ただし、内縁の妻や夫は、近親者と同等な関係性にあると判断された場合は、死亡慰謝料が支払われる場合があります。
死亡逸失利益
被害者が死亡すると、事故に遭わなければ受け取っていたはずの収入が失われてしまいます。
このような、死亡事故による将来的な減収を補償するために支払われる賠償金が、死亡逸失利益です。
そして、死亡逸失利益を請求できるのは、基本的には収入があった人が対象です。
ただし、被害者が専業主婦(主夫)などの家事従事者であった場合も、死亡逸失利益の請求が認められる可能性があります。
実際の収入がなくても、家事労働には経済的価値があると考えられていることから、厚生労働省が毎年まとめている「賃金センサス」を用いて、死亡逸失利益の金額を計算します。
また、事故時に失業中であっても、就職先が決まっていたときや、求職中などの場合は、就労していた可能性(蓋然性)が認められる場合があります。
このように、被害者の職業によって個別具体的な判断が必要になります。
なお、葬儀費用の具体的な金額や、死亡に関する慰謝料、逸失利益の計算方法などの詳しい解説は、下記のQ&Aにまとめておりますので、こちらもあわせてお役立てください。
- この記事を監修した弁護士
弁護士 大橋 史典弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)獨協大学法学部法律学科卒業 明治大学法科大学院法務研究科 修了(68期)。
弊事務所に入所後、シニアアソシエイトとして活躍。交通事故分野を数多く取り扱い豊富な経験を持つ。