【弁護士監修】交通事故に遭った際の保険会社への連絡方法や内容を知りたい!
- この記事を監修した弁護士
- 弁護士 大橋 史典 弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)
0.交通事故に遭うと保険会社への連絡や多くのやり取りが必要
交通事故の被害に遭った場合、自分が加入している保険会社に連絡するだけでなく、加害者が加入している保険会社と多くのやり取りが必要になります。
ケガの症状が辛く、頻繁に通院しなければならないような状況では、保険会社に連絡したり、何度もやり取りしたりするのは大変です。しかし、きちんと対応しなければ、適切な金額の損害賠償金を受け取れない可能性があります。
このコラムでは、交通事故に遭った後、保険会社に連絡する内容や、保険会社とやり取りする際に重要となるポイントなどについて弁護士が解説します。
1.保険会社への連絡とやり取りが必要になる場面
交通事故の被害に遭った場合、加害者が加入している保険会社に慰謝料や休業損害といった損害賠償金を請求できます。
賠償金を受け取るまでには、さまざまな書類の作成と収集を行うだけでなく、保険会社に連絡したり、何度もやり取りしたりする必要があります。主に次のような場面で連絡ややり取りが発生します。
- 事故の発生後
- ケガの治療中
- 治療の終了時
- 保険会社との示談交渉
それぞれの場面について、保険会社に連絡したり、やり取りしたりする際のポイントを解説します。
2.事故に遭ったら加入中の保険会社にすぐ連絡
交通事故に遭った場合、自身が加入している保険会社にできるだけ早く連絡しましょう。
人身傷害保険や車両保険、弁護士費用特約など、保険や特約を利用できる場合があるためです。また、契約内容によってはレッカー車や代車の手配といったサービスを受けられる可能性もあります。
2-1.保険会社に連絡するタイミング
交通事故に遭った場合、次のような対応が必要です。保険会社に連絡するタイミングに決まりはありませんが、これらの対応が終わったらすぐに連絡しましょう。
- 被害者の救護
- 事故車両の安全な場所への移動
- 警察への通報
- 実況見分への立会い
ただし、被害の状況によっては救急搬送されるなど、すぐに連絡できないことも考えられます。このようなケースでは、連絡できるようになったタイミングで早めに連絡しましょう。
2-2.保険会社に連絡する内容
保険会社に連絡する際は、主に次のような点を伝えます。
- 加入している保険の証券番号
- 運転者の氏名、生年月日、連絡先
- 免許証番号
- 保険契約者との関係
- 事故発生の日時、場所、道路状況
- 加害者の氏名、住所、連絡先
- 自分と相手方のナンバープレート番号
- 自分と相手方のケガの有無や車両の損傷状況
3.加害者側の保険会社から連絡が来る
交通事故が発生すると、被害者だけでなく加害者も、自身が加入する保険会社に事故について報告します。
そして、損害賠償金の支払いに向けた今後の対応や手続きの流れなどを説明するため、事故発生の翌日や数日後に保険会社の担当者が被害者に連絡します。すぐに担当者が決まった場合、事故当日に保険会社から連絡が来る場合もあります。
3-1.担当者の氏名や連絡先を確認
保険会社とは事故後だけでなく、示談金が支払われるまで何度もやりとりすることになります。保険会社から連絡が来たら、最初に担当者の氏名や部署名、連絡先などを聞いておくと、その後のやり取りがスムーズになるでしょう。
また、担当者から通院する病院を尋ねられます。病院に行く前であれば、通院する予定の病院を答えましょう。
保険会社からは連絡が入るだけでなく、数多くの書類も送られてきます。必要事項を記入し、返送しなければならない書類もあるので、受け取った書類の内容はきちんと確認しましょう。
3-2.保険会社への報告を拒否する加害者に注意
起こしてしまった事故に保険を利用すると、自動車保険の等級が下がり、保険料が上がってしまう可能性があります。そのため、加害者が保険会社に事故を報告しようとしないケースもあります。
加害者が事故を報告しないと、保険会社から被害者への連絡も行われないので、適切な補償を受けられないことも考えられます。そのため、加害者と会話ができる状態であれば、保険会社に報告するよう伝えておくことが重要です。
その際、加害者が加入する自賠責保険と任意保険の保険会社を確認しておきましょう。口頭で会社名を尋ねるだけでなく、保険証券をスマホで撮影しておくとさらに安心です。
4.治療中は保険会社が治療費を支払ってくれる
治療が始まると、「任意一括対応」というサービスを利用することで、治療費が加害者側の保険会社から病院に支払われます。そのため、一括対応が継続している間、被害者は治療費を負担する必要がありません。
一括対応を利用したい場合、保険会社から送られてくる一括対応や医療照会・医療調査に関する同意書にサインして返送しなければなりません。なお、一括対応を利用したとしても、示談交渉などその後の手続きが不利になり、支払われる損害賠償が減るようなことはありません。
治療費を負担したくない場合は、同意書にサインして返送しましょう。同意書の内容がよくわからず、サインしてよいか不安があれば、弁護士に相談してもよいでしょう。
5.治療費の打ち切りを打診されたら対応に注意
治療の開始から一定期間が過ぎると、保険会社から「そろそろ症状固定です」「治療費の支払いを打ち切ります」といった連絡を受けることがあります。一般的な目安として、打撲は1か月程度、むち打ち(頸椎捻挫)は3か月程度、骨折は6か月程度が経過すると、保険会社から連絡が来ることが多いようです。
5-1.治療を続けたければ支払いの延長を交渉
治療を続けたい場合、治療費の打ち切りを打診されても安易に応じてはいけません。治療を続ける必要があるかどうか、通院先の医師(主治医)に相談することが重要です。
もし、治療を続けるべきと主治医が判断した場合、その旨を説明する意見書を作成してもらい、保険会社に提出しましょう。保険会社が治療費の支払いを延長してくれる場合があります。
もし、意見書を提出しても保険会社が延長してくれない場合は、交通事故に詳しい弁護士に治療費の支払い対応の延長交渉を依頼してもよいでしょう。
5-2.治療費を打ち切られても必要な治療は続ける
一括対応はあくまでも保険会社のサービスなので、法的な義務があるわけではありません。治療費の支払い対応を延長するよう求めたとしても、認められないケースもあります。
しかし、治療費の支払いが打ち切られてしまっても、必要な治療は続けることが重要です。
交通事故によりケガをして治療を受けた場合、加害者側に傷害慰謝料(入通院慰謝料)を請求できます。慰謝料の金額は治療期間に応じて決まるため、必要な治療を受けずに早く切り上げると、慰謝料の金額も低くなってしまいます。
もし、治療を受けても何らかの後遺症が残った場合、後遺障害の等級認定を受けることで、後遺障害の慰謝料と逸失利益も請求できます。ただし、後遺障害の等級認定を受けるには、一般的に6か月以上の治療期間が必要といわれています。
そのため、必要な期間よりも前に治療を止めてしまうと、後遺障害の等級認定を受けられない可能性があるのです。
6.治療後も症状が残れば後遺障害の手続きを進める
治療によりケガが完治すれば、損害賠償金の金額を決めるため、保険会社との示談交渉を進めていきます。何らかの症状が残り、治療を続けても改善しないと医師が判断すれば、後遺障害の等級認定を受けるための手続きを進めます。
後遺障害の等級認定を受けることで、後遺障害が残ったことに対する慰謝料や、交通事故に遭わなければ本来得られるはずだった利益(逸失利益)も加害者側に請求できます。
後遺障害の等級認定を受ける手続きには、加害者側の保険会社に手続きを任せる「事前認定」と、被害者自身で進める「被害者請求」の2種類があります。
6-1.事前認定なら保険会社に手続きを任せられる
後遺障害を申請するには、後遺障害診断書など数多くの書類を集めたり、作成したりするなど、繁雑な手続が必要です。
事前認定なら、後遺障害診断書など最低限の書類を提出するだけで、加害者側の保険会社に手続きを任せられます。次に説明する被害者請求に比べ、被害者にかかる手続きの手間や負担が少ないという大きなメリットがあります。
6-2.保険会社に任せるのが不安なら被害者請求
保険会社によるこれまでの対応に不満があるような場合、手続きを任せることに不安に感じる人もいるでしょう。このようなケースでは、被害者請求により被害者自身で手続きを進めることができます。
しかし、書類を不足なく収集したり、正確に作成したりしないと、認定を受けられない可能性があります。受けられたとしても、症状に対して適切な等級に認定されないなどの不利益が生じることが考えられます。
保険会社に手続きを任せたくないものの、自ら進めることに心配があれば、交通事故に詳しい弁護士に相談してもよいでしょう。
7.保険会社との示談交渉で賠償金の金額を決定する
治療によってケガが完治するか、後遺障害に関する手続きが完了すると、損害賠償金の金額を決めるため、加害者側の保険会社との示談交渉が始まります。
示談交渉の一般的な流れとしては、まず、損害賠償金の金額などが記載された書面が保険会社から届きます。書面の内容をもとに、示談の条件について話し合いを進めます。そして、お互いが条件に合意すると示談が成立します。
示談の成立した後で条件の変更を求めることは非常に困難です。保険会社から書面が届いたら必ず内容をよく確認し、疑問点や不明点があれば、解消されるまで保険会社に質問するようにしましょう。
7-1.過失割合も示談交渉で話し合う
信号待ちの途中に追突されるなど、事故の発生に対して被害者に責任(過失)がゼロの場合もあります。しかし、被害者にも何らかの過失が認められるケースは少なくありません。
被害者にも過失が認められる場合、過失の程度に応じ、損害賠償金の金額が減額される方法で調整されます。過失の程度を数値化したものを「過失割合」と呼び、賠償金の金額を調整することを「過失相殺」と呼びます(民法第722条2項)。
過失割合は、示談交渉の場で加害者側の保険会社から提示されることが一般的です。過失割合の数値によって、損害賠償金の金額も大きく異なってくるため、内容に納得できなければ修正を求めることが重要です。
7-2.保険会社からは低い金額が提示される
保険会社から提示される賠償金額は、自社独自の基準により計算したもので、その金額は、もし仮に裁判をしたならば認められる金額よりも少ないケースが大半です。
提示された金額に納得できない場合も、交渉を通じて保険会社に増額を求めることになります。
8.保険会社とのやり取りは弁護士にお任せ
これまで説明した通り、事故の発生後はさまざまな場面で保険会社に連絡したり、何度もやり取りしたりしなければなりません。また、数多くの必要書類を収集、作成する必要もあります。
保険会社は平日の日中に連絡してくるため、通院している方や、仕事や家事などで忙しい方にとって、手続きを進めるのは大きな負担です。
この点、弁護士に依頼すれば、必要な手続きや保険会社とのやり取りを弁護士に任せられます。手続きとやり取りにかかる負担やストレスから解放されるため、依頼者にとって大きなメリットになるでしょう。
さらに、弁護士に依頼するメリットはこれだけではありません。さまざまな場面で弁護士が被害者をサポートしてくれます。
8-1.適切な通院方法をアドバイスしてくれる
医師の指示通りの頻度で通院しなかったり、勝手に通院を止めたりすると、大きな被害ではないとして、慰謝料などの金額が低額になる可能性があります。また痛みなどの症状が残っていて、治療を続けたいと考えていても、保険会社が治療費の支払いを打ち切ってしまうかもしれません。
医師の指示に従って通院することが重要ですが、弁護士に依頼すれば高額な賠償金を獲得することを念頭に、通院方法に関するアドバイスを受けられます。また、保険会社から治療費の打ち切りを打診されても、治療費の支払い対応の延長交渉を任せられるため、延長が認められる可能性が高くなります。
8-2.過失割合の修正を交渉してくれる
保険会社は、賠償金額を抑えるため、少なくとも被害者が有利になるように過失割合を判断することはありません。保険会社から提示された過失割合に不満がある場合、数値の修正を保険会社に求めることになります。
しかし、数値を修正してもらうには、正しい過失割合を判断し、事故の詳しい状況を説明する証拠を集めたうえで、保険会社と交渉しなければなりません。非常に専門的な知識が求められるため、弁護士に依頼し、正しい過失割合となるよう交渉してもらうことをおすすめします。
8-3.後遺障害の申請手続きをサポートしてくれる
治療後に何らかの後遺障害が残ったとしても、申請すれば必ず後遺障害の等級が認定されるわけではありません。申請書類の内容が不十分だったり、記入漏れなどの不備があったりすると、認定されない場合や、本来より低い等級に認定される可能性があります。
また、医師は必ずしも後遺障害の仕組みに詳しいわけではありません。適切な等級に認定されることを念頭に、後遺障害診断書を作成しないケースもあるのです。
この点、交通事故に詳しい弁護士であれば、診断書の作成からサポートしてくれるため、適切な等級に認定される可能性が高くなります。
8-4.損害賠償金の増額が期待できる
保険会社から提示された損害賠償金の金額に納得できない場合、保険会社に増額を交渉することになります。ただし、保険会社は専門用語を並べながら増額に応じない理由を説明してくるため、対等に話し合いを進めるのは非常に困難です。
また、そもそも相手が弁護士でなければ、交渉に応じてくれないケースも少なくありません。そのため、納得できる賠償金を受け取るには、交通事故に詳しい弁護士に交渉を依頼することをおすすめします。
弁護士であれば法的な視点から正しい賠償金を算出し、その金額まで増額するよう主張してくれるので、提示額よりも増額されることが期待できるのです。
9.交通事故に詳しい弁護士を選ぶことが重要
交通事故について、弁護士であれば誰に相談や依頼をしても同じではありません。
交通事故の相談や依頼に対応するには、法律はもちろん、医療や保険など幅広い知識が求められます。納得できる解決を目指すには、交通事故に関する経験や実績が豊富な弁護士を選び、相談や依頼することが重要です。
交通事故に詳しい弁護士を探すには、さまざまな方法があります。たとえば、法律事務所のホームページに、交通事故に関する解説や解決実績が多く紹介されているかといった点をチェックしてもよいでしょう。
また、弁護士への相談は1人にしかできないわけではありません。複数の弁護士と話をしてみて、交通事故に詳しいか、丁寧に対応してくれそうかどうかなどを確認し、安心して依頼できる弁護士を選ぶことも重要です。
- この記事を監修した弁護士
弁護士 大橋 史典弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)獨協大学法学部法律学科卒業 明治大学法科大学院法務研究科 修了(68期)。
弊事務所に入所後、シニアアソシエイトとして活躍。交通事故分野を数多く取り扱い豊富な経験を持つ。