「疼痛性感覚異常」とは?交通事故とケガの治療に関する用語

やさしい交通事故の用語集

疼痛性感覚異常 [とうつうせいかんかくいじょう]

意味
交通事故などによるケガの治療を受けた後も、受傷部位に痛みやしびれ、腫れなどの症状が残る状態のことです。疼痛性感覚異常が残った場合、後遺障害の等級認定を受けられる可能性があります。
解説

0.疼痛性感覚異常とは

交通事故により骨折などの外傷を負い、手術やギブスの固定といった治療を終えても、痛みやしびれ、皮膚の腫れや変色などのさまざまな症状が残るケースがあります。このような、治療後に何らかの症状が残った場合、疼痛性感覚異常の可能性があります。

疼痛性感覚異常の症状は、医学的にはCRPS(Complex Regional Pain Syndrome)という傷病名で呼ばれることが一般的です。CRPSは、日本語で「複合性局所疼痛症候群」と訳されます。

そして、CRPSの病型は、神経損傷が不明なものの疼痛などの症状があるTypeⅠ型の「反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)」と、明らかな神経損傷が認められるTypeⅡ型の「カウザルギー」の2種類に分類されます。

1.疼痛性感覚異常の症状

疼痛性感覚異常によって生じる症状には、感覚、関節、皮膚の異常など、さまざまな種類があります。たとえば、次のような症状です。

  • 強い灼熱痛や疼痛、痛覚過敏など
  • 患肢など体の腫れ
  • 関節の炎症や拘縮、可動域制限
  • 皮膚色や皮膚温の変化、皮膚の乾燥など

上記以外にも筋肉や骨の委縮、発汗の異常(亢進や低下)、不随意運動(振戦やジストニアなど)といった症状が発現するケースもあります。

これらの症状が引き起こされる原因として、交感神経系の感作などを指摘する見解もありますが、病態生理など具体的な発症原因はいまだに解明されていません。

また、治療により症状が軽減や寛解されることもあれば、症状が改善せず治療が長期に及んだり、症状が進行したりする場合もあり得るため、その心理的苦痛から抑うつや不安症状なども引き起こすこともあります。

2.疼痛性感覚異常による後遺障害の等級

疼痛性感覚異常の症状が残ると、後遺障害の等級認定を受けられる可能性があります。

認定される等級は、症状の程度や部位、症状の持続時間、他覚症状(他覚的所見)の有無など、さまざまな視点から総合的に判断されます。具体的には、次の等級に認定される可能性があります。

等級障害の程度
第7級4号神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
第9級10号神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
第12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
第14級9号局部に神経症状を残すもの

後遺障害の等級認定を受けると、後遺障害慰謝料を加害者側に請求できます。認定される等級によって、慰謝料の金額が次のように異なります。

等級自賠責基準弁護士基準
7級419万円1,000万円
9級249万円690万円
12級94万円290万円
14級32万円110万円
  • ※2020年4月1日以降に発生した交通事故に適用される金額です。

認められる慰謝料の金額は、どの基準で計算するかによって大きな差が生じます。加害者側の任意保険会社からは、被害者に対する最低限度の補償を目的とした自賠責基準と同程度の金額が提案されるケースが大半です。

最も高額な弁護士基準の慰謝料を獲得するには、保険会社と交渉して増額を認めさせる必要があります。弁護士基準への増額を求める場合は自分で交渉するのは困難ですので、弁護士に相談して保険会社との交渉を依頼した方がよいでしょう。

3.疼痛性感覚異常による等級認定は困難

疼痛性感覚異常により、後遺障害の等級認定を受けるのは決して簡単ではありません。これは、次のような事情があるからです。

3-1.発現する症状がさまざまである

疼痛以外にも、皮膚や発汗、関節や骨の異常など、人によって発現する症状はさまざまです。また、症状が発現する時期もその時々により変化する場合もあります。

この点、むち打ち(頸椎捻挫)のような場合、交通事故による受傷から治療の終了まで症状に一貫性や継続性があることが一般的です。実は、この症状の一貫性や継続性は後遺障害の等級認定において重要な判断要素となるため、疼痛性感覚異常による等級認定は難しいという側面があります。

3-2.事故との因果関係の立証が難しい場合がある

また、治療終了後しばらくしてから発症するケースも多いため、後遺障害の等級認定申請を進めても、交通事故との因果関係を立証するのが困難な場合があります。

3-3.事故の程度と相関関係がない

交通事故により、骨折や外傷の残るようなケガの場合、事故の大きさとケガの重さとの間には明確な相関関係が認められます。

しかし、疼痛性感覚異常は軽傷に留まるような事故によっても発症することがあるため、事故の程度との間に明確な相関関係が認められません。そのため、これが後遺障害の等級認定を難しくする一つの要因となっています。

3-4.発症原因が未解明であり、特異的な検査方法がない

前述した通り、疼痛性感覚異常における具体的な発症原因はいまだに解明されておらず、発症それ自体も珍しいため、診断や治療を行う主治医が見落としてしまう可能性があります。

疼痛性感覚異常の検査は、他の傷病にも使われる検査方法を併用しますので、それのみを診断できる特異的な検査方法がありません。たとえば、レントゲン検査により骨に亀裂が見られるとか、MRI画像により神経に圧迫が生じているといったような、傷病名が明確に判明するような検査結果が得られないのです。

そのため、追突事故などによるむち打ちのような後遺障害と比較すると、客観的で特異的な診断基準がなく、また、認定事例や評価基準の蓄積が不十分な状態となっています。

4.疼痛性感覚異常が疑われた場合は

そのため、主治医への相談や専門医の受診により、後遺障害が残らないように治療に専念することが重要です。

それに加えて、交通事故に詳しい弁護士に相談することも重要です。疼痛性感覚異常の症状は、長期間続くこともあるため、加害者の保険会社から治療費が打ち切られてしまうことがあります。

弁護士は、治療費打ち切りへの対応や、後遺障害の等級認定を見据えて、診断や治療の受け方、後遺障害診断書の作成を医師に依頼する際のポイントなど、より上位の等級認定に向けたアドバイスをしてくれます。

また、後遺障害の等級認定を受けられたとしても、加害者側の保険会社が素因減額(そいんげんがく)を主張してくるケースがあります。素因減額とは、被害者が事故前から持っていた身体的・精神的な要因(素因)により、損害が通常の人より拡大している場合、賠償金額が減額されることです。

保険会社が、疼痛性感覚異常の発症は「事故前からの素因が影響している」とか、「治療が長引いたことによる心理的苦痛が影響している」などと主張し、その主張が認められると、本来受け取れるはずの賠償金が減額されてしまいます。

疼痛性感覚異常は、被害者の苦痛や日常生活への負担が大きいため、それに見合うだけの適正な金額の賠償金獲得を目指すべきです。そのためにも、弁護士に対応を任せた方がよいでしょう。

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