弁護士費用特約と弁護士保険の違いや補償の対象などを詳しく解説

解決!交通事故の弁護士コラム

【弁護士監修】「弁護士費用特約」と「弁護士保険」は何が違う?補償の対象を解説

弁護士費用特約
弁護士 大橋史典
この記事を監修した弁護士
弁護士 大橋 史典 弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)

0.弁護士費用特約と弁護士保険とは?

交通事故の被害に遭い、弁護士に相談や依頼をしたいと考えても、弁護士費用の負担が心配な方もいるでしょう。
そのような方にとって、自動車保険や火災保険などに付帯する「弁護士費用特約」や、新しい保険商品である「弁護士保険」はとても強い味方になってくれます。

どちらも、弁護士費用を保険会社が支払ってくれる便利な仕組みですが、それぞれどのような違いや特徴があるのでしょうか?

このコラムでは、弁護士費用特約と弁護士保険について、分かりやすく解説しています。
弁護士費用の支払いが不安で、弁護士への相談や依頼をためらっている方はぜひ最後までお読みください。

1.交通事故を弁護士に依頼するメリット

交通事故の被害について弁護士に依頼すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
交通事故の発生直後から、加害者側との示談成立の前まで、さまざまな場面で依頼するメリットがありますが、ここでは代表的な2つのポイントを紹介します。

1-1.賠償金の増額が期待できる

交通事故の被害に遭うと、加害者側の保険会社から損害賠償金が提示されます。
しかし、提示される金額は、自社の支払基準により算出したもので、法的に認められる損害賠償金よりも低いケースが大半です。

法的に認められる金額まで引き上げる場合は、保険会社と交渉することになりますが、支払額を抑えたい保険会社は様々な理由から増額を拒否するでしょう。
この点、交通事故に詳しい弁護士に示談交渉を依頼することで、増額できる可能性が高くなります。

また、損害額が少ない場合、弁護士に依頼しても、得られた利益より弁護士費用の方が高額な「費用倒れ」が発生することも考えられます。

しかし、弁護士費用特約や弁護士保険を利用すれば、保険から弁護士費用が支払われるので、費用倒れが発生しないのが原則です。
そのため、増額できた場合も含めて、得られた利益をすべて受け取ることができるのです。

1-2.保険会社とのやり取りや手続きなどを任せられる

交通事故に遭うと、賠償金を受け取るまでに、多くの資料や証拠を集めて提出するなど、煩雑な手続が必要です。
しかし、ケガの治療のための通院や後遺障害の症状などで辛い状況だと、自分で手続きを進めるのは非常に大変です。

また、保険会社とのさまざまなやり取りも必要ですが、連絡は平日の日中にくることが多いため、仕事や家事、育児などで忙しい方には煩わしいものです。
弁護士に依頼すれば、保険会社とのやり取りや手続きを任せられるので、被害者にとって大きなメリットといえるでしょう。

2.相談・依頼するときにどんな費用が必要?

弁護士に依頼すると様々なメリットがありますが、相談や依頼をすることで、どのような費用が必要になるのでしょうか。

2-1.相談料

弁護士に法律相談する際に発生する費用です。
30分ごとに5,000円+消費税など、時間あたりで費用が設定されていることが一般的です。

また、初回の相談は30分や60分まで無料としている法律事務所も少なくありません。

2-2.着手金

弁護士に依頼するタイミングで発生する費用です。
弁護士が依頼内容に取りかかるために必要な費用なので、依頼した結果が希望する通りの内容になったかどうかにかかわらず、支払うことになります。

相手方に請求する金額に応じて着手金が設定されていることが一般的で、相場としては10万円から数十万円になるケースが多いです。
死亡事故のように、請求額が高額になる事件では、着手金が100万円を超える可能性もあります。

2-3.報酬金

事件が終了した際に発生する費用です。
金額は成功の程度に応じて設定されることが多いです。

具体的には、弁護士への依頼によって獲得できた金額(「経済的利益」と呼びます)に対し、「経済的利益の〇〇%+〇〇万円」などと設定されることが多いです。
なお、報酬金の対象について、獲得できた賠償金額の全体とするのか、弁護士の依頼によって増額できた金額(経済的利益)とするのかについて、依頼前に確認しておくとよいでしょう。

たとえば、加害者側の保険会社から損害賠償金として50万円が提示されていたものの、弁護士に依頼したことで150万円まで増額できたケースで考えてみます。
このケースにおいて、報酬金が賠償金額全体の150万円に対して発生するのと、増額できた100万円分に対して発生するのとでは、報酬金の金額が大きく異なります。

弁護士の依頼時に想定していなかったトラブルが発生することがないよう、必ず事前に確認するようにしましょう。

2-4.実費・日当

事案の内容に応じて、実費や日当が発生する場合があります。

実費は、弁護士の交通費や書類の郵送代、診断書の発行手数料、訴訟の提起時に裁判所へ支払う収入印紙代など、さまざまな費用が該当します。
実際に費用が発生した場合に、その金額を支払うことになります。

日当は、弁護士が裁判所に出廷する場合など、事務所から移動する際に発生する費用です。
金額は1日の拘束時間に応じ、数万円などと設定されていることが一般的です。

3.弁護士費用特約の特徴と注意点

そもそも弁護士費用特約は、自動車保険や火災保険などに付帯できる特約の一種です。
弁護士費用特約を付けていると、相談料や着手金、報酬金といった弁護士費用が保険から支払われます。

自動車やバイクを運転する方の多くが加入しており、データを公開している保険会社によると、自動車保険における弁護士費用特約の加入率は約60%もあります。

弁護士費用特約の加入率を示すグラフ。加入率は約60%

3-1.補償対象者の広さが特徴

弁護士費用が補償される対象者(被保険者)は、保険に加入している本人はもちろん、次に当てはまる人も含まれます。

  • 本人の配偶者
  • 本人と同居している親族
  • 本人と別居している未婚の子
  • 契約自動車に搭乗中の人
  • 契約自動車の所有者

また、複数の自動車などを所有している場合、そのうち1台でも弁護士費用特約を付けていれば、対象者は特約を利用できます。
ただし、別居している親や兄弟などは補償の対象外となります。

この点、弁護士保険は基本的に被保険者のみが補償の対象で、家族は対象外としているケースが多いので、補償対象者の広さは弁護士費用特約ならではの特徴といえるでしょう。
なお、弁護士保険によっては、家族を補償対象に追加できる特約を用意している場合があります。

3-2.利用できない事故に注意

自動車保険に付帯する弁護士費用特約は、基本的に、被害者または加害者が自動車などに乗っている事故を補償対象としています。
つまり、自動車同士はもちろん、自動車と歩行者、自動車と自転車などの事故でも、特約を利用できます。

しかし、自動車による事故でも、次のようなケースでは補償の対象外となる可能性があるので注意が必要です。

  • 故意または重大な過失があった
  • 無免許や酒気帯び、薬物などを使用した状態で運転していた
  • 台風や洪水、地震などにより事故が発生した
  • 事故の加害者が配偶者や親、子どもだった
  • 事業用の自動車による事故(保険会社によっては補償対象)

また、自転車同士や自転車と歩行者など、被害者と加害者のどちらとも自動車に乗っていない事故は補償の対象外です。
この点、自動車とは無関係な自転車事故を補償対象とする特約を用意した自転車保険も販売されています。

4.弁護士保険の特徴と注意点

弁護士保険は弁護士費用特約と同様に、相談料や着手金といった弁護士費用が保険から支払われる保険です。保険会社によっては「弁護士費用保険」とも呼ばれます。
ただし、弁護士費用特約のように自動車保険の特約として付帯するのではなく、生命保険や自動車保険などのように、単独の保険(主契約)として加入します。

4-1.さまざまなトラブルで利用できる

弁護士保険はさまざまな分野のトラブルについて弁護士に相談、依頼する際に利用できることが大きな特徴です。

交通事故はもちろん、男女・離婚問題や労働トラブル、相続、金銭トラブルなど、さまざまな分野について対象としています。

また、弁護士費用特約は、自分の故意や重大な過失によって起きた交通事故などを補償の対象外としていますが、弁護士保険では、交通事故の加害者となった場合も補償されます。

さらに、保険会社によっては、従業員や取引先とのトラブル、不当なクレーム、著作権侵害といった問題をカバーするような、法人/個人事業主向けの弁護士保険も販売しています。

なお、借金問題の債務整理や刑事弁護(刑事事件で加害者になる場合)などは、保険の対象外であることが一般的ですので、契約前に補償対象の分野を必ず確認しましょう。

4-2.弁護士費用特約に比べ保険料が高額

弁護士保険は弁護士費用特約に比べると、保険料が高額になるケースが多い点に注意が必要です。

弁護士費用特約の保険料は月額で数百円ほど、年間にして5,000円未満としている保険会社が大半です。
一方、弁護士保険は月額の保険料が数千円となるので、弁護士費用特約を付帯するよりも出費が大きくなります。

5.弁護士費用特約と弁護士保険の比較

それぞれの特徴や注意点などから、弁護士費用特約と弁護士保険を比較すると、次のように整理できます。

弁護士費用特約弁護士保険
補償範囲交通事故など補償範囲が限定的さまざまなトラブルで利用可能
補償対象者非常に幅広い原則的に契約者本人
月額保険料数百円ほど数千円ほど

弁護士費用特約は補償範囲が限定されている分、保険料を抑えることができますが、弁護士保険は幅広い分野で利用できるものの、保険料が特約よりも高額になります。
自動車事故以外のトラブルにも不安がある、保険料の負担を抑えたいなど、悩みや希望に応じて加入を選択するのがよいでしょう。

なお、交通事故だけでなく、日常生活のさまざまな事故を補償する弁護士費用特約を付帯できる保険もあるので、補償内容を確認することをおすすめします。

最後に、弁護士費用特約と弁護士保険に共通する注意点を把握しておきましょう。

5-1.補償金額に上限がある

弁護士費用特約は、弁護士費用を際限なく補償してくれるわけではなく、一定の上限が設けられていることが一般的です。
保険会社によって異なる場合がりますが、弁護士への相談費用は10万円、着手金や報酬金などは300万円を上限としているケースがほとんどです。

もし、上限を超える弁護士費用が発生した場合、法律事務所によっては超えた分の金額を請求することがありますので、その場合は自分で支払う必要があります。
たとえば、着手金と報酬金の上限が300万円で、400万円の費用が発生した場合、上限を超えた100万円を支払うことになります。

弁護士保険も、弁護士費用特約と同様に一定の上限が設けられています。
保険会社や保険プランなどによって上限額が異なりますので、事前に確認しておきましょう。

5-2.加入前の事故は補償対象外

弁護士費用特約と弁護士保険における交通事故は、どちらも加入後に発生した事故を対象としています。
事故が起きてから加入しても弁護士費用は補償されませんので注意しましょう。

なお、弁護士保険は、交通事故のような偶発的な事故以外のトラブルについて、契約後も3か月や1年間といった一定期間は補償されないことがあります。
これを待期期間不担保期間と呼びます。

たとえば、離婚問題や相続問題、労働トラブルなどは、一定期間が過ぎるまで補償の対象外となります。

6.特約や保険への加入を検討しましょう

交通事故後の対応について弁護士に依頼することには、さまざまなメリットがありますが、相談や依頼をする際には弁護士費用が発生します。
交通事故に不安があるものの、弁護士費用の負担が気になる方は、弁護士費用特約や弁護士保険の特徴を理解したうえで、ぜひ加入を検討してください。

加入していれば、費用を気にせず事故直後から弁護士に依頼できるので、必要な手続きや保険会社とのやり取りをすべて弁護士に任せられます。
また、示談金の金額で損をすることがないよう最後までサポートを受けられますし、損害額が少なくても費用倒れを心配する必要がありません。

弁護士法人プロテクトスタンスでは、弁護士費用特約や弁護士保険に対応しています。
加入している方はもちろんのこと、未加入の方からのご相談やご依頼にも対応しております。

弊事務所では、お悩みやご希望をじっくりとお話しいただけるよう、交通事故に関する相談料が無料で、着手金も無料です。
弁護士に依頼する際の初期費用が不要で、安心の成功報酬制を導入しております。

弁護士に依頼することでどの程度の金銭的メリットがあるか、ご相談時にシミュレーションし、その結果を踏まえて依頼するか決めることも可能なので、まずはお気軽にご連絡ください。

弁護士法人プロテクトスタンスの交通事故に関する弁護士費用は、以下のページで詳しく説明していますので、ご覧ください。

弁護士 大橋史典
弁護士 大橋史典
この記事を監修した弁護士

弁護士 大橋 史典弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)

獨協大学法学部法律学科卒業 明治大学法科大学院法務研究科 修了(68期)。
弊事務所に入所後、シニアアソシエイトとして活躍。交通事故分野を数多く取り扱い豊富な経験を持つ。

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