経済的全損と言われて修理費用が認められない場合の対処方法を解説

解決!交通事故の弁護士コラム

【弁護士監修】車の修理費が認められない?経済的全損とされた場合の対処方法

修理費用
弁護士 大橋史典
この記事を監修した弁護士
弁護士 大橋 史典 弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)

0.保険会社から言われた「経済的全損」って何?

交通事故で大きく破損した車両を修理しようとしても、保険会社から「経済的全損」と言われ、修理費用の全額が認められないことがあります。

経済的全損とは、事故当時の車両の時価額よりも修理費用の方が高額になる状態のことです。

なぜ、経済的全損になると修理費用の全額が認めらないのでしょうか?
また、保険会社から経済的全損と言われたらどのように対処すればいいのでしょうか?

このような疑問について、弁護士が分かりやすく解説します。

1.修理費が認められない「全損」には2種類ある

交通事故により自動車やバイクといった車両が破損した場合、修理費用を損害として加害者に請求することができます。

ただし、車両が「全損」になってしまうと、修理費用を請求しても全額が認められません。
認められるのは、車両の時価額と買い替え時にかかる諸費用までです。

全損というと、車両が大破して完全に壊れてしまった状態をイメージするかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
全損には、次の2種類があります。

物理的全損 : 車両の損傷が激しく修理不可能な状態

経済的全損 : 修理費用が車両の時価額と買い替え費用の合計を上回る状態

物理的全損は、修理不可能なほどに大破した状態なので、修理費用が認められないのは当然と考えられるかもしれません。

その一方で、経済的全損は、修理費用が時価額などよりも高額ですが、まだ修理可能な状態です。
それではなぜ、経済的全損では修理費用の全額が認められないのでしょうか?

2.修理費用が認められないのはなぜ?

不法行為により何らかの損害を受けた場合、被害者は加害者に対して損害賠償を請求することができます。
ただし、賠償が認められるのは、あくまでも発生した損害の範囲であり、損害を超える賠償は基本的に認められせん。

交通事故により車両などが経済的全損となったケースでは、車両の時価額よりも修理費用の方が高額なので、加害者が時価額などを支払えば、十分に損害を賠償したと考えられるのです。
そのため、経済的全損になった場合は、修理費用の全額を請求しても、時価額と買い替えの諸費用までしか認められないのです。

経済的全損の場合、車両の時価額を超える修理費用は支払われない

3.時価額の確認方法と認められる諸費用

経済的全損になった場合、事故当時の車両の時価額と、車両を買い替える場合に必要な諸費用を請求することになります。
それでは次に、時価額の確認方法と、請求が認められる主な諸費用について説明します。

3-1.車両の時価額の確認方法

車両の時価額を確認する方法として、有限会社オートガイドが発行する「自動車価格月報」(いわゆる「レッドブック」)という冊子が参考になります。
レッドブックには、中古車の買取価格や卸売価格、小売価格などが、車種や型式ごとに記載されています。そして、時価額は小売価格を参照します。

しかし、レッドブックに記載されている小売価格は、実際に中古車市場で取引されている価格よりも低額であるケースが少なくありません。
また、年式が古い車両だとレッドブックに記載されず、保険会社から新車価格の10%ほどが時価額として提示されることもあります。

そのため、より高い金額で時価額を評価するためには、中古車販売サイトやオークションサイトなどから、車種や年式、型式、車両の状態、走行距離などが近い車両を探し、価格を参考にしなければなりません。

3-2.どのような諸費用が認められる?

加害者側には、車両の時価額に加えて、買い替えの際に発生する諸費用も請求できます。具体的には以下のような費用が対象です。

  • 登録手数料
  • 車庫証明の費用
  • 廃車手数料
  • ディーラーに支払う手数料
  • ナンバープレートの取得費用
  • 自動車取得税
  • 自動車重量税
  • 消費税

4.時価額と諸費用以外に認められる費用

車両が経済的全損になった場合、請求できるのは時価額と買い替えの諸費用だけではありません。
次に、請求が認められる主な費用を紹介します。

4-1.代車費用

車両を修理したり買い替えたりすることになった場合、修理や買い替えが終わるまでの間にレンタカーを使う必要があれば、代車費用を請求できます。

ただし、代車費用の請求は自由に認められるわけではありません。
代車を使う必要性が認められるケースにおいて、修理や買い替えに必要な期間の範囲に限られます。

4-2.休車損害

事故で破損した車両が、タクシーやバスといった営業車両の場合、事故が原因で得られなかった利益を休車損害として請求できます。
その請求額は、事故で破損した車両で得ていた収入の額、修理や買い替えが終わるまでにかかった日数などを踏まえて算出します。

4-3.レッカー代

破損の状況によっては、自走が困難になることもあり得ます。
もし、自走できない車両を移動させるためにレッカー車が必要であれば、レッカー代を請求できる場合があります。

4-4.積荷・所持品などの損害

車両だけでなく、トラックに積まれていた荷物や、車内にあったパソコンやスマートフォン、身に付けていた衣類や靴、メガネなどが破損する場合もあります。
このような積荷や所持品などが壊れたら、修理費用や事故当時の評価額を損害として請求できます。

5.保険会社から経済的全損と言われたら?

それでは、保険会社から「車両は経済的全損だ」と言われたら、どのように対処すればいいのでしょうか?

5-1.適切な金額を算出して増額を求める

保険会社は少しでも支払額を抑えるため、車両の時価額を、中古車市場での実際の販売価格よりも低く提示してくるケースが少なくありません。

提示額が少ないと感じたら、中古車市場での販売価格や買い替えにかかる諸費用を精査しましょう。
その結果、実際の販売価格や諸費用よりも低い金額が提示されていることが分かれば、保険会社に対して増額交渉することになります。

5-2.一部を自己負担して修理してもよい

経済的全損は、修理費用が時価額などを上回っている状態なので、修理すること自体は可能です。

思い入れが深い車両などで、どうしても修理したい場合、保険会社から賠償金を受け取り、修理費用との差額は自己負担することで、車両を修理してもよいでしょう。

また、被害者が加入している「車両保険」や、加害者が付けている「対物超過特約」といった特約を利用することで、修理費用が補償される可能性があります。
保険や特約の加入状況、それぞれの補償内容などをよく調べ、補償を受けられるかどうかを確認してもよいでしょう。

6.保険会社との交渉は弁護士にご相談を

保険会社から提示された時価額などに不満がある場合、自分で増額を交渉することも可能ですが、保険会社は交通事故や交渉の知識と経験が豊富な専門家です。
自分で交渉しても増額に成功する可能性は非常に低いため、ほぼ間違いなく、交通事故に詳しい弁護士の助けが必要となります。

しかし、弁護士に依頼したくても、弁護士費用を負担することに不安を感じる方もいるでしょう。
確かに、保険会社と争っている金額が少ないケースなどでは、得られた利益より弁護士費用の方が高いために損をしてしまう費用倒れが発生する可能性があります。

費用倒れが心配な方は、加入中の保険に「弁護士費用特約」が付いていないか確認してください。
弁護士費用特約が付いていれば、弁護士費用が保険から支払われるため、費用倒れを心配することなく弁護士に依頼することが可能です。

弁護士費用特約は、自動車保険ではなく火災保険などに付帯している場合もあれば、自分が加入していなくても家族の特約を利用できる場合もあります。
特約を利用できることを見落とすことがないよう、注意して確認するようにしましょう。

弁護士費用特約を付帯していない場合も、弁護士法人プロテクトスタンスでは、弁護士に依頼する金銭的メリットがあるかどうかをシミュレーションすることができます。
どうぞお気軽に、無料相談をご利用ください。

弁護士 大橋史典
弁護士 大橋史典
この記事を監修した弁護士

弁護士 大橋 史典弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)

獨協大学法学部法律学科卒業 明治大学法科大学院法務研究科 修了(68期)。
弊事務所に入所後、シニアアソシエイトとして活躍。交通事故分野を数多く取り扱い豊富な経験を持つ。

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