【弁護士監修】違反点数は何点?交通事故と運転免許の点数制度を詳しく解説!
- この記事を監修した弁護士
- 弁護士 大橋 史典 弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)
0.運転免許には点数制度が導入されている
運転免許に点数制度があることは知っていても、その内容を詳しく理解していない方もいるでしょう。
簡単に説明すると、自動車などの運転手による交通事故や交通違反について、事故の態様や違反内容などにもとづいて違反点数が加算される制度です。
点数が一定基準を超えると、免許の停止や取消しといったペナルティを受けることになります。
点数制度は、交通事故や交通違反を繰り返す危険な運転者を排除することで事故を防止し、道路の安全を確保するとともに、安全運転を行うよう運転者に奨励することなどを目的とした大切な制度です。
今回のコラムでは、交通事故に対する運転免許の点数制度について、弁護士が詳しく解説します。
1.点数制度の仕組み
交通事故を起こした場合や交通違反をしてしまった場合、事故の態様や違反の内容などにもとづいて設定された違反点数が加算されます。
過去3年間の合計点数(累積点数)が一定程度を超えると、運転免許の停止や取消しといった処分を受けることになります。
2.どのような違反行為に点数が付く?
違反点数には、それぞれの違反行為に設定された「基礎点数」と、人を死傷させたり、建造物を損壊したりした場合、基礎点数に上乗せされる「付加点数」の2種類があります。
2-1.基礎点数とは
基礎点数とは、酒気帯び運転や信号無視、速度違反など、さまざまな違反行為に設定された点数です。
基礎点数の違反行為は、特に悪質・危険な「特定違反行為」(35点~62点)と、そのほかの「一般違反行為」(1点~25点)に分けられます。
主な一般違反行為の一例と基礎点数は、次の通りです。
一般違反行為 | 点数 |
---|---|
酒気帯び運転(0.25mg以上/呼気1リットル) | 25 |
酒気帯び運転(0.25mg未満/呼気1リットル) | 13 |
過労運転等 | 25 |
無車検・無保険運行 | 6 |
横断歩行者等妨害等 | 2 |
信号無視 | 2 |
通行禁止違反 | 2 |
速度違反50㎞以上 | 12 |
速度違反30㎞(高速40㎞)以上50㎞未満 | 6 |
速度違反25㎞以上30㎞(高速40㎞)未満 | 3 |
速度違反20㎞以上25㎞未満 | 2 |
速度違反20㎞未満 | 1 |
特定違反行為の内容と基礎点数は次の通りです。
特定違反行為 | 点数 |
---|---|
運転殺人等 | 62 |
運転傷害等 | 45~55 |
危険運転致死 | 62 |
危険運転致傷 | 45~55 |
酒酔い運転 | 35 |
麻薬等運転 | 35 |
妨害運転(著しい交通の危険) | 35 |
救護義務違反 | 35 |
2-2.付加点数とは
交通事故により、被害者が死傷した場合や建造物を損壊した場合は、先ほどの基礎点数に「付加点数」が加算されます。
付加点数は、被害の程度や違反者の不注意の有無などにより、次のように決められています。
なお、下記以外にも、当て逃げをした場合は5点の付加点数が加算されます。
被害の程度 (被害者の治療期間) | もっぱら違反者の 不注意による事故 | その他の事故 |
---|---|---|
死亡事故 | 20 | 13 |
3か月以上または後遺障害 | 13 | 9 |
30日以上3か月未満 | 9 | 6 |
30日未満15日以上 | 6 | 4 |
15日未満または建造物の損壊 | 3 | 2 |
3.一定期間の無事故・無違反で違反点数がリセット
違反点数は、1年にわたって無事故・無違反だと、0点にリセットされます。
また、2年以上にわたり無事故・無違反だった場合、3点以下の違反をしても、その後3か月間、無事故・無違反であれば点数がリセットされます。
4.運転免許が停止・取消しになる点数
過去3年間で加算された違反点数が一定数を超えると、免許停止の処分を受け、点数に応じて30日~180日間、運転ができなくなります。
また、より多くの違反点数が加算された場合は、免許が取消されます。
停止と取消しの違いは次の通りです。
免許停止処分
停止期間が終われば、再び運転することができます。
免許取消処分
一定の欠格期間の経過後、改めて免許を取得しなければ、再び運転することはできません。
免許の停止や取消しとなる点数、停止期間や欠格期間の長さは、過去3年間に停止や取消しなどの行政処分を受けたこと(前歴)があるかどうかで変わります。
前歴がある場合、前歴がない人に比べ、より低い点数で停止や取消しの処分を受け、期間も長くなるのです。
4-1.免許停止になる点数と期間
免許が停止される点数と期間は次の通りです。
4-2.免許取消しになる点数と期間
免許が取消しになる点数と欠格期間は、一般違反行為によって取消された場合と、特定違反行為によって取消された場合で異なります。
また、免許取消歴保有者に該当する人は、欠格期間がより長くなります。
免許取消歴保有者とは、過去に違反行為、重大違反唆し(そそのかし)等または道路外致死傷を理由に免許の取消し、拒否、事後取消しまたは6か月を超える期間の自動車などの運転禁止を受けた人のことです。
一般違反行為による免許取消しの点数と欠格期間は次の通りです。
特定違反行為による免許取消しの点数と欠格期間は次の通りです。
5.事故や違反により反則金の支払いも発生する
反則金は、交通事故や交通違反に対して、支払わなければならない違反金の1つです。
交通事故を起こすと、違反点数が加算されるだけでなく、違反内容に応じた反則金も支払うことになります。
主な違反行為に対する反則金の金額は次の通りです。
類似の違反金として「罰金」がありますが、罰金が刑事罰なのに対し、反則金は行政処分なので、支払っても前科は付きません。
反則金は「交通違反通告制度」にもとづく処分であり、比較的軽微な交通違反に適用されます。
そして、反則金を納付することで、刑事処分を受けずに事件が処理されます。
しかし、人を死傷させるなど、重大な事故の場合は反則金を支払うのではなく、刑事処分の対象になるケースがあります。
また、反則金を支払わないケースでも、刑事処分になる可能性があります。
6.交通事故の加害者になったら弁護士に相談
交通事故の加害者は、違反点数が加算されて免許の停止や取消しといった処分を受けるだけでなく、被害者に損害が生じた場合は賠償責任を負います。
加害者が任意保険に加入している場合、被害者との示談交渉や損害賠償金の支払いなどは、保険会社が対応してくれます。
もし、任意保険に未加入であれば、加害者自身で被害者と示談交渉する必要がありますが、加害者への怒りや悲しみで、被害者が交渉に応じないかもしれません。
交渉に応じてもらえた場合も、不当に高額な示談金を請求され、示談が成立しない可能性があります。
この点、弁護士に被害者との示談交渉を依頼すれば、弁護士が加害者に代わって交渉するので、被害者と冷静に話し合いを進められます。
また、弁護士は法律と交渉の専門家なので、適切な金額による示談成立が期待できます。
さらに、人身事故の場合は、交通事故が刑事事件として扱われる可能性があります。
刑事事件になると、逮捕されて長期間にわたって身柄を拘束されたり、裁判で有罪になれば、懲役や罰金などの刑罰を受けたりするおそれがあります。
刑事事件になった場合も、弁護士に被害者との示談交渉を依頼することが重要です。
加害者が任意保険に加入していても、保険会社はあくまでも民事上の責任として、被害者に発生した損害の賠償を目的に交渉を行います。
一方で弁護士は、加害者が反省していることを伝え、被害者から許し(宥恕:ゆうじょ)を得るために示談交渉を進めます。
示談成立後は検察官や裁判官に対し、被害者の許しを得て示談が成立したことを主張するので、不起訴処分の獲得や、裁判になっても執行猶予など刑罰の減軽が期待できるのです。
- この記事を監修した弁護士
弁護士 大橋 史典弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)獨協大学法学部法律学科卒業 明治大学法科大学院法務研究科 修了(68期)。
弊事務所に入所後、シニアアソシエイトとして活躍。交通事故分野を数多く取り扱い豊富な経験を持つ。