【弁護士監修】知らないと損する弁護士費用特約とは?交通事故後の強い味方
- この記事を監修した弁護士
- 弁護士 大橋 史典 弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)
0.弁護士費用特約とは?
自動車保険や火災保険などの保険には、さまざまな特約を付帯することができますが、弁護士費用特約もその一種です。
弁護士費用特約は、弁護士への相談や依頼時などに発生する相談料や着手金といった弁護士費用が保険から支払われる特約です。
交通事故の被害について弁護士に相談や依頼をしたいと思っても、弁護士費用の負担が不安な方もいるでしょう。
この点、弁護士費用特約は、弁護士費用の負担を気にせず弁護士への相談や依頼ができるので、交通事故の被害者にとって強い味方になるのです。
実際、多くの方が弁護士費用特約に加入しており、データを公開している保険会社によると、自動車保険における特約の加入率は約60%です。
つまり、自動車やバイクを運転する半数以上の方が、特約を付けていることになります。
このコラムでは、弁護士費用特約を利用するメリットや、利用する流れなどを詳しく解説しますので、特約に未加入の方はぜひお読みください。
なお、弁護士費用特約という名前以外にも「弁護士費用等担保特約」や「弁護士費用補償特約」など、各保険会社によって名称が異なる場合もあります。
1.弁護士費用特約を利用するメリット
弁護士に相談や依頼をすると、次のような弁護士費用が発生します。
費用 | 費用が発生するタイミング |
---|---|
相談料 | 弁護士への相談時 |
着手金 | 事件の依頼時 |
報酬金 | 依頼の終了時 |
実費 | 書類の取得費用や裁判所への交通費といった費用の発生時 |
弁護士費用特約を付けていると、これらの費用が保険から支払われます。
つまり、原則的にこれらの弁護士費用を負担せず、弁護士に相談や依頼できるようになる点が、特約を利用する最大のメリットです。
それでは、交通事故について弁護士に依頼することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
1-1.賠償金の増額が期待できる
交通事故の被害に遭うと、加害者側の保険会社から損害賠償金が提示されます。
しかし、この金額は自社の支払基準を用いて損害賠償金を算出したもので、法的に認められる損害賠償金よりも低い金額を提示するケースが大半です。
この点、弁護士に示談交渉を依頼すると、法的に認められる金額まで、賠償金を増額できる可能性が高くなります。
また、損害額が少ない場合、弁護士に依頼しても、得られた利益より弁護士費用の方が高額な「費用倒れ」の状態になってしまう可能性もゼロではありません。
しかし、弁護士費用特約を利用すると保険から弁護士費用が支払われるので、費用倒れは発生せず、増額できた場合も含め、得られた利益をすべて受け取ることができます。
さらに、示談代行サービスを用意している保険会社もありますが、停車中に追突されたなど、自分に過失が全くない事故の場合、サービスを利用できません。
このようなケースでは、自分で相手方と示談交渉しなければなりませんが、保険会社と対等に渡り合うのは非常に難しいため、弁護士への依頼をおすすめします。
1-2.保険会社とのやり取りや手続きなどを任せられる
交通事故に遭うと、賠償金を受け取るまでには、保険会社とさまざまなやり取りをしたり、多くの資料を集めて提出したりするなど、繁雑な手続が必要です。
保険会社からの連絡は平日の日中にくることが多いため、仕事や家事、育児などで忙しい方には煩わしく感じるでしょう。
また、通院や後遺障害の症状などで辛い状況だと、自分で手続きを進めるのは非常に大変です。
弁護士に依頼すれば、保険会社とのやり取りや煩雑な手続きを任せられるので、この点も大きなメリットといえるでしょう。
2.弁護士費用特約の補償対象者
弁護士費用の補償の対象者(被保険者)は、保険に加入している本人だけではありません。次に当てはまる人も含まれます。
- 本人の配偶者
- 本人と同居している親族
- 本人と別居している未婚の子
- 契約自動車に搭乗中の人
- 契約自動車の所有者
また、複数の自動車などを所有している場合、そのうち1台に特約を付けていれば、対象者は特約を利用できます。
しかし、別居している親や兄弟は補償の対象外です。
このように、弁護士費用特約を利用できる人の範囲は非常に広いため、家族の特約が使えることを見過ごされているケースがあります。
特約の利用や加入を検討する際は、家族の保険に付いていないか確認しましょう。
3.弁護士費用特約を利用できる事故のケース
基本的に、被害者または加害者が自動車などに乗っている事故が補償の対象です。
自動車同士はもちろん、自動車と歩行者、自動車と自転車などの事故でも、弁護士費用特約を利用できます。
しかし、自転車同士や自転車と歩行者など、自動車と無関係な事故は補償の対象外です。
なお、自動車と無関係な自転車事故も補償対象にした弁護士費用特約を付けられる自転車保険も販売されています。
通勤で使用しているなど、自転車に乗る機会が多い方は特約への加入を検討してもよいでしょう。
4.弁護士費用特約を利用する場合の注意点
さまざまなメリットがある弁護士費用特約ですが、次のような注意点もあります。
4-1.保険料が高くなる
弁護士費用特約に加入すると、保険料が別途かかります。
しかし、保険料は年間にして数千円ほどで、5,000円未満としている保険会社がほとんどです。
弁護士に依頼すれば交通事故の賠償金の増額が期待できることを考えると、加入するメリットの方が大きいといえるでしょう。
なお、弁護士費用特約は、事故発生後に加入しても利用できないので、加入するかどうかは早めに検討することをおすすめします。
4-2.補償金額に上限がある
弁護士費用特約は、際限なく弁護士費用を補償してくれるわけではなく、一定の上限が設けられていることが一般的です。
各保険会社により異なりますが、弁護士への相談費用は10万円、着手金や報酬金などは300万円まで補償されるケースが大半です。
上限を超える弁護士費用が発生した場合、超えた分の金額は支払う必要があります。
たとえば、着手金と報酬金の上限が300万円で、350万円の費用が発生した場合、差し引き50万円を支払うことになります。
しかし、相談料の上限が10万円の場合、相談料が30分5,000円に設定されている法律事務所では、10時間の相談が可能です。
相談は長くても1~2時間程度ほどで終わるケースが多いので、相談料の上限を超えることはまずありません。
また、着手金や報酬金の合計額が上限を超えるような場合は、被害者が重篤な後遺症が残るような重傷を負うか亡くなるなどして、高額な賠償金が発生した場合に限られます。
そして、このような場合でも、上限を超えた分は獲得できた賠償金の中から差し引く方法で支払うことが大半なので、依頼者が弁護士費用の不足分を実際に支払うケースは極めて例外的な場合といえるでしょう。
4-3.自動車同士の事故でも利用できない可能性がある
自動車同士の事故は弁護士費用特約の補償対象ですが、次のようなケースでは特約を利用できない可能性があるので注意が必要です。
- 故意または重大な過失があった
- 無免許や酒気帯び、薬物などを使用した状態で運転していた
- 台風や洪水、地震などにより事故が発生した
- 事故の加害者が配偶者や親、子どもだった
また、保険会社によっては、事業用の自動車を運転中に発生した事故を対象外としている場合もあるので、約款などを確認しておきましょう。
4-4.補償内容が重複する可能性がある
弁護士費用特約を付けられるのは、自動車保険だけではありません。
火災保険や傷害保険などの特約として付けることができる場合もあります。
加入中の火災保険などに弁護士費用特約を付けているのに気づかず、自動車保険にも特約を付けると、補償内容が重複してしまう可能性があります。
弁護士費用特約の加入を検討する際は、すでに加入中の各種保険に特約を付けていないか確認しておきましょう。
5.弁護士費用特約を利用する流れ
弁護士費用特約を利用するための主な手続きは、次の通りです。
5-1.(1)加入中の保険に弁護士費用特約が付いていることを確認する
まず、加入中の保険に弁護士費用特約が付いているかどうかを確認しましょう。
自分の自動車保険に付けていなくても、ほかの保険に付けている場合や、家族が加入している特約を利用できる場合もあるので、あわせてチェックしましょう。
5-2.(2)交通事故に詳しい弁護士に依頼する
交通事故は、医療や保険などの専門知識も求められるため、弁護士であれば誰に依頼してもいいわけではありません。
法律事務所のホームページなどから、交通事故に関する取扱実績や解決事例などが詳しく紹介されていないかチェックしてもよいでしょう。
5-3.(3)保険会社に連絡し、弁護士費用特約を利用する旨を伝える
依頼する弁護士が決まれば、弁護士費用特約を利用して弁護士に依頼する旨を、保険会社に連絡します。
連絡する際、弁護士事務所の名称や連絡先なども伝えると、その後のやり取りがスムーズになります。
また、保険会社が契約している弁護士を紹介される場合がありますが、その弁護士に依頼する必要も義務もありません。
被害者側に立ってくれる、安心して依頼できる弁護士を選ぶようにしましょう。
6.依頼後も弁護士を変更できる
弁護士費用特約を利用して依頼した後でも、対応が悪い、交通事故に詳しくないといった理由で弁護士を変更したい場合、示談の成立前であればいつでも弁護士を変更できます。
ただし、相談料や着手金などがすでに発生していると、その金額は返還されません。
たとえば、上限額が300万円の弁護士費用特約を利用し、最初に依頼した弁護士に50万円の費用が発生している場合、次の弁護士には250万円までの範囲でしか特約を利用できなくなります。
弁護士法人プロテクトスタンスは、交通事故の実績が豊富な弁護士と、交通事故のみを取り扱う専門チームがご依頼に担当します。
交通事故の発生直後から最終的な示談成立まで、弁護士とスタッフが全力でサポートしますので、安心してご依頼いただけます。
- この記事を監修した弁護士
弁護士 大橋 史典弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)獨協大学法学部法律学科卒業 明治大学法科大学院法務研究科 修了(68期)。
弊事務所に入所後、シニアアソシエイトとして活躍。交通事故分野を数多く取り扱い豊富な経験を持つ。