死亡事故で請求できる葬儀費用の種類や金額、請求方法などを解説

解決!交通事故の弁護士コラム

【弁護士監修】交通事故における葬儀費用とは?種類や請求方法を解説

死亡事故
弁護士 大橋史典
この記事を監修した弁護士
弁護士 大橋 史典 弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)

0.交通事故の被害者の葬儀費用は遺族が負担する?

残念ながら交通事故で被害者が亡くなってしまった場合、残された遺族などが葬儀を行うことになるでしょう。
しかし、大切な家族を失った悲しみに暮れるなか、高額な葬儀費用を支払うのはとても負担が大きいものです。

それでは、遺族などが負担した葬儀費用を、加害者やその保険会社に請求することはできるのでしょうか?
このコラムでは、請求が認められる葬儀費用の種類や金額、請求方法などについて、交通事故に詳しい弁護士が解説します。

1.葬儀関係費用は加害者に請求できる

交通事故で被害者が亡くなった場合、加害者やその保険会社に葬儀費用を請求することができます。

また、葬儀そのものの費用に加え、四十九日までの法要の費用なども含め、「葬儀関係費用」として請求が認められます。

ただし、葬儀に関係する費用であっても、すべてが認められるわけではありません。

1-1.葬儀関係費として請求が認められる費用

葬儀関係費用として請求が認められる主な費用は次の通りです。

  • 葬儀費用
  • 遺体の処置、遺体搬送料
  • 火葬費用
  • 四十九日までの法要の費用
  • お布施・読経・戒名料
  • 仏壇・仏具購入費用
  • 墓碑建立費用

なお、遺体の処置、遺体搬送料、仏壇・仏具購入費用、墓碑建立費用などは、葬儀関係費用ではなく、別の費用として認められるケースがあります。

1-2.葬儀関係費として請求が認められない費用

様々な費用が葬儀関係費用として請求が認められますが、次のような費用は、基本的に認められません。

  • 香典返し
  • 弔問客の接待費や交通費
  • 四十九日を超える法要の費用

なお、香典返しの請求が認められない代わりに、葬儀費用を加害者側に請求する際には、受け取った香典を差し引いて計算する必要はありません。

2.請求できるのは費用を負担した人

葬儀関係費用を請求できるのは、実際に費用を負担した人です。
そのため、必ずしも喪主や遺族、相続人などが請求者になるとは限りません。

たとえば、亡くなった被害者の子どもが喪主を務めたものの、葬儀費用は被害者の兄が支払ったようなケースでは、被害者の兄が請求することができます。
また、被害者と血縁関係がない人、たとえば職場の代表などが支払ったような場合も、実際に支払った人が請求者となります。

3.請求が認められる葬儀関係費用の金額

傷害慰謝料(入通院慰謝料)など、交通事故の賠償金を計算する際、次の3つの基準が使われます。そして、どの基準を使うかにより、金額が大きく異なります。
葬儀関係費用を計算する際も、これらの基準を使うことになります。

自賠責基準
自賠責保険から損害賠償を受ける場合の計算方法となる基準

任意保険基準
任意保険会社が独自に定めた自社の支払い基準

弁護士基準(裁判所基準)
交通事故に関する過去の裁判で認められてきた賠償金額にもとづいた基準

3-1.自賠責基準で認められる金額

自賠責保険は、すべての自動車やバイク(二輪自動車)、原動機付自転車(原付)に加入が義務付けられています。
交通事故の被害者に対する最低限の補償を目的とした保険であるため、3種類の基準の中で、自賠責保険で算出した金額が最も低くなります。

具体的な金額としては、100万円までが葬儀関係費用として認められます。

なお、2020年3月31日以前に発生した事故については、原則として60万円までです。
ただし、資料などから60万円を超えることが明らかな場合は、100万円まで請求が認められます。

3-2.任意保険基準で認められる金額

示談交渉において、加害者側の任意保険会社から提示する賠償金は、任意保険基準をもとにしていることが一般的です。

これは各保険会社が独自の基準で定めているため、具体的な金額は非公開となっていますが、自賠責基準と同程度か、やや高い金額であることが大半です。

3-3.弁護士基準で認められる金額

3種類の中で最も高額な基準です。弁護士に依頼した場合、弁護士は弁護士基準から算出した金額をもとに、保険会社と交渉します。

弁護士基準で認められる金額は、原則として150万円までです。
葬儀関係費用は、被害者や遺族の社会的地位などによって金額に差があるものの、格差を認めてしまうと不公平が生じてしまうため、このような上限が定められています。

なお、葬儀関係費用が150万円を下回った場合、認められるのは実際に支払った金額までとなります。

4.150万円を超える葬儀関係費が認められるケースもある

弁護士基準で認められる葬儀関係費用は原則として150万円までですが、それよりも高額な請求が絶対に認められないわけではありません。
さまざまな事情が考慮された結果、150万円以上の葬儀関係費用が認められた裁判例もあります。

4-1.園芸店を長年営んでいた被害者の葬儀が大規模に行われた事例(250万円)

長年にわたり園芸店を営んでいた被害者の葬儀費用として、250万円が認められた事例です(横浜地裁判決令和元年9月26日)。

被害者は顧客をはじめとして多くの人々に慕われており、参列者が300人を超える規模の大きな葬儀が執り行われました。
この点を踏まえ、裁判所は「葬儀費用としての損害は250万円の範囲で認めるのが相当」と判断しました。

4-2.事故が起きた単身赴任先と被害者の地元で葬儀が行われた事例(200万円)

事故が起きた単身赴任先で葬儀が行われた後、被害者の地元でも再度行われ、葬儀費用として200万円が認められた事例です(大阪地裁判決平成28年10月26日)。

この事例では、遺体の運搬費用が高額になることなどから、事故が起きた単身赴任先で葬儀が行われました。
ただし、単身赴任先が地元から遠方だったため、勤務先の関係者が参列できなかったことから、改めて被害者の地元でも葬儀が行われました。

裁判所は、2か所で葬儀が行われたことにやむを得ない事情があったとして、200万円の葬儀費用を認めました。

4-3.街頭指導活動中の死亡事故で高額な葬儀費用が支出された事例(250万円)

被害者は交通安全協会役員として、歩行者の街頭私道活動を行なっていたところ、歩道に乗り上げてきた自動車との衝突事故により死亡した事例です。

裁判所は、県警が被害者を警察協力殉職者として取り扱っており、そのため恥ずかしからぬ葬儀を営む必要があったと推認されるなどとして、250万円の葬儀費用を認めました(さいたま地裁判決平成24年1月31日)。

5.葬儀関係費用の請求はいつどのように行う?

被害者が亡くなった場合、加害者側の保険会社との示談交渉を始める時期について決まりはありません。

一般的なタイミングとしては、四十九日の法要が終わったころに、保険会社から賠償金額を提示されるケースが多いです。
そして、この賠償金額の中に、慰謝料や逸失利益などのほか、葬儀関係費用も含まれています。

保険会社が提示した金額に納得できれば、示談に応じて、賠償金を受け取ってもよいでしょう。
ただし、先に説明した通り、保険会社は任意保険基準で算出した金額を提示するため、法的に認められる金額よりも低いことが一般的です。

そのため、保険会社の提示額に不満がある場合は、実際に支払った葬儀関係費用の明細が分かる資料を集め、増額を請求しましょう。

また、死亡事故であれば、加害者の刑事裁判の手続きが進んでいる可能性があります。
この状況で示談を成立させると、加害者を宥恕(ゆうじょ)したものとして、加害者に有利な事情と評価され、刑罰が軽くなることも考えられます。
示談に応じるかどうかは、慎重に対応する必要があるのです。

6.葬儀関係費用の示談交渉は弁護士にご相談を

自分で保険会社との示談交渉に臨み、賠償金の増額を求めること自体は可能ですが、成功する可能性は非常に低いです。
保険会社は交通事故と交渉の専門家であり、知識や経験が豊富なので、対等に議論するのが困難だからです。

また、弁護士などの専門家が相手でなければ、そもそも交渉に応じようとしないでしょう。
そのため、保険会社との示談交渉は、交通事故に詳しい弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士であれば、保険会社が提示した賠償金額に対し、弁護士基準で算出した金額まで増額するよう証拠を示しながら法的に主張するため、賠償金額の増額が期待できます。

特に、葬儀関係費用について、原則として弁護士基準で認められる150万円を超える金額を請求したい場合は、考慮すべき事情の主張や立証が求められるため、弁護士の支援が必須といえます。

ほかにも、加害者の刑事裁判が進んでいる場合は、示談交渉に応じるべきかどうかの判断も必要になるので、弁護士のアドバイスを求めた方がよいでしょう。

弁護士法人プロテクトスタンスは、交通事故でケガを負った事例はもちろん、死亡事故についても豊富な経験を持つ弁護士が在籍しております。
ぜひ無料相談をご利用のうえ、弁護士にご相談ください。

弁護士 大橋史典
弁護士 大橋史典
この記事を監修した弁護士

弁護士 大橋 史典弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)

獨協大学法学部法律学科卒業 明治大学法科大学院法務研究科 修了(68期)。
弊事務所に入所後、シニアアソシエイトとして活躍。交通事故分野を数多く取り扱い豊富な経験を持つ。

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