【弁護士監修】交通事故の治療費打ち切りと言われたら?対処方法を詳しく解説!
- この記事を監修した弁護士
- 弁護士 大橋 史典 弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)
0.治療費の打ち切りには要注意
交通事故に遭った場合、事後直後から病院に行くことが大切です。すぐに病院を受診することで、人身事故の扱いになります。
何よりも、身体やケガの状態を正確に診断してもらうことができますので、ケガの早期回復や重傷化を防ぐことに繋がるでしょう。
また、加害者が任意保険に加入している場合、一括対応という治療費の支払い方法により、被害者は治療費の負担なく通院することができます。
しかし、まだ治療途中であるにもかかわらず、保険会社から治療費支払いの対応を打ち切るなどと言われてしまうことがあります。
そのまま承諾してしまうと、一括対応がされなくなりますので、注意が必要です。
ケガの治療中に治療費打ち切りを言われた場合は、すぐには受け入れず、通院先の医師(主治医)に相談することが大切です。
このコラムでは、治療費打ち切りを言われる理由や、言われたときの対処方法などを、解説していきます。
1.交通事故の治療費支払いの流れ
交通事故の治療費が支払われる流れは、大きく2つに分かれます。
加害者の任意保険会社が治療費を病院に支払う「一括対応」という方法と、被害者本人が立て替える方法です。
1-1.任意保険会社から支払われる
(一括対応)
加害者が任意保険に加入している場合、一括対応を受けることができます。
一括対応とは、被害者の治療費負担や、病院での窓口負担を無くすことを目的に、加害者の任意保険会社が、通院先の病院に治療費を直接支払う方法です。
これにより、被害者は自分で治療費を支払う手間や経済的な負担を無くすことができます。
そして、一括対応を受けるためには、次の手順を踏む必要があります。
加害者が任意保険に加入しているからといって、何もせずに一括対応がそのまま受けられるわけではありません。
一括対応の同意書に署名して返送しないと、一括対応は受けられませんので、書類を受け取り次第、すみやかに提出するとよいでしょう。
1-2.被害者本人が立て替えることも
まれに、加害者が任意保険に加入していないことがあります。
この場合、一括対応を受けることができませんので、治療費を自分で負担しながら通院することになります。
しかし、交通事故の治療は、数か月に及ぶことが多いため、多額の治療費を負担することもあります。
この場合、交通事故の治療でも、自分の健康保険を使うことができますから、これを適用して、自己負担額を減らして通院することで、少しでも経済的な負担を軽減できるでしょう。
また、自己負担した治療費は一時的な立替金として、治療終了後の示談交渉で、加害者側に請求することができます。
なお、負担した治療費の金額を証明するためにも、領収書や診療明細書は保管しておきましょう。
2.治療費打ち切りを言われやすいタイミング
治療費打ち切りを打診されるタイミングとしては、事故で負ったケガが一般的な治療期間に達した場合に言われることが多いです。
あくまで目安ですが、むち打ち(頸椎捻挫)では約3か月程度、骨折では約6か月程度が経過した段階で、保険会社から打診されることがあるようです。
保険会社が、このタイミングで治療費打ち切りを打診する大きな理由は、早期に治療費の支払いを打ち切ることで、保険会社の支出を減らせることです。
治療費を長期間支払うと、保険会社は自社の利益を損なうことになります。
また、治療期間が長くなるほど、その期間に応じて計算される入通院慰謝料(傷害慰謝料)や、休業損害などの賠償金も高額になっていきます。
このため、少しでも支払う賠償金を減らすために、治療費打ち切りが打診されることが理由の1つだと考えられます。
3.治療費打ち切りを言われた時の対処方法
治療費打ち切りを保険会社から打診されても、すぐに応じる必要はありません。
もしも、保険会社から言われたら、次の方法で対応していきます。
3-1.医師に意見書を作成してもらう
保険会社は、前述したような一般的な治療期間を目安に治療費打ち切りを打診します。
しかし、これはあくまで目安でしかありません。被害者の年齢や体質、ケガの程度や治療の経過などにより、治療期間は人それぞれ異なるでしょう。
もし、医師からまだ治療継続の必要性があると判断された場合は、その旨をまとめた「意見書」を作成してもらい、これを保険会社に提出することで、医学的な根拠にもとづいた主張ができるでしょう。
3-2.治療費対応の延長交渉を弁護士に依頼する
治療継続に関する医師の意見書があると、治療費の一括対応が認められることがあります。
しかし、保険会社は交通事故に関する経験値が豊富ですし、被害者の方が自分で交渉しても、なかなか主張が通らないこともあるでしょう。
また、ケガの治療を受けながら交渉するため、肉体的・精神的・時間的に膨大な負担を被ることになります。
そこで、このような手間を省き、安心して治療を継続するためにも、交通事故に精通している弁護士に相談して、治療費打ち切りに関する延長交渉を依頼することをおすすめします。
4.治療費が打ち切られても治療はやめるべきではない
もし仮に治療費が打ち切られてしまう結果に終わっても、被害者と主治医とが治療の必要性を認めている限り、治療そのものを止めるべきではありません。
これは、ケガの完治を目指すということ以外にも、次の理由があるからです。
- 入通院慰謝料が低額になる
- 後遺障害等級認定で不利になる
4-1.入通院慰謝料が低額になる
入通院慰謝料は、被害者の方が病院に入院・通院した期間に応じて金額が算出されます。つまり、治療期間によって金額が大きく変わってくるのです。
たとえば、むち打ちの治療で病院に3か月通院した場合、自賠責基準では約38.7万円、弁護士基準では53万円を請求することができます。
この点、途中で治療を止めてしまうと、入通院慰謝料の算定期間が短くなり、結果的に低額な入通院慰謝料しか請求できなくなります。
そのため、治療費の支払いが打ち切られても病院への通院は止めずに、治療費を自己負担しながら完治するまで(または症状固定まで)、通院を継続するようにしましょう。
4-2.後遺障害等級認定で不利になる
交通事故のケガは、必要な期間、適切な治療を受け続けても、必ず完治するとは限りません。
残念ながら、ケガが完治しなかった場合は、症状固定(これ以上治療を続けても完治する見込みがない状態になったこと)の診断を受けることになります。
この、症状固定の診断を受けたときに残存している症状が、後遺症となります。
そして、後遺症が残った場合は後遺障害の等級認定を申請することができます。
申請しても必ず認定されるとは限りませんが、認定された場合には後遺障害に関する慰謝料や逸失利益もあわせて請求することができます。
しかし、治療費が打ち切られたという理由で治療を途中で止めてしまった場合、後遺障害の等級認定で不利になってしまうことがあります。
後遺障害の等級に認定されるためには、おおよそ6か月以上の治療期間が必要だといわれています。
また、後遺障害の等級は、治療に必要な期間を通院し、適切な治療を受け続けてもなお完治しなかった場合に認定されるものです。
そのため、後遺症が残っていても、通院を途中で止めてしまった場合は、後遺障害の等級に認定される可能性が格段に低くなってしまう可能性があります。
ですから、治療費の一括対応が打ち切られたとしても、通院は継続するようにしてください。
5.治療費打ち切りを言われたら弁護士に相談
治療費打ち切りに対する交渉は、被害者自身でも行うことも不可能ではありません。
しかし、被害者の方が保険会社と交渉することは現実的には困難です。
保険会社は交通事故の賠償や示談交渉について、豊富な経験値があります。専門用語をまくしたてられたり、交渉の土台に乗らないこともあるでしょう。
そのため、交通事故の対応に強い弁護士、治療費の支払い継続の交渉を依頼するとよいでしょう。
交通事故に強い弁護士であれば、過去の豊富な経験や実績にもとづき、また、主治医から治療継続に関する意見書なども取り寄せながら、医学的にも法的にも説得力のある延長交渉をしてくれます。
また、それ以外にも、弁護士に保険会社との示談交渉を任せることで、慰謝料や休業損害などの損害賠償金の増額が期待できたり、保険会社とのさまざまな煩わしいやりとりを任せることができます。
もちろん、後遺障害の等級認定を獲得できるよう尽力してくれます。
保険会社から治療費打ち切りを打診されてしまい、対応に不安や悩みがある方は、弁護士法人プロテクトスタンスまでご相談ください。
- この記事を監修した弁護士
弁護士 大橋 史典弁護士法人プロテクトスタンス所属
(第一東京弁護士No.53308)獨協大学法学部法律学科卒業 明治大学法科大学院法務研究科 修了(68期)。
弊事務所に入所後、シニアアソシエイトとして活躍。交通事故分野を数多く取り扱い豊富な経験を持つ。